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385  定年起業後の12年を振り返って ・・・ (2023/01/08)  



1.減価償却を終えた身

 個人事業主として仕事を始めるにあたってその名も「青色申告」という会計ソフトを買ってきた。いろいろな会計科目を設定していて気がついたのが「給与」という科目がないことだった。そう、青色申告事業者の場合、ビジネスの結果として出てきた「利益」そのものが経営者である私の「給与」になる。個人事業主に限らないが、つまり結果がすべてだということ。

 定年後事業を始める人にありがちな勘違いの1つは、自分は大会社の部長まで勤めた人間なのだから、時給で○万円で算定し仕事をしたい、と。しかし定年になったといううことは、算盤で言えば「御破算で願いましては」となり、過去はチャラになるということ。ここで先の会計ソフトから気がつかされた視点とあわせて、定年後の「時給は”ゼロ円”」と考えないと利益が出るものでも計算上赤字になってしまう。
 考え方としては、定年になった自分は、会計用語的に言えば「減価償却を終えた身」、まあ残存価格はあるかもしれないが(笑)それは付け足しみたいなもの。もしかしたら、こうした考えが私の定年後ビジネスが10年以上続いた要因かもしれない。




2.時間管理は必須

 いまでもその感覚が残っているが、Googleスケジュールに遊びにしろ(主にゴルフ)、仕事にしろ、予定が沢山あるとなんだか安心する。

 かつてはパソコン上のスケジュール管理ソフトと、PDA(シャープのザウルスのようなもの)との間に連携がなかった。その当時のことを考えると、Googlスケジュールが、パソコンでもスマホでも共有できるなんて、なんとも便利な世の中になったものだ。

 さて、定年後10年超、仕事を続けてこれたのは、いつも「先の予定」を考えてきたことだったかもしれない 。先の予定が空いていると、何かで埋めたくなる。何も予定がない、何もすることがない、というのはなんとも自分が不安定な気がする。こうした感覚が、先へ、先へと自分を進めさせる動力になったようだ。

 勤め人と違って時間は十分にあるのだから「動き惜しみはしない」自分が動いてなんとかなるものなら(動くことにコストは掛からないのだから)どんどん動くことにした。

 例えば、ある埼玉県の中古車オークション会場での話し。たまたまアフリカ向けに丁度良さそうな車が沢山出品されていたこの日。なんと私は7台も車を買い付けてしまった(金額的にはトータルで30万円以内だった)。
 オークション(競り)が昼には終了したので、買い付けした車を1台1台雑巾で拭いて、その上でインターネットに掲載するための「写真撮影」をすべく点在した車のある駐車場を周った。さすが7台もこうした作業をしていると、終わったら夕方近くになっていて、事務局の人から「まだ居らしたのですか?」と驚かれた。



3,仕事は「場」が教えてくれる

 オークション会場に来るほとんどの人が自動車の整備工場の人だったり、中古車販売店の人だったり。私は、定年までコンピュータのソフトウェアを販売していた人間なもので、彼らとはスタートラインが全然違います。そこで当時の私の考えは、自動車のことは自動車自体に教えて貰え!でした。

 以下は一例ですが、ある時、プジョーというフランス製の車を下見しましたが、エンジンを見たかったもののボンネットが開け方が分かりませんでした。いろいろ見てみたものの、どこにロック解除のレバーがあるのか分からなかったからなのです。家に戻ってから、あらためてネットで調べたら、助手席側(フランスでは運転席があった側)にあることが分かりました。どうやらフランスでこの車を製造する際に、日本向けだからとハンドルは(左ハンドルを)右に付け変えたものの、エンジンフードを室内から空けるノブだけは(特に問題はないだろう、と)左右の付け替えをしなかったようなのだった。
 こんな具合に、こうした細かなことは、実地で覚えていくしかないですね。別な言い方をすれば、車のことは車自体が教えてくれる。これが私が、経験から得た結論でした。



4.働く父の背中を見せられるのは、定年後の仕事だったから

 アフリカは地球の裏側に近い場所に位置します。ですので、日本の深夜あたりでも彼らは昼間。(日本で中古車輸出をやっている)人によっては夜間の方がアフリカからの引き合いメールが多いとばかりに、昼夜を入れ替えて仕事をしている人もいました)。私自身はあまり夜に強い方ではなかったので、引き合いがくれば深夜まで起きていましたが、だいたいは夜11頃には仕事を終えていました。
 まあ定年退職者ですので、昼間は、それこそ「昼寝」をしていても構わない訳です。(実際には昼寝はせずに、オークション会場の出品物を物色したり、こまかな書類作業などをしていましたが)

 当時、息子はオーストラリア留学から帰国して、我々夫婦と一緒暮らしていました。彼が起きて朝食を取る時は私も一緒。その後、彼が仕事に出かけたあとは、私は比較的のんびりと過ごしました。彼が仕事を終え帰宅するころには私は先に夕食を済ませて、パソコンに向かっていまいした。その後は、先にも書いたように、アフリカとの時差の関係で夜の11時くらいまではパソコンの前で仕事をしていました。息子は私が働く後ろ姿を見て、「オヤジは定年後もこうしてがんばっているなんて偉いなぁ」、と思ってくれたようです。定年後も仕事をした副次的な効果です(^^)

 そう言えば、昔からの一般的な話の中に、週日は一生懸命会社で働いていても、子供と一緒にいる週末にオヤジがごろごろしながら家の中にいて、どう考えても、子供に尊敬されそうなところは見せられなかった、という話を。





5.本当にゴルフが楽しくなった(スコアは別として。笑)

 定年退職者の皆さん、同様な感想をお持ちだと思うのですが、会社勤め時代のゴルフは限られた時間の中で(週末にしかゴルフの時間が取れなかった)しか出来なかったからこそゴルフをするその時間がいとおしく、楽しかったのだということを。空腹こそが最良の調味料といいますが、同じようなものですね。

 まあこんな具合に定年後の十数年を過ごしてきた訳ですが、楽しさは60歳前よりも倍化したかもしれませんが、さすがにゴルフのレベルアップまでは無理でしたが。

 私は定年前にあるゴルフ場のメンバーなっていたので、定年起業しても(平日限定でしたが)月に2〜3回はゴルフが出来ていましたね。いま振り返ってみると、よく学び(仕事をし)、よく遊び、というのをバランス良くやってきた感じがします。







<編集後記>
 私の好きなテレビ番組の1つに「ぽつんと一軒家」があります。そこに登場する人達は、60歳代なんて若い方で、ほとんどが70代、さらには80代のご夫婦だったりする。

 NHK新年の番組を見ていて思った。ロシアによるウクライナ侵攻以来、世界で大きな混乱が広がりつつある。その1つが食料問題だそうですね。聞くとことによると日本の食料自給率は38%なのだという。輸入に頼る日本は、食糧難になる可能性が大きいのだそうだ。
 そんな話を聞いて思ったのは、「ぽつんと一軒家」に登場するご年配の方々。80歳を過ぎても、山間部にある狭い田畑を耕して、自分たちの食べ物は自分たちで賄っている。もとより高齢者は売るほどの量の食料を作る必要はないが、自分の食べ物は自分でなんとかし、若い世代に負担をかけないようにしていること。これが大事だと思う。

 聞くところによれば、2050年、日本全体における65歳以上の高齢者が37.7%、75歳以上の後期高齢者の人口割合は21.5%になるのだという (1950年生まれの私は100歳?この世にいるとはとても思えないが)。今後は、自分が高齢者だからといって社会にすべてを依存するのではなく、「ぽつんと一軒家」に登場する人たちのように、自分のことの多くを自分でなんとかする、という考えようだけでも社会は救われるはずだ。

 あの番組で紹介されることで、60歳以下の若い世代の人が、一旦休耕地にしてしまうと以前の状態に戻すのに途方もない時間が必要なことを理解し、自分達がシニア世代になったら、先代に習って、山の中の田畑を引き継いでくれるといいな、と思う。
 こうしたことで食料問題のすべて解決するなどとは思っていないが、若い世代は先人が残してくれたこうした貴重な環境・体験を大事に引き継いでいってほしいものだと思う。






<編集後記>

 正月のNHK番組の中には世界の知識人にインタビューした特番が放送されていた。そこに登場した人の中から、これは!と思う人の著書を読んでみることにした。せめて正月くらい、小難しいものを読んでみよう、ということだ。

 フランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏の話は面白かった。さすがヨーロッパで生活してきた人だけに、欧州各国、それぞれの特徴をとても詳しく解説してくれている。
 さらに、氏はかなり日本通のようで、日本の歴史から、日本の今後の未来予測までしている。その中で氏が、日本の最大の課題が「少子化問題」だという。

 確かに、日本の歴代の総理大臣が、「少子化問題担当大臣」なる人を毎回指名しているが、ではそれで少子化の問題が片づいたかといえば、さして子供が増加したという話しも聞かない。そんなに日本の知識人には知恵がないのだろうか。それは、私の考えでは60、70のジイサン達が考えるからなのだろう。もっと若い世代が議論に参加し、女性リーダーのもので新しい少子化対策を考え、また総理大臣は、ここから出たアイデアを何にもまして優先課題として支援していく姿勢が必要だろう。

 正月明け(1月4日)の報道によれば、小池東京都知事は所得制限なく、都内の18歳までの子どもに月5000円程度を給付する考えを表明。知事は6日の会見で、少子化問題は「一刻の猶予もない」とあらためて指摘し、今回の給付案は、女性の働き方や待機児童対策など、これまでの都の取り組みに連なるものとの認識を示した。

  これなども2023年に評価されるべき施策の1つだろう。今後とも、どんどん新しいアイデアをつぎ込んで、次の世代をリードしていってくれる子供達が広がるようどんどん進めて欲しい。

 






























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