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166.自問自答(何の為にそれをするのか)    ・・・ (2014/08/31)


  何かを始める際に大事なのは、What (何)、How (どうやって)の前に、why (何のために?)をしっかりと見つめて

 あるセミナーで声をかけてくれたのが67歳の方。中古車輸出の仕事をしたいのでいろいろ教えて欲しいとのこと。その後メールで、例えば中古車オークション会場にはどんなところがあるのか、そしてそれはネットだと何処を見れば分かるのか、などを伝えた。まずはそれらを調べて希望する会場から資料を送って貰うといいですよ、とアドバイスをした。3週間ほどたって、その後どうされたかメールで聞いたところ、何もしていない様子。別なセミナーに参加する予定があったので、そこに誘ったついでに直接話を聞いてみることにした。

 それによれば、中古車輸出は以前からやってみたかったこと。しかし(私を含め数人から)話を聞いたところ、どうやらかなり時間を割かなければならないことが分かって、それで思案しているとのこと。つまり仕事はしたいが自分の時間の4〜5割にとどめたいとの希望。私も同年代なので、心境は理解できるがパートタイマーで起業しようというのはちょっと無理。飛行機の離陸と同じで、起動は一番パワーをださなければいけない部分。いったん水平飛行に入ったのであればいざしらず(私の知る範囲では)全力疾走することなしに事業の立ち上げをするのは無理と思う。

 ふと気が付いた。この方、肝心なことが明確になっていないことが。私の理解では、何(どんな仕事)をやるのか、つまりWhat、そしてどれをどうやるのかHowの前に大切なことがある。それは、何のためにそれをやりたいのか、つまりWhyの部分。ここがしっかりと出来ていないと先々、困難に出合った時に拠り所がなく、前進する力が殺がれるから。

 余談だが、私が(東京しごとセンター 主催)創業寺子屋塾に初めて参加した際に、「起業してみると分かるが、心が折れそうになるときがある」と講師から言われた。まさにそのような状態に直面した。私の場合で言えば、東北大震災の年がそれだった。多くの輸出事業者が輸出すべく港に運んだ車が、放射の汚染で輸出差し止めになり、輸出港は大混乱に陥った。私の場合は、それに追い打ちをかけるように港で輸出待ちをしていた私の車が追突事故にあい、輸出出来なくなった。さらに損害保険会社は1か月も音沙汰なし。連絡してきた時には、一方的な主張ばかり。混乱、怒りとで、心が折れる前に心臓が悲鳴を上げた(心筋梗塞 )。救急車で病院へ運ばれ、翌朝のカテーテル手術。それが終わってしまえば胸の苦しさはなくなる。その後2週間ほどの入院生活の中で考えたのは、今までやっていた1年の課題は何か。どうしたら2年目はより良くなるのかだった。つまり考えたのは、撤退することではなく、どうやったらより前進出来るか、だった。それは(定年後であっても)何故仕事がしたいのか、がはっきりしていたお陰だった。

 とまあ、こんな具合に、起業してみると何もトラブルがなければ、それは幸運としか言いようのないほど(程度の差こそあれ)何かが起こる。そんな時に、何故こんな苦労をしてまで仕事がしたかったのかを思い出す必要がある。仕事をしたい理由が明快であればあるほど、それを拠り所に困難が乗り切れる。多分、生活のためにお金が欲しい、といったシンプルな動機が最も強い動機になるのだと思う。(余談ですが、個人が中古車輸出で生活するのはほぼ無理ですので、念のため!)


 さて話を戻してこの人に(年金の貰える67歳になって、更に)仕事がしたい理由は何ですか?とお聞きした。どうやらそうした考え方はしたことがなかったようで、当を得た返事は得られなかった。そこで例え話で質問をし直した。30過ぎの男性に「結婚する気はないの?」と聞いたとする。で、答えは「結婚したい気はあるけど、自分の生活パターンは変えたくないんです」といった返事があったとする。あなたは何とアドバイスしますか?結婚は、シングルの時とは違う生活パターンになる、しかしそれを含めて相手のことを好きになればこそ結婚が成立するはず。独身の自由な生活パターンを維持したい、と言った時点で結婚は無理、となる。この人の仕事感も同じなのだと思う。


 シニアの起業は思い立ったが吉日かも。定年をして時間がたてばたつほど腰が重くなる。私の場合で言えば、漠然とだが、50歳を過ぎたころから定年後のことを考え始めていた。その1つにと当ホームページ「50歳からの手習いゴルフ」を(53歳の時に)立ち上げた。
 こんな私でも64歳になった今、この程度なのだから、会社勤めを定年延長し65歳から起業と考えると(年金支給が開始されることもあり)なおさらハングリーさは出て来にくくなるのだろう。まあもっとも、起業するのが幸せとは限らないので、もしもあなたが「ずっと仕事をしていきたい」と思う人であるならば、という前提における話なのだが。


エルヴィン・ロンメル

 第二次世界大戦、アフリカ戦線での活躍から「砂漠のキツネ」と言われた。ドイツ国民から英雄として尊敬されたが、戦争後半、ヒットラーの考え方に疑問を持ち、ついには暗殺計画に加担する。
 計画は失敗に終わったが、国民的英雄を処罰するわけにもいかず、ヒットラーは彼に自決を求めることにした。

 彼が死を覚悟した時、息子に言い残した言葉が、「何かをしようとする時、何の為にそれをしなければいけないのかを良く考えるように」だった、と聞く。 

 いつの時も、何かをする時は、まず考えておかなかくてはいけないのはこれだと思う。



「人の振り見て我が振り直せ」とは良く言ったものだ

 さて、この人にアドバイスをしていてふと気が付いた。そのアドバイス、そのまま自分にも当てはまることが。市場が変化して以前のようには売れなくなった。売れないのは自分だけでない、というエクスキューズがしやすい状況の中で、のんびり体質が戻ってきてしまっていた。更に64歳という年齢がハングリーさが失わせる追加要素になっている。(赤字にさえならなければ)売れなくても生活自体困らない、がゆえに困難を突破しようという気力までもが減退していた自分があった。

 先程の飛行機に例えるならば、高度1万メートルを水平飛行をしていると思っていたら、いつのまにか高度が下がっていた。いけない、いけない、今一度エンジン出力を上げてもとの高度に戻さなくては。

 市場が変化したのであれば、別な市場を探すしかない。現在は、それを模索しているところ。私ひとりくらい入り込めるスペースは必ずある。

 

 


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