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399.もはや未経験者が、いきなり中古車の輸出など始められる時代ではない ・・・ (2023/06/18)   

 確か2021年の夏だったかと思います、中古車輸出事業者最大手のビィ・フォアード社の六本木ヒルズオフィス(サテライトオフィス?)に呼ばれ、山川博功社長とお会いした。要件は、国内販売だけをしている大手中古車ディーラーさんに、当社(ビィフォワード)のサイトを通じて輸出をしてみませんか?という話しでした。数人の方が参加したこの打合せに、唯一、大手でも、中古車ディーラーでもない私が同席していたわけです。


 実物の山川社長は、私の目には、最近になって私が好きになった歌手の松山千春のような感じの人(頭が?)でした。
 また恐らくは、やってきた実績をバックに、とても自信を持ってビジネスをやってきている人だな、という印象でした。

(写真、左)こちらを読んでみると、中古車輸出企業としてトップを走ってきたビィ・フォアードには様々な現地法人が、「我々にも関連事業をやらせて欲しい」との申し出があることが分かりました。
 たとえば、アフリカの一般の人が中古車購入代金を日本に送金するにあたって、当然のことながら海外送金など慣れていない訳です。それを現地の郵便局が、若干の手数料を取って、お手伝いをしてくれる、というものなどでした。
 つまり、大手には、より多くの周辺事業者が集まるという相乗効果が生まれていたのです。


 何か面白いお話しが聞けるのではないかと思っての私の参加でしたが、やはり直接相手と会って話しを聞くというのはとても有意義でした。その1つが、Tradecarviewとの関係のことでした。
 当初より、自社の輸出サイトは持っていたものの、メインは、ソフトバンク系のTradecarview(今風に言うと、越境ECサイト)でした。しかし、ビィ・フォアードのビジネスが拡大してきた段階でカービュー社(Tradecarview)の社長から声がかかったのだそうです。用件は「出品車輌台数が増えて来たなかで、月会費を出品車輌台数比例にして貰えないだろうか?」という相談だったそうです。山川社長、単純計算してみると、それまで数万円だった月会費が100万円を超えるようになることが分かったそうです。そこでこの提案があったのを機会に心を決めたのが、海外向けの販売のメインを「自社サイト」に移そう、と。

 その後のビィ・フォアードの活躍にはめざましいものがあり、あれよあれよというまに、Tradecarview(楽天のように、多くの中小規模事業者が加盟している、いわば寄り合い所帯)を、越えてしまったのだったのでした。つまり、ビィ・フォアードというデーモン(?)を育ててしまったのは、皮肉なことにTradecarview 自身だったということだったのです。

 その後のTradecarviewの凋落は見るも無惨で、ついには事業を他社に売り渡してしまい、現在は他社によりTCVという名称で事業が継続されていますが、私の目にはもはや「腐った鯛」状態のように見えます。(失礼!)


 今年に入って、静岡で複数の整備工場を経営されている会社の三代目のKWさんから、私宛にメールが届いたのです。 

 それによれば、「以前、越境EC(TCVさん、カーディールページさん)に出展を試みたのですが、鳴かず飛ばずで会費だけ払っていた苦い過去があります」だそうで、今後どうしたらよいでしょうか?、と私にアドバイスを求めて来たのです。

 ちょうどその時点で、eBayで活躍している若手女性経営者からの依頼で、中古車輸出についてご指導をさせて貰っていたところでした。彼女がTCVの加盟説明会をオンラインで聞いた時も、私が横に同席していました。あまりに高額な初期費用(たしか、教育費用として100万円が必要と言われたかと)だったもので、彼女にそんな負担は掛けられないと、別なECサイトの検討をお薦めしました。

 結果として、薦めたのがCarFromJapanという会社のECサイトでした。その後、彼女が中古車の独自仕入れに苦労し、とまどっていたのもので、代わりに私が商材を調達して、彼女を経由して販売して貰いました。その「軽トラック」は日本円換算で60万円程度で売れました。(内訳は、車輌仕入れが20万円、輸出にまつわる諸費用が20万円、利益が当時の円安のお陰もあって20万円というところでした。東アフリカへの輸出経験者の私としては、先進国アメリカ向けは、すこぶる利益率が高い!と感じました)



 前述のKWさんの体験を聞いていたのでTCVさん、カーディールページさんについては)深く調べてはみなかったのですが、このCarFromJapanも、私が想定していた規模とは大幅に縮小して事業を行っていたのでした。(そういう事情はあったにせよ、車はアメリカのユーザさんに売れ、また販売収入はきちんと振り込まれてきたのは間違いありませんが

 株式会社であれば、登記内容がネットでも確認出来ます。それが左のものです。

 これを見ると、創業時は目黒区三田で、その後、板橋区の舟渡に移転、現在は千代田区岩本町になっています。

 ところがです、オフィスのある岩本町の該当するビルに行ってみたものの、そのフロアの利用者はレンタルオフィスの会社のもので、しかも、レンタルしている会社名にはCarFromJapanは無かったのです。

 メールだと、どこで(日本で)それを受信しているのか特定が難しいので、意図してFAXで社長宛に問い合わせをしてみました。
 3回目の私からのFAXをやっと見たようで、私宛に電話が掛かってきました。それによれば、社長以下、全員(といっても、専任は3〜4人?のようで、あとはすべてアウトソースらしい)が創業者の一人の母国であるベトナムに移転していたのです。

 まあコロナの流行で、より安全だと思われる場所に移動する話しは聞きますが、それにしても社長までの(日本法人であるにもかかわらず)日本から脱出してしまったとは、、、。(もはや実態は日本法人ではない?)

※ 左写真をクリックすると国税庁法人番号公表サイトにジャンプします。


 前述のKWさんの話しからしても、また実際に私が仕入れた車が売れ、送金まであったことから、3社の中では、一番マシな存在と感じ、社長のイナムさんに電話口で、「コロナの流行も落ちついてきたことですし、もう一度日本に戻って、加盟店拡大をしないのですか?」とお話ししました。





 するとイナム社長(上の写真、後列中央)からこんな説明がありました。

 ○○さん、TCV(旧称、Tradecarview)が入会時に高額の指導料を徴収していますが、1年後にどれくらいの加盟店が残っているかご存じですか?と。イナム社長いわく、8割が、指導料を払ったものの、まともな事業が開始出来ずに撤退しているのだそうでした。

 これは、上に書いた、「静岡で複数の整備工場を経営されている会社の三代目のKWさんからのお話し「鳴かず飛ばずで会費だけ払っていた苦い過去がありますに符合するお話しでした。




 私のもとに、中古車輸出を始めたいので、指導して貰えないだろうかというお話しが、東京しごとセンターの起業相談員の方を経由して、過去2件ほどが来ました。一件目は、モンゴル出身の女性で、一橋大学の大学院まで出ている方で、どちらかというとご本人が、というよりは彼女のご主人に中古車輸出の仕事をさせたいと思っていたようでした。ご本人は、日本の大学を出ている才女で、日本語は完璧なのですが、ご主人は片言の日本語だけでした。
 その後、創業資金準備の問題もあり、今は、ご主人は数人のモンゴル人男性とともに庭師の仕事をされているようでしす。

 もう1件は、カメルーン人の男性と結婚した日本人女性からの相談でした。こちらもモンゴルの方の例と同じく、ご主人の仕事に中古車輸出が良さそうだということでの相談でした。こちら、彼のFacebookを教えて貰って驚いたのが、すでに5年も日本に滞在しているのに、日本語が出来なさそう。ひとえに奥さんが、何から何までやってあげすぎたようで、日本にいながら、日本には馴染めていないようす。こうしたケースでは、お金を持たせると、ふいに帰国してそのまま、というケースになりそうです。要注意ですね。


 この2例は、日本語が出来ないということで問題外としても、eBayで活躍してきた日本人女性でも、なかなか中古車輸出ビジネスを軌道に乗せられていな現状を鑑みて、やはりイナム社長の言うように、「もはや未経験者が、いきなり中古車の輸出など出来る時代ではない」のかも、と思い始めました。

 ちなみに、私が中古車輸出を始めた2010年頃は、まだ個人事業者でも、東アフリカ向けに商談が出来、年間50〜60台の中古車が販売出来ていた時代。つまり私のように素人であっても、恵まれた時代に経験を積み上げる ことが出来たことから、いまでも中古車輸出が可能なのだろうと推測しています。(この仕事のキーは、どこの国に、どんな車が売れているのかを知り、それに沿った車(商材)を中古車オークションで調達することが出来るかどうかが、決め手で、つまり以前、私がこのホームページに書いたように、仕入れが成功の9割なのです)


 繰り返しになりますが、イナム社長が電話口で話してくれたこと、「今は未経験者が、いきなり中古車の輸出など始められる時代ではない」は、リアリティを持って実感しています。


 イナム社長や、創業時の中心人物であった奥さんの話しを聞くと、どうやらCarFromJapanは、過去、中古車輸出が軌道に乗せられなかった加盟店さんから、沢山のクレーム(文句?)がぶつけられたようで、例えにある「羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)----ある失敗に懲りて、必要以上に用心深くなり無意味な心配をすることのたとえ」、になってしまっているのではないかと感じました。

 私は73歳ですので、引退してゴルフ三昧に移行すれば良いとして、彼らは新規の会員加盟を集めないで、今後のビジネスをどうするつもりなのか、人ごとながら心配になってきました。私個人の希望としては、CarFromJapanが、今後とも個人が中古車を海外に売るための「最後の砦」であってくれるといいな、というところです。


 最後にイナム社長に一言。 日本法人なんだから、日本で事業をしよろ!
 


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