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276.  「70歳の壁」 私の視点   ・・・ (2019/05/26)


 先日、図書館の蔵書データベースを検索していて見つけたのが「定年起業のすすめ」という本。取り寄せて読んでみましたが、著者の長崎さんという方、どうやら私と同年代(1歳上?)のよう。

 鹿児島生まれ。お仕事は鉄道関係で神奈川で生活をされていたようでした。定年時の起業は墓参代行というもの。生まれ故郷の鹿児島には兄弟が住んでいるので、仕事の注文は彼が受けて、それを兄弟に伝え、墓参を代行して貰うというもの。その後、本も書かれ、講演なども引き受けていたようでした。

 本の奥付に、墓参代行業務のホームページ(URL)が書かれていたものでアクセスしてみましたが、現在は使われていないようでした。また、ご本人のメールアドレスもあったもので、メールしてみたのですが、ご返事はナシ。

 ふと思ったのは(以前読んだ本に「60歳の壁」というものがあったが)どうやら「70歳の壁」というのもありそうだということ。

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 私の場合、定年後中古車輸出事業を立ち上げた。やってみると3年でピークを迎え4年目にダウンする。それを2回繰り返した。中古車輸出というビジネス、もとは無関係のIT業界を卒業(定年)して移ってきた、それこそ素人の私にも出来るくらいですから、仕事のノウハウというほどの大げさなものはなく、誰でもやっていれば身につく程度の知恵、経験で回せるもの。また貿易というからには、世界経済、市場の変化などに大きく左右されるのは、大企業も中小零細も同じこと。

 1回目の山は、東アフリカ市場(右ハンドル市場)が成長してきたところで大手がこの市場に本格参入してきたこと。中小零細が月に数台から数十台程度輸出するのに対して、大手は月に15000台も東アフリカに輸出を始めたものだから、中小零細などはあっというまに駆逐されてしまった。かつて中古車輸出仲間は30〜40人いたが、一人を除いてすべて転業・転職していった。

 2回目の山は、ニュージーランド。偶然の出会いで中国人中古車ディーラーと知り合った。彼は自分の仕事の経験を活かしてニュージーランドに移住して同じビジネスを立ち上げたいと考え、日本の中古車オークション会場に来ていたのだった。当初、日本の銀行に預金口座を持ち、日本の中古車オークションに加盟する希望を持っていたが、いずれも非居住者には門戸を開いていない。そこでたまたま知り合った私に肩代わりを頼んで来たのだった。
 こちらはニュージーランド向けということで、東アフリカに比べると購入する車の年式も新しく、車輌単価も高めのものばかりだった関係で売上金額もそこそこ大きくなってきた。

 彼が現地に移住して3年目、現地に進出している日本の車商社と接点が出来たようだった。いままで私を経由していた車の買付を、商社が提供するインターネットで直接買付出来ることになった。結果、私のお仕事(買付の代行)は終わった。


 さて、3回目の山を作らなくてはと、この仕事を始めたそもそものきっかけとなったアメリカ留学時代の同級生のガーナ人に相談した。彼も、欲しいと思っている日本のSUVのことで相談してきた。ところがである、アメリカに残してきた奥さんとの離婚が正式な手続きを終えていなかったようだ。女性の地位の高いアメリカでの離婚訴訟。彼が想像する以上の時間と労力とお金がかかった。
 当初、彼が想像していたのは半年程度だったようだが気がつくと1年を超えていた。また、離婚時に彼の財産(不動産)を処分した関係から税務署への申告も必要になったようだ。一度途中でガーナに戻ったものの、通算で1年半近くの時間がかかった。

 私は、50歳代に勤めていた外資系企業を退職してしまったことがある。この時は50歳代ということもあり、半年間、何も仕事をしていなかったことが、なんとなく後ろめたかったものだ。しかし今はというと、ゴルフも楽しいし、また年齢的(69歳)ということもあり(何も仕事をしていなくとも)まったく後ろめたくない。しかしこれが次のステップへの行動を起こさせることを遅らせているという感がある。

 確か、中古車輸出事業を始めて3年目だったかと思うが税務署から検査に来た。たまたま検査に来た税務署員の方、年格好からして、私よりも少し上?つまり定年延長で税務署にいる方のよう。私の方から聞きたいことがあって電話しても、不在の日があったことからもこうしたことが推測出来た。この方に、互いに同年代ということから、こんな質問をしてみた。「定年後起業で一番難しいことって何だか分かりますか?」と。私の考えでは「創業時の情熱」をずっと維持し続けることが一番難しいのだと思うと説明した。


 冒頭の本、「定年起業のすすめ」の著者は私よりも1歳上の方(つまり既に70歳)のようです。かつて設置していた(墓参代行の)事業用のホームページは無くなっていました。多分、昨今は各お寺さんが墓参代行をやっているので、必要性が薄れてきたのでしょう。またメールしても返信が来なかったことからして、もはや事業はしていないのかも、と推測しました。





 そうなのです、定年起業の一番難しいことは、創業時の情熱をどこまでひっぱってやっていけるのか、ということだと思うのです。そういえば、かつて読んだ本、加藤仁さんが書かれた「おお定年」にも、長く定年後の活躍を調査していると、かつてあんなに元気にやっていた人が、その後は活動を休止、もしくは中止されれているケースが多かったと書かれていた。

http://shiroganex.web.fc2.com/self/page_58.htm

 60歳定年で夢を描いて起業したとしても、はたまた、そこそこ成功してきたとしても、70歳になってその初期の情熱が維持出来ているのかどうか。自分自身に照らし合わせてみても、難しい課題だと思っている。

 今、70歳以降も仕事を続けられるよう、アフリカ、ニュージーランドに次ぐマーケット探しをしているところだが、現時点での推測としては、再開出来ればそれで80歳になるまで長くお仕事を続けらそうだが、もし一旦止めてしまうと、それで終了ということになりそうだ。自分に対してもエクスキューズしやすいし、周りもまた、70歳で仕事をしていないことに周りの人たちも寛大になっているだろうからだ。






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