422. 「輝ける場所を探して」 山口 絵里子 著、講談社 ・・・ (2024/03/03)
2024年2月28日、私は「東京しごとセンター」の依頼で水道橋のあるビル内になる講演会場に出向いた。40名弱の受講者の方に私の創業体験をお話しした。講演の最後に、創業の楽しさについて触れた。創業はまるで丘を越えて行くようなもの。よしんば東京大学を出ようとも丘の向こう側の景色は想像でしかないが、思い立ち、行動の移しさえすれば、自分の足で丘を越え、向こう側の景色が見えるのだ、と。
1つの丘を越えた経験が、更なる行動へと導いてくれる。今回、講演の中でも紹介したマザーハウスの創業者、山口絵理子さんのケースがそれだ。
山口絵理子さん4冊目の著書が「輝ける場所を探して」だ。
彼女が通った大学で「開発学」なる授業を受けたのだそうだ。そこで「途上国のために働きたい!」と思うようになった。その思いを実現するために、まずはアメリカの開発銀行のインターン募集に申し込んだ。しかしそこでインターンをやりながら感じたのは「援助が本当に求めている人の手に届いていないのではないか?」という疑問だった。その疑問に答えるには「現場に行くしかない!」との思いに至った。
アジアで最貧国と言われるバングラデッシュへ行きジュート(黄麻)という素材と出会った。苦労の末これでバックを作るところまで辿りつきマザーハウス設立の原点となった。(詳しくお知りになりたい方は、山口さんの著書、裸でも生きる、第1巻と第2巻をお読みください)
次はネパールのカトマンズへ行った。ここでも様々な苦労をした後、「シルク」と「カシミア」のストールを日本レベルでのクオリティの商品として完成させた。お陰でマザーハウスは日本、台湾、香港の3拠点で28店舗にもなった。
これで終わらないのが山口さんらしいところ。2015年にインドネシアに行った。ジョグジャカルタで細い銀線を細工したアクセサリーと出会った。ぜひこの職人さんに会ってみたいと思い、ある村まで尋ねて行った。
職人さんは、仕事がある時には銀線細工のアクセサリーを作っているが、仕事のないときは農業をやっていた。この村には多数のこうした職人さんがいたが、その中でリーダー的な職人さんに頼んで、日本人好みの小さくて可愛いアクセサリーを作って貰った。最初は面倒くさがっていたが、山口さんの指定するデザインで作ると、なかなか素敵なものが出来たのだった。
インドネシアの伝統的な金線・銀線細工のフィリグリー。ゴールドやシルバーは織りなす繊細なモチーフを楽しめるシリーズです。 マザーハウス・ホームページより |
いかがでしょうか。私の場合は、中古車の輸出先をアフリカからニュージーランドへ、さらには(現在は)アメリカ向けと変化させて来ましたが販売しているのは一貫して中古車。あまり面白い事例としてお話し出来ないので、山口さんの展開を紹介させて貰いました。(もはや私のような個人事業では成しえないもので、多くのスタッフを抱えるマザーハウスであれば出来たこと)
さて、最初のお話しに戻しましょう。創業とは、1つの丘を越えること、とお話ししました。丘は1つを超えると(1つ夢を実現すると)それが良い刺激となって、次の丘を越えたいと思うようなる。まさに山口さんのお仕事は、アジアの発展途上国の中から素材(ジュート、シルク、カシミヤ、レザーなど)、そしてそれらを加工する優れた職人さんを探して結びつける。あとは山口さんのデザイナーとしてのセンスがそれらを完成度の高いものへと導いている。
まあここまで組織を大きくすると(資本金:27,950,000円)マネージメントが大変でしょうね。聞いているところでは、経営は男性に任せて山口さんご自身は会社の方向性を決めることと作るもののデザイン的方向付けに専念していると聞いています。また現在は結婚してお子さんもいるそうです。今後の更なる活躍が楽しみですね。(マザーハウスホームページ)