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386  ニュージランドかオーストラリアか ・・・ (2023/01/15)  


  中古車ビジネスをスタートされたNagomi Motor Tradingさんのお仕事のお手伝いをしてきた延長線上で録画したYoutubeに私も同席したことからか、それを辿って私のところにコンタクトされてくる方が何人かいましたが、そんな中で、オーストラリア・ニュージーランドに目を向けた輸出事業を検討されているという方からの問い合わせがありました。

 私自身が必ずしもオーストラリア・ニュージーランドの専門家でも何でもないのですが、まあ、私がやってきた浅い経験でも無いよりはマシなのかな?と、知っている範囲のことを整理してみたのが以下です。


まず、オーストラリアとニュージーランドでは状況が違うことを理解して貰う必要があります。

 ニュージーランドについては、市場が開かれています。世界的には右ハンドルの国は3割だそうですが、地理的な(緯度は南半球と北半球と違うものの、経度がニュージーランド近い、ということは時間帯もさして違わない)優位性で、また世界的にも認められている優秀な日本車製造企業を持つ日本がダントツに優位にたっているのがニュージーランド向けの中古車輸出です。(聞くところでは、ニュージーランドが輸入している中古車の9割が日本車だそうです)


 かたや、まだ市場が開かれているとは言い難いのがオーストラリアです。 私の知っている範囲で言えば、特定の許可を得た業者のみが日本から中古車を輸入をしているのがオーストラリア市場のようです。

 過去、私は2度ほど、ニッサン、エルグランデを輸出したことがありますが、調べてみたら、2度とも同じオーストラリア、NSW 州のTamworthにあるディーラーさんでした。聞いているところでは、年間に輸入可能な台数が政府より規定されているようでした。


 
 また、オーストラリア向けの中古車輸出に関しては、先日も、お付き合いのある「乙仲さん」とのメールのやりとりの中で、こんなことを教えて貰いました。それによれば、

 JAMVEA様(日本中古車輸出業協同組合)から豪州政府へ規制緩和に向けた働きかけは行っている様ですが、現段階で特段規制緩和された分けではございません。ただ、AUS政府がWEBサイト上で公表している、現地輸入可能な車輛詳細は公開されていました。

 このリストなるものを確認してみたら、このリストの中に、私が輸出したエルグランデも対象車種に含まれていました。

 こうした現状ですので、オーストラリアとニュージーランドに中古車を輸出したいと思っても、オーストラリアへは、何か特別なコネでもない限り、大規模な中古車輸出は難しそうです。(中古車大手のガリバーは、市場が開放された時のために、現地企業と提携関係をつくるべく、行動を起こしている様子ですが)



それではニュージーランドについて、私の知る範囲をご紹介します。

 かつて中国の中古車ディーラーさんがニュージーランドへの移住を前提に中古車販売店の出店を計画しました。最初は、自分で日本のオークションから車を仕入れようと、何度も日本へ来ました。その初回に、偶然私が彼ら夫婦と中古車オークション会場で出会った訳です。
 彼は、日本に銀行口座を開設し、日本の中古車オークションから直接買付をし、それをニュージランドまで船積、それをベースにニュージーランドで中古車販売店を始める計画でした。

 しかし、ご存じのかたは、「ああ、そうだよね」と頷かれるかと思いますが、まず彼は日本の居住者でないので、邦銀に銀行口座は開設できなかったようです。また、保証人だのと難しい決まりがある日本の中古車オークションも、これまた日本居住者でない彼は加盟することが出来なかったようです。

 そこで私が、中古車仕入れの代行を依頼された訳ですが、彼が最初に仕入れたいと言ってきたのがこちらの車でした。

 


 ニッサンGTRです。こちらの年式で落札金額は550万円ほどでした。聞けば、買い手は、中国の富裕層の子弟で、ニュージーランドに留学している学生さんなのだそうでした。私がアメリカに留学していた時代に乗っていた車(中古のビュイック・リビエラ)が1000ドルだったことを思い出し、なんとも贅沢な学生だなぁと思いました。

 何年か営業したのち、ニュージーランドでもコロナが流行し初め、彼のお得意さんである中国からの留学生たちが一斉に中国に帰国してしまいました。結果、彼自身のビジネスも一旦終えることになりました。(店舗も手放した様子)



 その後、ニュージーランドの中古車ディーラーさんの輸入のやり方が大きく変わってきたようです。

 中国人のディーラーさん、昨年末(2022年末)にニュージーランドでのビジネスを再開したと連絡してきました。


 しかし今度は、仕入れ代行を私には頼んでは来ませんでした。理由はうすうす分かっていましたが、(ニュージーランドの隣の国)フィジーに行って明確に理解出来ました。


 話しは少し横道にそれますが。フィジーは産油国ではありません。そこで政府はLPG仕様の車輌にのみ関税を下げたのだそうでした。そこで目をつけたのが、日本のタクシー車輌。もともとフィジーも日本と同じ右ハンドルの国ですので、ちょうど良かった訳です。

 宿泊していたホテルは、フィジー最大の都市、ナンディに近かったもので、反対に首都のスバに行くのはバスで2時間近くかかりました。(写真はバスのターミナルにもなっている、スバのホリデイ・イン)  首都スバは日本からの中古車が船で入ってくる都市。事前に調べておいた中古車ディーラーの中から、名前がなんとなく日本的だったこちらの写真のお店に飛び込みで行ってみました。聞けば創業者がインド系の人で「サクラットさん」という名前から取った店名だと分かりました。
 ねっ、見覚えのある車でしょ?そうタクシー車輌、トヨタ・クラウン・コンフォートでした。燃料はLPGでした。
 ちなみにクラウン・コンフォートはトヨペット・クラウンではなく、車体とエンジンはマークIIと同じで、かぶさっているボディがクラウンと同様なだけ、と分かりました。
 こちらホテルの前に客待ちしていた運転手さん。「車の具合はどう?」と聞くと「ガンガン走るよ!」との返事でした。聞けば、買った時点で2万キロ走行していたそうです。さらに彼がすでに1万キロほど走らせているけど、全然問題無い、とのことでした。どうやら短期間に沢山走る分には、ボディの腐食もなく、良い状態のようでした。


 さてさて、本題に戻りましょう。フィジーの中古車ショップ SAKURA の責任者で創業二代目と話しをしたところ、こうした車の仕入れは、日本の商社が提供してくれるネット入札システムを使っているのだそう。つまり、日本側に、中古車調達代行といったものは必要なく、店主自身が、日本のオークションに参加して仕入れているとのことでした。(こうした時に、日本とニュージーランド間の取引は、時差が少なく便利ですね)

 別にフィジーの中古車事情を説明したかった訳ではないのですが、海を隔てた隣の国、ニュージーランドも同様だということの説明の為にでした。



オーストラリア & ニュージーランドとの中古車貿易

 まず、オーストラリアについては、先に説明したように、まだ市場が開放されていませんので、ビジネスにはなりにくいかと思います。では、ニュージーランドは?というと、仕入れ方法が以前とは変わってきていますので、「業態」を考える必要があります。


 ニュージーランドにいる個人が小規模に輸入するケースはあるでしょうが、大きなビジネスにはならなさそうです。反対に、規模の大きなディーラーさんはというと、先に説明したように、(ニュージーランドから直接ネットで仕入れることが出来るのだから)もはや日本側に、輸出をしてくれる代理店を持つ必要がなくなりました。ということは、こちらも日本に居てはビジネスにはならないのかと思います。


 今般、私に相談されて来た方は、地方で大規模に自動車整備工場をやられている会社の三代目。初代、二代目が作り上げて来たモノとは”違う分野で”自分なりの実績を作りたいご様子。この方、高学歴(大学院まで出ていて)さらには留学もされています。しかし、自動車エンジニア(職人)として初代、二代目が作り上げてきたものは、とてつも大きいもの。簡単には越えられそうにありません。

 さてそう聞いてみると、この方、どこまでの規模のビジネスなら満足出来るのだろうかと?まだお若い三代目ゆえ、(また、英語も出来るのだから)いっそニュージーランドに投資家ビザで移住し、現地で中古車販売をされるのが良いような気がしました。というのも、日本側にいても、インターネットの発達のお陰もあって、中古車を輸出するディーラーは不要になってしまっているのですから。



 その後どうなったのかは知りませんが、コロナ前には日本の中古車大手、ガリバーがニュージーランド(オークランド)に2店舗を構えていました。コロナが流行した際に、売上が停滞してしまったようでした。日本のガリバー本社に支援を依頼したもののダメで、結果店舗を閉鎖してしまったと聞いています。
 現地オークランドに住む、知人(日本人)に聞いたところでは、一時はそこそこの売上が立っていた様子(彼もガリバー・ニュージランドからベンツを購入)。ならば、コロナが収まってきつつある今からなら、現地オークランドで中古車ショップを営むのも悪くないはず。


 結論的に申し上げると、オーストラリアとニュージーランドという選択肢では、選択可能なのは、”現状では”ニュージーランド。

 ただし、日本にいて、ニュージランドを輸出先と考えるには、以前とは状況が違うので、輸出事業者としては大きな売上がたちそうにありません。可能なのは、ご本人みずからが覚悟を持ってニュージーランドに進出してビジネスをやられることが、今私が考えられる業態です。
 かつて私と取引をしていた中国の人が、オークランドから1時間ほど南に行ったところで立派に(?)ビジネスをされているのですから、日本人の彼に同様なことが出来ないはずはありません。


 以上、同様なことを考えておられる方にも、参考になるといいですね。




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