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418. 簡単そうで難しい中古車輸出ビジネス  ・・・ (2024/01/14) 

    中古車輸出ビジネスはネットビジネスにあらず

 過去に「中古車輸出ビジネスをやりたいので指導して欲しい」という依頼を3件受けた。うち2件は、旦那さんにこの仕事をさせたくて奥さんが相談してきたケース。いずれも旦那は外国人で日本語も十分ではなかった。アメリカで仕事をしようとするのなら英語が話せないのは問題外。同様に日本で仕事をしようとするのなら日本語が出来ないというのは問題外ですね。

 最後の1件は日本人で、しかもeBayなどで活躍されている方ご本人。結論としては、創業に至らなかった。そこで分かったのは、中古車輸出ビジネスは、一見ネットビジネスに見えるかもしれないが、ネットビジネスと捉えると上手くいかないということが。聞いてみると浮かび上がったのは、例えば、通常言われるネットビジネスでは保証人を求められることなどないが、中古車輸出(中古車オークションに加盟する際に)では保証人が必要となることだった。これは、昨今のネットビジネスを立ち上げる人たちが30代、40代であるのに対して、もともとの中古車オークションを立ち上げた世代はもっと高く50代だったからだろう。つまり簡単に言えば、見た目はネットで出来るビジネスのように見えても、実態は旧態ビジネスなのだ。


中古車輸出輸出を始めるには

<大前提>
「古物商のライセンス」
 まずは「古物商のライセンス」が必要です。これは、例えばebayやメルカリでも商売として継続して続けるのであれば取得が必要なようだ。ですので、中古車輸出の場合、古物商ライセンスを取得するようにと言われても違和感はなさそうです。

 これは最寄の警察署で取得可能です。私の場合2010年に取得したが、記憶では2週間ほどで取得出来た記憶がある。しかし、現在は、ネットビジネスの流行で取得希望者が多いようで、場合によっては2か月かかるようだ。


「事業開始届」 ・・・ どのようなビジネスをスタートするにせよ、まずは税務署に「事業開始届け」を出しておく必要がある。
 中古車輸出ビジネスの場合、法人でも個人事業(青色申告事業者)であっても、どちらでも構わない。ちなみに私は10年以上個人事業(青色申告事業者)として中古車輸出を行っているが、何の不便もない。(法人でも個人でも差別されないのがこのビジネスの特徴かも)

 税務署に届けておくと便利なこともある。その1つがこれ。青色申告事業者の場合、起業時にかかった費用は繰り延べ出来ます。さらに具体的に言うと、開業費を繰延資産として計上し、開業後に5年の均等償却ができるということです。


「保証人」 中古車の仕入れは、基本的に「中古車オークション」で買い付けるのが一般的。
 オークションに加盟するのに必要な条件は、@古物商を取得して1年以上経っていること。A保証人をたてること(1〜2名)が必要となる。

 これを読んで分かるように、古物商ライセンスを取りさえすれば、即中古車の仕入れが出来ると目論んでいると、当てがはずれる。(中古車買い付けの例外的な方法もなくはないが、それはあとで説明します)

「中古車オークションに加盟」
 私が加盟しているのはTAA(トヨタ・オート・オークション)、CAA、USSなどで、それぞれ日本のあちこちに会場を持っているが、これらはいずれも大手中古車オークション会社。次に中堅としては、アライグループがあるが、ここのユニークなのは栃木・小山にトラックなど大型車両のオークション会場、さらには建機・農機のオークション会場も持っている点だろう。

 次の規模の会場、たとえばMIRIVEがある。こちらは埼玉、愛知、大阪の3拠点を持つオークションン会社。さらに小振りなのがHEROオークションで埼玉、東松山にある1拠点のみ。私がかつてアフリカ向け車両を調達した時、重宝したのがこのオークションでした。

 最後に、JUグループ。こちらは整備工場の経営者が中心になって設立したオークションで、日本中に整備工場があることから支社会場も沢山ある。基本、形態は事業組合っぽいですね。


中古車オークション会場とネット競りシステムとの関係

 中古車オークションで、新規に中古車輸出を始めようとする人が勘違いするのがこちら。

 まず自前のオークション会場を持っている会社が、平行してネット入札も出来るようなネットシステムを持っているケース。先のTAAとCAAは共通でTCAΣというネット入札システムを用意しています。このTCAΣネットシステムを利用したければ前提としてTAAかCAAに加盟している必要がある。
 同様にMIRIVEに加盟すればMIRIVEネットが(無料で)使え、またアライオークションに加盟すればAINETが(無料で)使える。追加で、AINETは、アライグループの会場の他に、複数の他社サイトの入札システムとしても使える(例えば、私はTAA、CAAを使う頻度はあまり高くないので、それらの出品内容を知りたい時には)AINETで参照している。

 これとは別にi−AUC(アイオーク)とAUCNET(オークネット)いうネット入札システムがある。こちらは自前のオークション会場は持たず、幅広いオークション会場を横断的に網羅してくれている。基本、加入者には古物ライセンスを持っていることを求めてくるが、どこかのオークションに加盟していることは加入要件には含まれない(もとより、どこかのオークションに加盟しているのであれば、そのオークションが用意してくれているネット入札システムを使うのが一番便利だ。一例で言うと、TAAに出品されている車を買うのであれば、TCAΣが使い勝手が良いということになる)

 会場を持つオークシステムと会場を持たないオークシステムの違いは、簡単に言えば落札時の手数料の違い。例えばTAAに出品されている車を買う場合の手数料と、同じ車をi−AUCで買う場合では、i−AUCで買い付けする方が手数料が高くなる。つまり継続的に長く中古車の仕事をやろうと思ったら、どうしてもどこかの中古車オークションに加盟する必要がある、ということだ。





 さて、今回、たまたま中古車オークション会場で出会った外国人青年が、中古車輸出ビジネスをやってみたいとのことなので相談に乗っています。彼の場合の特徴は、「古物商ライセンス」は勿論「中古車オークション」にすでに加盟していること。つまり、初心者がやろうとする時に躓き(つまづき)そうな部分を”既に”クリアしていることだ。

 過去何度か指導をしてきて、様々な困難から中古車ビジネスを軌道に乗せることが出来なかったのは、すべて上記(特に保証人を立ててオークションに加盟する)が出来なかったから。その意味で、この彼は、すべて条件をクリアして、中古車オークションにも加盟出来ているので(つまり、車の仕入れが出来ているので)あとは「輸出」という部分を教えれば良いので、今回の彼はモノになりそうです。



 まず「輸出の仲介サイト」に加盟する必要がありますが、現在あるのは以下の3社。

カーフロムジャパン  https://carfromjapan.com/

 こちらも低迷した時期があり、起死回生と選んだ市場がアメリカ、対象車両は「軽トラック」。売れ行きを推測すると、TCVと互角に売れているという印象。つまり北米向けの軽トラをやろうというならこちらがお薦めかと。


カーディールページ  https://www.cardealpage.com/

 親会社はロジコという陸送ビジネスの会社。手広く海外での陸送も受けていると聞いています。ここのサイトの特徴は、普通乗用車がメインで、恐らく輸出先の対象国はアフリカで、加盟している会員には、中堅輸出事業者が多いようです。

 この会社の優れたサービスに「プライシング・マネージャー」がある。これは自社のサイトから輸出をしている各社のデータをデータベース化し、それを加盟店に有料(1万円)で提供している。これはとても便利で、どんな車種が売れているのかが一目瞭然なのだ。あとは、オークションで落札実績を確認し、それよりも安く仕入れることが出来れば利益が確保できる、というものだ。輸出を始めてやる人には、あって良い機能だろう。

 ※ 「プライシング・マネージャー」利用者インタビュー (ご一読を!)


TCV  https://www.tc-v.com/

 (かつてソフトバンク系列の企業カービュー社の事業で、私もTradecarview時代に加盟していたことがあります)。その後、大手輸出事業者のBeForwodの躍進で売れ行きが低迷し、撤退。現在は(株)じげんが、引き継いでいる。

 私の印象では儲け主義という印象。というのもすべて新規の加盟社には加盟後(研修費の名目で)初期費用がかかるのだが、それが高額(70万円?)なので、これから10年くらいやるぞ、というのでもなければ初期費用の回収が難しいかもしれない。
 なので、新規にこれからどこかの輸出仲介サイトに加盟したいという人にはお勧め出来ません。売れる車両は、上記2社を兼ねているようで、普通乗用車も、軽トラックも、そこそこ売れている様子です。



販売までのステップ

 実は、中古車輸出ビジネスは「販売の部分」だけを見ているとネットビジネスと言えなくもない。代金回収はエスクローサービスと言って、メルカリが販売代金を一旦預かり、出品者が間違いなく商品を発送したことが判明した段階で、所定の手数料を引いたのち、売り手に支払う仕組みがあるが、それと同様である。なので、売り手からして代金回収の心配はない(同様に購入者も、お金を払ったが車が届かない、と言ったことが起きない)


 さて、ネットビジネスのようであっても、ネットビジネスと捉えてはいけない部分。まず、中古車である以上、競りに入る前に実物を確認(現車確認)は必須と考えます。特に初心者がここで手を抜くと、先々困ることになりかねませんね。

 ・ 現車確認の効用
 私の場合、現車確認時にあらためて値踏みをして、いくらまでなら買って良いのかを判断して競りに臨んでいる。それで落札出来たら、次のステップで雑巾を持って車の停めてある場所に行き、まずは軽く車の清掃をしている。それが終わったらあらゆる角度から車の写真を撮る。この部分は乙仲さんにでも頼めば2,000円程度でやってくれるようだ。しかし、自分の目で様々な個所を確認した上で、この車のセールスポイントを探るのが私なりのやり方。

 こうした作業を落札後30程度かけてやるので複数台を落札してしまうと後処理にかかる時間が大変だ。
 それが終わったら、帰宅し(私の場合は)乙仲さんに連絡をし、陸送してもらうべくネットで手配をする。陸送会社は複数あるので、自分でどこかに手配しても良いのだが、乙仲さんに頼めば、輸出までの流れを把握しておいてくれるので、行き違いが防げると思っている。

 出品の際、値付けをいくらにするのか?またアクセス数の変化を見て値段を下げたりもする。さらに前述のような手間をかけて撮影した多数の写真からどれを選ぶか。またどの順番で掲載するのかも考えたりする。このあたりは、メルカリでもやったことのある人には想像出来る部分だろう。

 その他、私なりの工夫があるのだが、そのあたりは他社さんのやっていることを見てご自身で考えて貰うことにしよう。


販売後

 売れた後のことだが、すでに車の登録の件で陸運局に行っている人なら戸惑うこともないだろう。所有者移転登記の他に「輸出抹消」という手続きが加わるだけだ。特に難しいことはないだろう。

 ここまでやれば輸出の手配(船の手配)は乙仲さんが担当する部分。乙仲さんと相談しながら手続きを進め、船積みしたら、最後には、バイヤーに輸出書類を発送する。
 以前私はDHLとも契約していたが、しばらくニュージーランド向けをやっていたもので(ニュージーランド向けは書類もすべて乙仲さんが手配してくれるので)国際クーリエ便会社との縁が切れていまった。北米向け輸出に際しては書類の海外発送も乙仲さんにお願いをしている。

  ※ 連携する乙仲さんをどこにするのかは、輸出仲介サイトに加盟する際に、何処か紹介して貰えないか聞いてみるのも良いだろう。
   私の場合は、ニュージーランド向けをやっていた時代の乙仲さんに面倒を見て貰っている。
  
 

  以上は、前述の方(オークション会場でたまたま出会った外国籍の青年)との出会いが発端だ。現在小さいながらも中古車屋さん(店舗)をスタートした様子。店舗を持って販売するのは大変だろうなと推測。出来れば、同じ車を(海外向けに)ネットでも、また店舗でも売れるという相乗効果が期待出来るビジネス体制に持っていくことが出来れば、資金的な面からも経営が楽になるのではないかと推測、結果、まだ手がけていない海外輸出をお薦めした次第です。

 


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