【内容】 復活した“軍事大国”。 21世紀世界をいかに変えようとしているのか? 「多極世界」におけるハイブリッド戦略、大胆な軍改革、準軍事組織、その機構と実力、世界第2位の軍需産業、軍事技術のハイテク化…… 話題の軍事評論家による渾身の書き下ろし! 出版社のホームページより |
ロシアによるウクライナ侵攻が始まるまで「小泉 悠」というお名前は聞いたこともありませんでした。しかし、ニュース番組に登場する小泉氏のロシア軍備、ロシアの軍事的背景となる思想について、これほど詳しく語れる人が日本にいたとは、とプチ感動でした。
ご本人いわく、軍事オタク、だそうですが、ロシアがどんな規模の軍隊を保有しているのか、また驚くのはプーチンを含め、軍事トップたちがどんな思想を持っているのかを古い論文などから引用、説明してくれるに至っては、ただただ驚くしかなかった。ご本人の著書を読むと、ロシアで大学に通った経験、現地研究所に参加した経験も持つことも、ロシアを深くしる要素になったのだろう(ちなみに奥様はロシア人のようでした)。
さて、この本「軍事大国ロシア」作品社刊、2800円、を手にしてみて驚いたのは、まずこの本の厚さ。500ページほどあり、その実際の厚みは、なんと4cmもある(一般的な書籍の1.5倍の厚み)。さらに文字の大きさがとても小さめなのだ。さらにさらに、まるで学術書のように、索引だけで120ページにもわたって引用もとが列挙してあったことだ。小泉氏の最新の著書には以下のようなものがある
・ ロシア点描 まちかどから見るプーチン帝国の素顔
・ ウクライナ危機の真相 プーチンの思惑 (Wedgeセレクション No.35)【電子書籍】
・プーチンの国家戦略
岐路に立つ「強国」ロシア
これらに対して「軍事大国ロシア」はウクライナ侵攻以前出版されたもの(2016年)として、上記の著作ほどには読まれていないようだが、読んで見ると分かるが、この本がまとめられたのがロシアによる「クリミア半島」併合(2014年3月)以前にまとめられた本であることから、ロシアにとってのウクライナの位置関係は、今をみようとして今の本に飛びつくのではなく、反対にこの本の時点から辿らないと全貌は見えてこないような気がした。
この本を読んでみて一番良く分かったのがロシア人にとって、軍隊は社会の一部というくらい密接であること。これは日本における自衛隊と国民の距離感からすれば、驚きを持って読んだ部分だった。読んでみた印象としては、小泉氏がモスクワのマクドナルドで見かけた「日本食的メニュー」を撮影しようとしただけなのに店員にスパイ行為を疑われ、叱られたこと。国民は常に敵国(自国も?)のスパイ活動を念頭において生活しているのだということが想像出来る。
また日本人にしてみれば、軍隊というものは、「陸、海、空」の3軍からなるものという理解が一般的だが、ロシアの場合はかなり違っていた。ロシア軍は前述の三つの軍隊に加えて、ICBM(大陸間弾道ミサイル)を運用する「戦略ロケット部隊」と、精鋭パラシュート部隊である「空挺部隊」が独立兵科という特別の位置に置かれていることだった。つまり三軍種・二独立兵科を指すモノだそうだ。さらにそれらを統括する政治組織が大統領をトップに、安全保障会議、参謀本部などが上位の指揮系統として存在するのだそうだ。日本とは軍、戦争に関する考え場まったく違う。
実はまだこの本全体を読み終えていないのですが、まずはこの本のここまでの印象を伝えた上で、一旦、ウクライナ問題から距離を置きたいと考えています。一般市民として、目の前に、日本国内の問題も山積されている中から私なりに拾って紹介したいこともあるもので。