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372.  大宮 知信 著、「これが定年後の落とし穴」 ・・・ (2022/07/24)


 この本の前書きにこう書いてあった。


 街の書店に行くと、「定年本」がたくさん並べられている。「資産の増やし方」「理想的な田舎暮らし」「憧れの海外移住」「定年起業で充実した人生を」などといったバラ色の幻想を振りまくものが多い。

 今回私が書こうとしている本は、そういう幻想をふりまくものとは根本的に異なり、定年後の人生にはいたるところに落とし穴が潜んでいるぞという、いわば警告の書だ。 

 


  こんな具合に全否定かと思ったら、つづく文章に、罠にはまることを恐れて頑なに誘惑を拒んでいたら、あたら「第二の人生」を棒に振ってしまいかねない。関心があるものであれば、進んで誘惑に乗った方がいい場合もあるし、やってみたら案外面白かった、有益だったということもある、と。

 さらに、「第二の人生」にどんな落とし穴があるのか。リタイア生活がアンハッピーにならないように定年前から準備しておくべきことは何か。なぜつまずくのか。予防策はあるのか。私はサラリーマンではないが、自分自身団塊の世代であり、まさに自分の問題として、これからの生き方、リタイアメントライフの過ごし方を考えていきたい。
 

 さて、それまでサラリーマンだった私が定年後自分で起業した訳だが、それなりにフェールセーフをかけてあった。

・まず起業のきっかけが、定年後は必ず起業しようと当初から考えていた訳ではなく、ただ仕事をずっと続けたいという思いとは裏腹に、(ハロワークで求職したが)定年後どこも雇ってくれるところが無かったことからだったこと。

・起業するにあたって、定年後の夫婦の財政基盤に悪影響を及ぼさないよう、最初から起業にまつわる「資金限度」を300万円とした。300万投資して軌道に乗せられなかったら、その時点で事業をストップすると決めておいたこと。

・定年までは外資系IT企業にいたが、ことさらITでの起業に固執しなかった。せっかく定年というターニングポイント、ならばむしろ今までやったことのない分野を手がけてみようとしたこと。結果的にみれば、これも成功要因の1つだったのではなかったかと。大きな会社でやっていたことを縮小しただけのビジネスでは、プライドや過去の実績が勝ってしまって、経営者として謙虚さがなくなるのではないだろうか?

・やるビジネス領域(中古車輸出=出会いはアフリカ旅行をしたこと)を、自分が納得いくまで(当初あったソフトバンク系の輸出ビジネス仲介サイトの内容が本物なのかどうかを)しつこい位調べた。また、そのビジネス領域(やり始めてから、車について知る面白さを知った)に多少なりとも面白さを感じられるものを選んだ。

・経営者(社長)になりたいと思って始めた訳ではなかった。ただ、定年まで雇われてきたので、雇われない生き方がどんなものなのか経験してみたかったという程度。10年超事業を続けてみて思ったのは、経営者と、被経営者とでは、発想に大きな違いがあることを感じた。それが小成りと言えど、定年後事業を起こしてみて 本当に良かったと思える点です。(経営者としてのマインドが育つ?)

・この本の中に「ひとりビジネスの落とし穴として、社会的信用が低い」というのがあった。多分、分野にもよるのではないかと思う。私の場合は、青色申告事業者(個人事業主)だが、個人事業だからと相手業者から差別を受けた記憶がない。それどころか、個人事業主(社長ではなく代表と表記)である私に大手中古車オークション会社の人たちは私に「社長さん」と呼んでくれたが、少しばかり「面映ゆかった(照れくさかった)」くらいだった。

 このあたりは著者の経歴からくるもののように思えた。いろいろな職業を経験しているが(調理師、ギター流し、地方紙記者)その関係でか個人ががんばってもたかが知れている、と考えたのかも?と思っている。

 いずれにしても、あれはやったらこうなるからダメ、という内容ばかり。確かに多くのサラリーマン、特に管理職経験者ほど、起業への思いと、自分が出来ることの実態との乖離がおき、やっぱりだめだった、という事例になりがちなのかもしれない。繰り返すが、事業分野に攻めている時に、撤退のシナリオも持っていたかが問われるような気がする。つまり、撤退の場合も考えておける人は、どこかに冷静さを持って夢を描くはずだから、失敗しにくいし、失敗しても大やけどにはならないはず。

 この本の問題点は、多くの失敗者を見てきて、止めた方が良いですよと言う。この本を読んだ人は、定年後に自分で事業をと考えていても、意気消沈してしまわないかと気になった。せっかく意欲と能力を持っている人の将来の機会さえ奪ってしやしまいか?と思うところです。リサーチは大変でしょうが、定年後起業でいちおうの成功を収めた人の話を紹介した方が良かったのかも?

 いずれにしても定年後起業は、一旦過去の栄光は忘れて、新しいビジネスに謙虚になれば、道は開けてくるような気がします。どう思われますか?




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