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330. 「考えぬく力」 須永珠代 著 ・・・ (2021/01/10)


 前回のこのページでもお話ししましたが、昨年のコロナ禍の中にあって、自宅にいることが苦痛ではなかった理由の1つに、図書館から本を借りまくって読んでいたお陰、というのがあったことを。

 借りた本は必ずしも「起業」というテーマにかぎらず、コロナ禍の中生きる知恵のような本もあった。そんな中、たまたま新聞かなにかで見かけたお名前、「須永珠代さん」というキーワードで図書館蔵書の検索をしたところ出てきたのがこの本、早速借りてみて読むことにした。


 今回私は図書館で借りたもので、事前には内容確認をしていなかったが、もしあなたが自分が(買って)読みたい本かどうかを事前に確認したいと思うなら、目次ページをどこかのサイトから見つけて、「それ」を読んでみると良いでしょう。具体的には以下のようなものです。

 <目次>

第1章 「思いつき」では強い事業は生まれない

 1 マネタイズから考えない

 2 「思いつく」と「考える」は似て非なるもの

 3 アイデア出しは無限に、突き詰めるときは疑り深く

 4 「自分の強み」を最大限に生かす


第2章 人が集まるところにお金が生まれる

 5 「人が集まる仕組み」を最初につくる

 6 突拍子もないアイデアが、人の心をつかむ

 7 50万円しかなくても起業は出来る


第3章 「熱い人」には直接会いに行く

 8 現地に足を運ぶことで「潜在力」を引き出せる

 9 地方の「自立」を促す仕組みをつくる

 10 「北極星」となる事業は、儲からなくても行う

第4章 「自分の立場」をわきまえない

 11 「立場」に関係なく動く

 12 人生の目標は隠さず伝える

 13 貯金はしないで、自分に投資する

 14 数字にこだわるほど、説得力が増す

 15 苦しくても、借りはつくらない


第5章 どん底が今の私をつくった

 16 「社会のルール」にあえて乗らない

 17 どん底でも優先順位を間違わない

 18 1000本ノックが強みをつくる


 おわりに 








 Amazonの読者感想文を読むと必ずしも芳しいものばかりではなかったが、これはその読者が自身で起業してみたことがないことから理解出来なかったものと思った。起業した経験のある人間からすると、良くここまでがんばったな、という印象を持つはず。

 私の印象は、起業家、須永さんの発想の特徴の1つが、儲かるものを起業テーマにするのではなく、まずは社会に役に立つテーマを見つけ、それが上手くまわっていけば、おのずと自社の売上も立つはず、と考えたこと。私が幾度か講師をさせていただいた「創業寺子屋塾」のコーディネーターで起業相談担当によれば、何かのテーマを思いついた時に、それが社会から見ても役立つものなのかどうかを考えるようにアドバイスされていたのを思い出した。

 起業資金についてだが、第2章の7に、「50万円しかなくても起業は出来る」があった。これには須永さんならではの売る技術があればこそ。具体的にはウェブデザイナーとしての実績があり、そうしたお仕事を受けている限り、生活費は稼げる、起業が起動にのるまでなんとか生活を維持出来るという自信があればこそ。私のように、それまで外資系IT起業で営業として働いてきた私にはそうしたものは無かった。そこで起業資金として300万円を用意したのは正攻法だと考える。ちなみに、300万円とは、有限会社を起業する際の最低資本金として求められていたもの。ゆえに、この程度は準備をしてから起業に取りかかるべきと考えた次第。(ラーメン店を開業するのだって、もしかしたら初期投資資金として1000万円程度必要なのではないだろうか?)

 「おわりに」を読んでみた印象はこんな感じ。
 2012年4月にひとりで、資本金50万円で立ち上げた会社。それが2016年4月時点で、資本金は750万円、従業員数は30人、外部スタッフを合わせると総勢50人がサイト運営に関わっているのだそう。また事業も、「ふるさと納税」に始まり、その後は都市部から地方への移住・定住を支援するサイト「ローカル日和」など、次々と立ちあげ、地方を、国をより良くしていこうという事業に邁進している。
 そんな中で、犬好きな私が感動したのが、広島県で「犬の殺処分ゼロ」を実現したいと試みている団体への支援をし4億円を集めたというのだからスゴイ。常に社長みずからが何を支援したら良いのかと探して、地方公共団体や、地方の団体が苦労している分野を民間の視点から支援するその目の付け所はさすがだ。役所だから出来ること、出来ないこと。企業では出来ないこと、出来ることが、絶妙に組み合わさって物事が発展していく様は感動すら覚えた。


 恐らく東京生まれ、男性の私には、群馬県から東京に出てきた若い女性が、起業にあたってどれくらい苦労するものなのか、実感は持ちにくい。なので、この本は、東京の外から東京にやってきて、まずは住む場所の確保、生活をたてるための仕事の確保からスタートしようとする女性に読んで貰うと良いだろう。私の推測では、まるでマイナスから一旦ゼロに持ち上げ、さらに大きくプラスに発展させるためにすごい情熱と努力が必要になったはず。ゆえにこの本は大いに参考になると思うゆえんです。

 最後に。人生は短い。故に成功している人は、過去の仕事体験が無駄にならず積み重なっている印象がある。皆さんも、今の仕事を軽んじることなく、そこから将来に向けて何が得られそうか考えながら仕事をしてみると良いかもしれない。そしてもしそれが将来に自分がやろうとしていることにはまったく役に立たないと思うなら、迷わず転職した方が良いだろう。


追伸:出版した日経BP社のサイトに出ていた対談、これを読むだけでも概要が分かるかと思いますので、「こちら」に紹介しておきます。


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