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324. 大企業という名の井、そしてその中の蛙・・・ (2020/11/08)

 
 大学仲の良かった同級生に九州の大牟田出身の人がいます。4年生の夏、二人で九州旅行をしました。その際の訪問地の1つが彼が子供時代を過ごした大牟田でした。

 ご存じの方もおられるかもしれませんが、大牟田は三井三池の炭坑の町。彼の父親はこの三井三池の炭坑で事務方の仕事をされていたのだそうです。いまでこそ斜陽産業ですが、当時炭坑事業は国策的な大事な事業。彼がかつて住んでいた住宅を見せて貰いましたが(いまでこそ狭いと感じますが)当時の平均からしてみれば立派な社宅。さらに驚いたのは、電気、ガス、水道代はほとんどタダ。さらに、さらに、2年に一度、畳みの張り替えまでしてくれるというのですから、至れり尽くせりと彼も感じていたようでした。

 ウィキペディアより
  かつては三井三池炭鉱の石炭資源を背景とした石炭化学工業で栄え、1959年(昭和34年)には最大人口208,887人を誇ったが、エネルギー革命などにより石炭化学工業は衰退。同炭鉱が1997年(平成9年)3月に閉山。


 同級生の彼いわく、子供の頃はこの町しかしらなかったので、何から何まで面倒を見てくれる三井こそ日本最大の会社と自慢だったそうです。その後、中学の時、父親の決断で家族揃って東京に出て来て、そこで始めて三井以外にも日本には大きな会社が沢山あることを知ったのだそうです。

 「井の中の蛙」という言葉がありますが、外に(東京に)出るまでは、まさに彼は蛙だったようです。



 私は従来から「私に定年後起業が出来たのですから誰にでも出来ます」、と言ってきました。しかし、ここへ来て、その考えは間違いであると思うようになりました。学校を卒業後ずっと1つの会社にいて、その世界こそが日本のスタンダードと考える人に、起業など出来そうにないと。(もっとも大企業を定年退職した人で、実際に起業を考える人もいなさそうですが)





 反対に、大企業在職中に 退職した人の中には、大企業の弱点も知り尽くし、それを上回る意思決定の早さで起業した人もいます。例えば、



 楽天の創業者の三木谷浩史氏は一橋大学商学部を卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。 企業からの派遣でハーバード大学に留学。帰国した後、日本興業銀行を退社して、楽天を創業しています。つまり、彼は大組織・銀行の外を見てしまったゆえに、起業を思いついた。彼が銀行から留学をさせて貰わなかったら、たぶん今も銀行に勤めていたことでしょう。


 もう1つ、最近の例をご紹介するとすれば、ウェルスナビの創業者、柴山和久氏の場合。東京大学法学部を卒業後、財務省(大蔵省)に入省。在省中にハーバード・ロースクール修士号取得、ニューヨーク州の弁護士資格も取得している。結果、財務省は在籍9年で退職。彼も外の世界を見たことで財務省という安定を捨て、起業した。もし彼が日本の外に出なかったら、今でも財務省にいたことだろう。


 彼らの偉さは、どうなるか分からない「未来」と、今ある「現状」の重さを単純にハカリに載せて比べたりしなかったこと。未来はまだ手元にない訳だから「重さはない」が、彼らは「これから作るであろう未来」 にこそやりがいがあるのだと感じ、チャレンジしたのだった。



 繰り返します。かつて私は、創業寺子屋塾の講演で、(私に出来たくらいですから)起業など誰にでも出来ます、とお伝えしてきました。あれは間違いだと今は思っています。定年まで大企業にいることが出来た人には定年後起業は無理です。(それが悪いと言っているわけではありません、念のため。)




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