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275.  「60歳の壁」 植田 統 著、朝日出版   ・・・ (2019/05/12)

植田統 著、朝日出版


 私は図書館データベースから「定年」「起業」といったキーワードで出版物を探し、多数の本を読んできた。そんな中からこれはご紹介したいと思ったものをこのホームページに掲載紹介している。

 こうした本を読む際に、本の内容を把握するべく「まえがき」と「あとがき」に注目している。というのもこの2つで本の内容のほとんどが語られているからだ。まずまえがきにあたる「はじめに」に出てきた単語の「生前葬」という言葉に興味をひかれた。なるほど、再雇用で定年が65歳まで延長されたとしても、会社としては社員を「一旦60歳で定年という名で成仏させ」残りの年収は「余った人生」として扱われる、ということだと定義している。
 ゆえにこの本の著者は、「自分は生きている。自分の力を精一杯発揮している」という人生を送りたい、そうすれば最後に成仏出来るはずだ、と結んでいる。この著者ならではの面白い捉え方だ。

 私などはゆる起業だったが、著者がここまでチャレンジャブルに60歳前後の時代を生きて行こうとした理由が分かった。というのも著者は54歳でサラリーマンをやめ、自分で弁護士業を開業したのだから。更に詳しく説明すると、「おわりに」によれば、著者は東京大学法学部を卒業し東京銀行に就職している。つまりまごうことなきエリートなのだ。そのエリートが60歳の壁にぶつかっていると感じたのは、かつての東大の先輩であり銀行の先輩たちなのだ。彼らもエリートならではの昇進を経て60歳で執行役員になるなど(エリートとして最先端を走ってきた)者ですら60歳がひとつの壁として存在したのだという著者の実感からこの本のタイトル、「60歳の壁」が生まれたようだった。


 日本人の寿命が伸びて来ている今考えなくてはならないのは、著者の言葉で言えば「もはや60歳の壁を打ち破ることは、やってもやらなくてもいいことではなく、絶対にやらなければならないことになりつつある」という部分だと言う。
 若干ニュアンスが違うのは、私の考えは60歳定年が一つの転換点であることは承知しているが、何度かの転職を経験している私にとってはいくつかあった過去の転換点と同様の1つと考えている点かもしれない。つまり、曽野綾子さんの著書にあった考え方、「人類は有史以来、死ぬまで働くのがあたりまえだった」に近い考え方をしている点からかもしれない。

 この本のタイトルの「60歳」は読むべき対象者に勘違いをさせるだろう。本来は60歳になってからではなく、50歳代で読んでおくべき本なのだと思う。つまり、この本をお薦めする対象としては、私のように定年後にゆる起業(以前とはまったく分野違いの中古車輸出を)を始めたような人間にではなく、50歳になった頃から、既に60歳の壁を意識して、50歳代と同じような輝きを維持して行こうという人にお薦めしたい本だ。



以下はこの本の中で私が共感した項目です。

60歳の壁を打ち破った人の特徴

1.組織に頼らず、自分ひとりで生きる覚悟を持っている。
2.人を大事にすること
3.ビジョンとそれを実現できるスキルを持っている。
4.決断力があり、実行力があること。
5.勉強熱心だということ。
6.皆明るく健康で、いかにも元気そうであること。

 「60歳の壁を打ち破れる人の見た目は、とても60代、70代には見えない人が多い。若々しく、実年齢より大体10歳は若く見える」とのこと。自分で言うのも何ですが、私も10歳若く見られています。エヘン

60歳の壁を打ち破るためにすべきこと ・・・ 気持ちをリセットする

1.自分ひとりで生きて行く覚悟を持つ
2.零細企業のおやじに学ぶ
3.年齢を言い訳にしない
4.新しい人脈を作る
5.新しいものにチャレンジする
6.変なプライドを捨てる

軍資金を準備する

 お金が全然ない状態で新たな仕事に挑戦すると、仕事を立ち上げた翌日からいきなり売り上げを立てるプレッシャーに苛まれ、将来に向けてのビジョンの達成よりも、明日のパンが大切になってしまう。ゆえに、ある程度の軍資金が必要、と。

 ではどれくらの軍資金を用意して臨めば良いのか。著者によれば、出来れば1000万円、少なくとも500万円あれば、ゆったりと構えてクライアントを獲得していることが出来る、と言う。

 著者の言葉の中で頷けるのが、「この金額は、なくなってもいいと思っておいてほしい。生活資金は別に残しておいて、この金額はビジョン実現の授業料と位置付けて欲しい」とあった。
 なるほど。若い人でも、年配の人でも同じだが、起業して即利益が出て、というシナリオしか考えていない人も多い。著者のような考え方が出来れば、やっている仕事そのものを楽しめる気がする。また、楽しめてこそ、長く続けられるのだと思う。

 ニュアンスは多少違うが、私も起業資金についても同じような感覚でいた。(私のやろうとした事業には500万円も必要としなかった)用意した300万円は、万が一「起業」が成功したなかった場合の授業料と思って臨んだ。つまり払った授業料で、多くを学び、楽しませて貰えれば、そこから先、たとえ事業が萎んでしまっても、それはそれで受けとめようと思ってスタートした。


自分の見せ方を工夫する

 この本のタイトルをご記憶の方もおられると思いますが、ベストセラーになった本です。内容は、本のタイトル同様、見た目が大事、ということを説明している。

 この本ではこのあたりをこんな風に説明している(著者の場合は弁護士としての信頼感を得るため)

・クライアントに信頼して貰うに足る作りのビルのオフィスを構える
 これは集客をインターネットだけに頼らないためにも必要と

・身だしなみと話し方に気をつける
 


毎日情報をインプットする

 スマホの普及もあって、間違いなく新聞を購読する人は減っている。私もそう思っているが、著者も紙の新聞を情報収集のメイン媒体とすべきというご意見だ。

 私の考えでは、大きな紙面を俯瞰(高い所から見おろす)してみて、興味あるトピックスを目に留める。こうしたランダムアクセスは紙面では出来てもスマホでは難しいと思っている。スマホでは箇条書きされたリストから選ぶかたちになる。つまりシーケンシャル(順次的な、逐次的)にトピックスを追っていく形になってしまう。

 こんな話を若手の方にすると、「何年も新聞は読まないけど(スマホだけで)生活に支障はないですよ」と言う。確かにそうかもしれない。私が1976年の1年間アメリカに留学した。当時はインターネットなど普及していない時代。日本の新聞など読めるはずはないが、特にそれで生活に支障があった訳ではないのだから。
 ただ、当時は学生だった訳で、積極的にビジネス展開をしようとしていた訳ではないので、問題なかったが、もしビジネスでもしていたら、やはり毎日のビジネス情報のニュースソースとして新聞は欠かせない存在だったろうと思っている。


60歳を超えて、現役を続ける心と体の作り方

・朝型人間に切り替える
  年を取ると自然に、早寝、早起きになるので心配ないような気がする

・ランチを活用する
  人との付き合い、お酒が入る場合でも、私は昼間にお付き合いするようにしている

・ストレスをためない
  61歳で心筋梗塞になり、退院後勉強した。それによれば、男性の場合、精力が落ちると、ストレスに対する抵抗力が下がるようだ。60歳以降も仕事を続け、それが為に病気になってはもともこもない、というもの。


人生を再設計出来る人、できない人

・年だと思ってあきらめない
・自分の夢を思い出す
・自分を100%信じる
・後ろを振り返らない



 いかがですか?項目を見ただけでも、読んでみたいとお思いになったのではありませんか?

 繰り返しますが、この本は60歳になってから読むというよりは「50歳代で独立・自立の方向を目指す人が読む本」 という気がします。ただ、60歳、定年を迎えてから読むのは無駄かというとけしてそうではありません。60歳、定年後に起業した私にとっても、1つ1つが頷ける内容でしたので。





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