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228. 100年時代の人生戦略 PartI ( 私のマルチステージ・ライフ )  ・・・  (2018/01/07)  

 私は映画でも、本でも、あまり流行を追う方ではないのだが、この本は買ってみた。その理由は、タイトルから想像したのがシニア向けのもので「老後はどう生きるべきか」を語るものだと勘違いしたからだ。読んでみた印象は、な〜んだ(おっと失礼!)私がやってきたこと、ほぼそのものじゃないか、ということだった。

 具体的にはというと以下の通り。


「マルチステージ」 私の場合、



 この本によれば、人生が長くなると、その分仕事のステージが長くなる、と。仕事のステージが長くなると生涯に持つキャリアが複数になるという。私の場合で言えば、最初の仕事@は、大学のゼミの教授(経営学)が当時コンサルティングをしていた企業に推薦で入った(面接のみで入社試験はナシ)。当時まだ大学3年の12月だった。お陰で就職活動で苦労することもなく大学4年の1年間を気楽に暮らすことが出来た。

 最初の会社、結構古い体質の業界で、新卒の私は現場の人間関係に馴染むのに時間がかかった。残業も多く(最高、96時間/月)更に当時は土曜日はお休みではなかった。営業に配属され多くの仕事を同時並行で処理・確認していかなければならないことで神経をすり減らし胃を悪くした。この時期、急に痩せたもので、まわりの人は急私が会社を辞めるのではないかと思ったようだった。しかし、ボロボロになって辞めるのは自分のプライドが許さなかった。同期に親友が出来、愚痴を聞いてくれた(もっとも彼、和菓子屋の息子で、私同様、酒が飲めなかった。笑)お陰で、なんとか精神的な安定を維持出来た。とにもかくにも医者から貰った薬を飲みながら仕事を続けていった。お陰でこの時期、体重が10kgほど減った。

 新卒で入社して2年半くらいたった頃だったと思う、苦手な現場の職人さんと一緒に外出する機会があった。乗ったトラックの中でこの人と話していて、何かがふっきれた。以降、現場とのやりとりも順調に進むようになり、ついには組合から職場委員を頼まれる程になった。オーケー、もうがんばらなくていい!と自分で結論を出し、アメリカ留学を決め会社を辞めた。留学して早々に、かつて苦手だった職人さんとエアメールのやりとりをした(1976年当時ですから、インターネットはまだ普及していません)。恐らくは、このおじさん、エアメールのやりとりをしたのは、私が最初で最後の相手だっただろうと思う。

 たいして英語も上手ではなかった私が、単身、見しらぬ国の、見知らぬ大学に入ったからさあ大変。まったく授業について行けないのだ。たまたま国語(つまり英語)の授業で私の前に座っていたのが、のちに親友となるガーナ人だった。彼は母国ガーナで中学・高校と英語で教育を受けていたので、アメリカの大学に入学しても、少なくとも言葉で苦労することはなかった。

 米国留学は、自分で考え、自分で行動するクセをつけてくれた。待っていては、誰も何もしてくれはしない。しかし、自らが働きかけをすると、相手も応じてくれた(そうでないことも、まれにはあったが)。この頃の考え方が、そのごの転職の判断基準になったように思う。次の会社に自分がやりたい何かがあるのか?間違っても給料高だけを追った転職はしなかった。




「無形資産」

 ライフシフトの著者の一人、リンダ・グラットンの話しの中に無形資産 という言葉が出てくる。ここも私が好きな視点の1つ。クレジットカード会社の宣伝に「お金で買えない価値がある」というのがあったが好きなコマーシャルだったのも同じ理由からだった。そう、私の今があるのも、無形資産、特に私の場合は豊富な人脈のお陰だったから。周りの人から「あなたは顔が広いですね」と言われることがしばしばだった。「どうやって人脈を作ったの?」と聞かれても返事に困った。というのも特段、何かをしている意識はなかったから。そこでこう答えることにした。「人間、(特別な人でもない限り)一生に出会える人の数なんてたかが知れている。凡人に出来ることは、出会った人との縁を維持していこうとするマメさじゃないかな?」と答えた。

 さて、本の著者の発言に戻るが、リンダ・グラットンによれば、大まかに次の3つの資産があるという。

「生産性資産」  ・・ これは仕事に役立つスキルや知識など。また、仕事につながる人間関係や評判といったこと。
  
「活力資産」  ・・ これは健康、友人、愛など。それぞれの人に肉体的・精神的な幸福感と充実感を持たせ、やる気をかきたて、前向きな気持ちにさせてくれる資産です。

「変身資産」  ・・ 人生の途中で、新ステージへの移行を成功させる意思と能力のこと。人生がマルチステージ化する100年時代には、 次のステージにうまく移ることが非常に大事になるんです。

 とても良く分かる。イスラエル企業(R&D部門はイスラエル、本社機能は、米国シリコンバレー)の日本支社の立ち上げから関わった。イスラエル人2名と派遣スタッフの日本人女性の3人でスタートしたが何をどうして良いのか分からなかったようだ。そこに日本人採用第一号(保険証番号も1番だった)で採用された。トップがアメリカに帰任するまでの3年間は、まるでピッチャーとしてボールを投げたら、急いでファーストを守るような感じ、とても大変だった。しかしこの大変さが充実感であり、とても楽しかった。

 3年半後、立ち上げから苦楽を共にしたボスがアメリカ本社に帰任することになった。さて、このあとはどうしようかな?と思っていたら、あるIT企業の社長から声がかかった。私は忘れていたが、相手は覚えていてくれた。実は、イスラエル企業に採用されたばかりでこの会社を訪問していた。なので、まだ名刺も持っていなかったが相手の社長は私のことを覚えていてくれていた。自分の部下を通じて、私が一仕事を終えたことを聞きつけ、声をかけてくれたのだった。

 人間、最初の一歩を踏み出すのが大変。しかし、一度、行動に起こしてしまうと2度目以降はさほど難しいとは感じなくなる。港区のあるホテルで食事をしながら、いったいこの社長は私に何を期待しているのかを聞いた。米国本社が2社買収したもので、日本でも2つの支社を一体化させることになった。自分がやってきた事業部は問題ないとしても、他の2つは、傍目にも問題が無いとは言えない状態だった。その問題のある2つのうちの1つを任せたいのだがどうか?ということだった。 こんな簡単な説明を聞いたのち、給料の交渉もせずに私はOKをした。なぜなら私がいままでやったことの無い仕事領域だったから。
 採用されてから、人事担当が来て私に依頼してきた。「全社員の履歴書は保管しておく必要があるで書いて貰えませんか?」だった。以降、何度か転職をしたが、いつも社長に頼まれて採用されるもので、履歴書というものは、以降、採用されてから提出するものとなった。

 話しは戻るが、この会社の社長から後日言われたことは、○○さん、よく決心出来ましたねぇ。私は守りは得意なのですが、あらたな領域、未知の領域へ進んで行くことが出来ない性格なんですよ、と。えぇ〜?自分で私を誘っておきながら、、、良く言いますねぇ、これには思わず笑ってしまた。


<編集後記>
 この本を読んでいて思い出したのが大学職員で交換留学生候補の面接をした経験を持つ友人の話し。彼によれば留学に向くタイプを見分ける質問項目があるのだそうだ。それは「あなたは一人旅をしたことがありますか?」だそうでした。一人旅をするといういことは、自分で主体的に「目的地決め」、利用する「交通機関」、現地の状況などの情報を集め具体的な「旅行日程」などを決めなくてはならない。こうしたことを自発的に行動出来ない人を海外に送りだしてしまうと、現地へ行っても、誰かからの指示待ちになってしまい、せっかくの貴重なチャンスを自分のものに出来ぬまま留学期間が終わってしまいかねないのだそうだ。



   原題 「THE 100-YEAR LIFE」は東洋経済から「100年時代の人生戦略」として日本語訳が出版されている。調べていたら、同社の「雑誌」でも、この本の特集を組んでいた。左写真の7月22日号がそれ。

  週刊 東洋経済 2017年 7/22号  690円

 もし400ページもある本を読むのはちょっと、、という人は、楽天でも、アマゾンでも、バックナンバーを購入することが出来ますので、こちらの雑誌だけでも読んでみると良いでしょう。


 


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