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301. 他社の暖簾(のれん)を借りて始めるビジネスは  ・・・ (2020/04/05)

 先日配信されてきた日経ビジネスの記者が書いたオンラインニュースを読んだ。それによれば、楽天からの加盟店離れが始まっているのだそうだ。

 楽天が一定額(税込3,980円以上)の買い物では一律送料を無料とすると一方的に発表したことに端を発する。恐らくは楽天と加盟店との間の契約に、こうした仕組みの変更は楽天側の判断だけで自由に設定出来るようになっているのだろう。


 ことの始まりは、日本では楽天に比べ後発ではあっても巨大市場米国での販売実績を持つアマゾン・ドット・コムが日本に進出してきて、その後順調に売上を伸ばしてきたことが楽天の危機感を煽ったようだ。アマゾンは自社で在庫を抱える事業を始め、プライム会員には無料配送といったサービスを現に行っている。そこで対抗上楽天もやらざるを得なくなったのだろう。

 楽天は出店者が集うマーケットプレイス、製品価格や送料は出店者が自由に決め、自社が選んだ宅配方法で発送するためそう簡単に”無料”に切り替えられない。もし無料にすれば、それはとりもなおさず出展者がコスト負担しなければならないからだ。

 こうした背景の中、公正取引委員会が、楽天が「出店者に対する優越的な立場を利用した不当な要求」にあたる疑いがあるとして申し入れをしたが、楽天側はあくまで実行すると強気を崩さなかった。もっともそれも、コロナウイルス騒ぎで状況は変わったようで、出来るところからやるとトーンダウンしてきたようだ。



 なんだかこの図式、私がやってきた中古車輸出業界に似ているように思えた。私が定年後、中古車輸出を始めたのが2010年。この時点では、個人が中古車輸出をやろうと思ったら、ソフトバンク系のトレードカービューに加盟するしか方法がなかった。(個人が開くECサイトなんて、アフリカの人からみれば、存在すら認識されないだろう)




  こちら、ソフトバンク系の会社トレードカービューに加盟して中古車を販売していた当時の私の販売ブランド「ローガン・モーター・トレーディング」。今でも自慢してるのは、ユーザによる評価。私から中古車を買ってくれた人の評価が5段階評価で4.7だということだ。  


    流れが変わったのが2015年あたりだったと記憶している。ソフトバンク系のトレードカービューという会社(サイト)に加盟している1社のビィフォワード(以前から既に法人として活動していた)が、メキメキと力をつけ、独自にECサイトを構えた。

  ある日、熊谷の中古車オークションに行って驚いた。当日の落札台数トップ数社の名前が張り出されていたが、なんとビィフォワード1位、しかも(毎日日本中のあちこちで中古車オークションは開催されているが)この日のこの場所での中古車オークションだけで、なんと100台も買い付けしていたのだった。
  買い付けた中古車は、当時あらたに港を整備し、お客を迎えたいと思った下関港に大量に送り込んだ。この1社だけで船一艘を貸し切り、アフリカへ大量の中古車を運んだ。聞いている話しでは、当時、月に1万5000台もを東アフリカ(右ハンドルの国)に輸出していたのだそうだ。

  
  サイトとしても、このトレードカービューは楽天同様出店者が寄り集まるマーケットプレイス。かたやビィフォワードはワンマン社長の鶴の一声でどうにでも動ける。まあ個人が中古車オークションで数台単位で買付をし、1台ごとに乙仲さんに船積を依頼する形とでは、勝負もなにもあったものではない。

  さらに悪いのは、売上が減ったトレードカービューは、加盟店への課金ルールに手をつけ、手を代え品を代え、それでなくてもじり貧の加盟店から吸い上げようとした。こんな状況の中、トレードカービュー加盟店(個人輸出事業者)は事業を諦め、撤退していった。

  とまあ、私が加盟していた世界はこんなだった。(当時の様子は「こちら 」に詳しく書いてあります)


 

  私の場合は、次の市場、ニュージーランドへの足がかりを見つけて延命することが出来たが、そうでない人の多くは再び勤め人に戻っていった。振り返って考えてみると、スタートアップには、どこかに加盟してその暖簾を活用する方がベターだろう。1から市場を自分で作ろうとなると、創業期間が長くなり、それでなくとも少ない資金を食いつぶしてしまうだろうからだ。

  ただ、過去のこうしたケースを見ると、手っ取り早く創業するには(私の場合のトレードカービューのようなところに)加盟するのが順当だろうが、どんな会社も未来永劫、右肩上がりで売上が伸びっぱなし、などというものはない。ゆえに、力をつけて自分で販路を開拓するなどしなければ、親亀こけたら皆こけた、になりかねない。もしくはいっそ、稼いだその資金で全く違う分野を手がけてみるのも良いだろう。

  以前のこのホームページに書いたように、起業分野こだわりをもつことそのものは悪いことではないが、ダメになった時には、まったく別なことに新たにチャレンジする気概を持ちたいものだ。





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