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  ウクライナ通貨誕生(独立の命運を賭けた戦い) ・・・・ (2023/04/23)

  92年、自国通貨創造に携わったエコノミストの記録。  西谷 公明 著 岩波現代文庫  1,232円


ウクライナ 通貨誕生
岩波現代文庫 

 


 この著者の本を読むのもこれで最後になります。発端は、西谷公明氏が(99年にトヨタ自動車へ入社し)2004年から2009年まで ロシアトヨタの社長を務めたということを知ったことがきっかけでした。日本とは、社会構造がまったく違っていそうなロシアで自動車を販売してきた人ってどんな人なのだろうかという興味からでした。

 浮かんできたのは、この西谷氏が、日本で数少ないウクライナを知る人だったということでした。あまりに長期の話しであること、また一つの国が独立して、自国の通貨を発行出来るようになるまでの話は、そうそう聞けるものではありません。もっとも、読んでみて、あまりに次々といろいろなことが起こるもので、読み終えた時点では、私の脳はいささか混乱ぎみでした。

 そこで、この本に著者自身の手で書かれた文の中から、分かりやすそうなものを探し、それを紹介したいと思います。


 「まえがき」より (一部要約しています)

 私が始めてこの国を訪れたのは、ソ連崩壊直前の1991年秋でした。当時、私は銀行系のシンクタンクに勤めており、激動するソ連情勢を調査するために、その頃はまだソヴィエト連邦構成共和国のひとつで、独立の急先鋒だったウクライナの首都キエフ(キーウ)を訪れた。
 この訪問がきっかけとなり、ソ連崩壊から明けた1992年5月から10月までの半年間、最高会議の経済改革管理委員会のお世話になり、ゼロから国作りの実情をじっくり見させていただいた。

 (さらに)1996年から99年まで3年間、外務省が派遣する専門調査員として、開設してまもないキエフ(キーウ)の日本大使館で勤務することになった。「通貨誕生」は、文字通り「ルーブル経済からの離脱」という、ロシアとの主として経済面での確執と対立を、国づくりの現場の視点で描いたルポルタージュ(がこの本)である。


 
 ロシアがウクライナに侵攻した最大の理由は、どうやらウクライナがNATO加盟に靡きだしたからのようだが、その前段階として、  ソ連崩壊後にウクライナがロシア経済圏から離脱しようとし、EUに靡いたことなども大きく関係しているようですね。つまり、核となる主要素(NATO関連)のまわりに、様々な環境的要素が加わり、ある時点で、それが雪崩のように動き出したということのようですね。そうしたことを、少しでも理解に近づきたい思ったことが、今回の同じ著者(西谷公明 氏)の3冊の本を読んだ理由です。

 「ロシアトヨタ戦記」2004年から2009年、そして前回ご紹介した中央アジアの状況、「ユーラシアダイナミズム」(2019年/10月初版刊行)に書かれていること。そして時間は遡って、今回のこの本「ウクライナ通貨誕生」の背景にもなった調査、1992年5月から10月、そして1996年から99年まで3年間、外務省が派遣する専門調査員としてキーウに滞在したこと、と時間を遡って読んでみた。

 西ウクライナとロシア系住民の多い東ウクライナなど、必ずしも一枚岩とは言えなかったウクライナが、まがいなりにも同じ方向を向いて団結しだした背景に、ロシアによるウクライナ侵攻、それに対するウクライナ人の自国領土を守るための戦いが大きく関係しているのも、なんとも皮肉な話しだと思う。


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