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89.人生というスゴロクの終わりは「定年」ではない ・・・ (2011/10/09)


 もしかしたら皆さんもこれたの本を読んだことがあるかもしれませんね。著者はそれぞれの世代より上の方、人生を振り返ってみて、あの時こうしておけばよかった、もしくは、あの時こうしておいて良かった、という思いを書かれたのだろうと思います。調べていて、30代、40代向けはあると知っていても、まさか60代向けがあるとは知りませんでした。

 「人は50代、60代に何をなすべきか」は元NHKアナウンサーの鈴木健二さんでした。鈴木さんも、確か「30代で、、」、「40代で、、」を書いておられたかと思いますが、ご自身が年齢を重ねる中で、気がついたことを次の世代へのメッセージとして書き残してくださっているのかと思います。

 さて、こんなことを調べようと思ったのは、先日の日経新聞の、「今年度中に100歳になる高齢者が9月1日現在で2万5千人に上るのだとか。しかも、この数字は15年連続して増加している」記事を思い出してのことからでした。超長寿社会になりつつあるのであれば、「70代に、、」「80代に、、」も当然必要になってくるでしょうね。つまり、かつては、人生60歳、定年を迎えてスゴロクは終わりと思われていたものが、どんどん先に伸びてきているのですから、それぞれの世代に伝えるメッセージもあってしかるべきと思います。

 こうして人生のスゴロクに終わりがどんどん先延ばしになっているわけですから、(繰り返しになりますが)曽野綾子さんが著書「老いの才覚」の中で言われたように、「ひと昔前まで、人は死ぬまで働くのが当たり前だった」のとおり、出来ることを、出来る範囲で続けることが大切なのだと思っています。




 扶桑社 760円+税


 曾野綾子さんの自分の始末」、本のタイトルだけを検索してみても、60代、もしくは70代にやっておくべきこと、といったタイトルの本はなさそうででした。しかし、偶然、書店で見つけたこの本は、まさにそのことについて書いたものでした。

 人生には不慮の災難というものがある。しかし死と定年だけは、予期せぬものではない、という書き出しで始まる第1章は、まさに定年退職後の私に向けたメッセージと感じました。それにしてもサラリーマンでもない曾野さんに何故定年が語れるのだろうかと思いましたが、次の説明で納得しました。

 定年は、いわゆる自由業と言われる職業の人にもある。例えばスポーツ選手であればは体力の限界がかなり早々と来る、、、、。

 なるほど、そう言われてみればその通りですね。更に、

 定年後の生活がうまく迎えられないとしたら、それは備えが悪かったのである。もっとも人間は備えが上手になるということはなかなかない。

 前半分は胸にぐさっとくる感じですが、後半でしっかりとフォローをしてくれているあたりが曽野さんらしいですね、こうフォローしていますから。


 定年というものは、自分にだけは意味があるが、他人には全くよそ事なのである。自分にとっては大きな変化だが、他人はほとんど意に介さない。ならば自由に生きたら良さそうなものだが、では何がしたいのか自問自答して答えを得るのが難しいのです。ほんとうは、定年後は自由人になれたはずである。勤めに出る必要もない。気の合わない上役の心理を斟酌する必要もなくなった。

 しかし現実には、自由人どころか不自由人になった人も多い。自分のしたいことがわからない。本も読まない。生活に必要な仕事の内容や手順も知らない。自分に必要な身の回りの家事一切ができない。心がけ一つなのだ。おもしろがれば、すべてできる。すべて自分が主体となり、その分だけ自由になる。

 その通りだと思います。でも、それで諦める必要はありません。そのヒントはこの後のページに、定年後を輝かせる「新たな仕事」という章の中にありました。 ●毎日料理をすること、時々旅をすること です。余談ですが、別にこれに感化された訳でもないのですが、東京都内のある区が開催する「男性のための料理教室」(対象60歳以上)に、実は申し込んでみています。


 さて、話しを戻して。曾野さんは、何故料理と旅行をすることを勧めるのか読み進めてみるといずれも段取りが必要だからだという。

 段取りは、意志の力、予測能力、外界との調和の認識、そして何より謙虚さ、など総合的な判断が要る上に、たえずそのような配慮をすることで心を錆びつかせないことができる

 と、おっしゃる。確かにそうなのかもしれない。私の友人で、大学で国際交流を担当している人がいます。彼から聞いたのは海外の提携先大学との交換留学について。海外に送る学生への面接で、どんなことを聞くのかたずねたところこんな返事でした。「あなたは一人旅をしたことはありますか?」もしくは「友人との旅行に、リーダーとして旅の計画、リードをしたことはありますか?」と聞くのだそうです。
 まさに旅には「段取りは、意志の力、予測能力、外界との調和の認識、そして何より謙虚さ、など総合的な判断が要る」からなのだろう。そうした経験を持たぬ学生を、言葉も環境もまったく異なる外国に一人でやって精神的に追い込まれたりしてもいけないと思ってのことだったわけだ。


 さて、こんな具合に定年というテーマからスタートするこの本も、中盤以降は、人間が死にいたる過程で、自分の始末をどうつけていけばよいのかの参考になりそうな話しがずっと続きます。たぶんこのあたりは、人間が「70代にしておくべきこと」「80代でしておくべきこと」というタイトルで書いたものとして捉えてもおかしくない内容でした。ご紹介までに。





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