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90.働くオヤジの背中 ・・・ (2011/10/16)

 高校を卒業して10年くらいたった頃だったでしょうか。同級生と高校の文化祭を見に行ってみた。ちょうどいらした校長先生とお話しをする機会があった。その校長先生との話しに「親父の背中」ということが話題になった。昔のように、親父が一生懸命仕事をしている背中を見て育った子供は間違いを起こさないのだけれど、といった長年の教師としての経験則を語ってくださった。

 親父の権威が失墜したと言われるようになったのはいつ頃からだったでしょうか。働く父親のうしろ姿を家族に見せる機会が減ったこと、そして、給与振込みが普及したからだ、と聞いたことがある。定年前は、文字通り、家族には、父親である私がいったい会社で何をしているのかは、あまり語ることもなかったし、当然のように給料は銀行振り込みでした。それで特に権威が失墜したとは思っていなかったが、定年になって自宅で仕事をしていて良かったな、と思うことがあった。


 貿易の仕事、特にコミュニケーション(メールと電話)には海外との時差対応がつきもの。夕食を終えたあたりからが本番で、メールでの問い合わせに没頭していると、遅いときは23時をまわることもあった。きりがないので、一旦ここでやめて寝ることにしていたが、あちらはまだ仕事をしている。そんな人からのメールをチェックすべく、翌朝、朝食が終わって、息子が出勤する時間に私もパソコンに向かう。


 この仕事の苦労は、入金確認。我々の感覚なら、注文する際はお金が用意されているのが普通。しかし、アフリカの人の場合、そうしたケースはまれで、むしろ注文をしてきてからお金を用意するようだ。なので、注文は来たが一向に入金がない、ということもしばしば。1つには、外貨(米ドル)の使用制限もあるようだ。


 以前にもこのホームページでお話ししたように「まさか」が起こった。8月、船積み直前の車両が放射能汚染でストップされたり、同様に船積み直前の別の車が、船積みの際のミスで追突事故に巻き込まれたりと、トラブルが多発したことをきっかけに、一旦、休むことにした。そんなことで、契約しているホームページを利用出来る9月末までに、なんとしても在庫を売り切らなければならない。しかし、前述のように、本当に入金があるのか、ないのか、国際電話をして確認もしてみたが、やはり確証が持てなかった。最後だけは、ダブルブッキング(二重にオーダーを受けること)もやむなし、と重複して注文を受けてみた。結局、最後の入金確認が取れたのは、二重にオーダーを受けた2件のうちの1件だった。10月3日に入金確認が出来たときは、本当にほっとした。

 そんな状況を息子にも家内にも説明してあった。9月末が近づいたある日、出勤する息子が「行ってきます」の挨拶のあと「入金、あるといいね!」と言ってくれた。息子は、自分が出勤する時刻に仕事をはじめ、帰宅して自分が寝る時間まで仕事をしている父親を見て(がんばっている私を見て)声援してくれた訳だ。

 まあ、息子がそうしたことを感じ取れる年代になったこともあるが、やはり一番大きいのは、親父の働いている後ろ姿を見せることが出来たからだと私は思っている。定年後、自宅で仕事を始めたことを、この時ほど「良かった〜」と思った瞬間はなかった。


 ※補足: この仕事、夜間と翌朝仕事をしてはいますが、昼間は時間もあり、たまに昼寝をすることも。仕事としてはシニア向けかもしれません。



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