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  飲兵衛と下戸の間には深くて暗い川がある? ・・・ (2021/04/11)


 私が大学を卒業して初めて勤めた会社での話し。課長のもとに3人の係長がいた。課長と一人の係長は酒を飲まない。ゆえに飲兵衛達を「あいつらは飲むと話が長い(くどい?)んだよね」と。反対に飲兵衛係長二人いわく、酒を飲まない課長達は本音を言わないんだよねぇと。どうやら飲兵衛にとっては酒を飲んで話す際の会話こそが本音で、しらふの時の発言は本音ではないと。

 私はというと、(父はまったくアルコールを受け付けない体質だったのが遺伝したのか)体質的にアルコールは弱い。弱いが人の話を聞くのは好き。ゆえに大酒のみの係長のお供をよくした。会社の最寄駅近くの飲み屋で「剣菱」がおいてある店を数件知っていて、そのいずれかを利用していた。さすが飲兵衛、酒は飲むが酒の肴にはほとんど手をつけない。かたや私はといえば、食う方が専門で、たまにビールをすする程度。ゆえに酒の肴はそうそうに消える。すると飲兵衛の係長が「〇〇ちゃん、これ食べるか?」と自分の酒の肴を私にくれる。これが毎回のパターンである。

 その後の私はといえば大酒飲みの父がいる家庭の長女と結婚したのが幸いしたのかもしれない。まあ、そこそこ飲めるようになった。そこに至るまでには深酒も経験した。家にまでは無事帰宅するのだが、その後がボロボロだったこともある。そういう時に飲兵衛の家系の娘と結婚したお陰で(?)酒を飲んで文句を言われることはなかった。ただ言われたのは「あなたは(お酒が)弱いんだから無理しないのよ!」とだけ。
 こんな私だから、このコロナ騒ぎの中、自宅で料理に合わせて缶ビール1本、もしくはワイグラスに一杯を飲む。相手は奥さんで十分、というか気心のしれた奥さんとが良い。

 こんな具合に、私は下戸といいながら、酒の楽しさが分からない訳でもない。しかしクラスター発生場所の多くが、飲酒がからんでいるようだ。せめてコロナ流行期間だけでも我慢できないものだろうかと思う。

 私の推測では、酒が飲みたいというよりも、人に会いたいのだと思う。東京は、以前から地方出身者の寄り集まりだからだ。東京にいると孤独感がつきまとうようで、誰かを誘う。酔うほどに饒舌になり、いきおい声も大きくなる。営業自粛要請でお店が閉まってしまうと、公園や路地で座り込んでまで缶ビールなどを飲んでいる。夜な夜な飲み歩く人たちを見ていると酒にのまれて気の毒とも思う


 彼らと話しをしたことはないが、恐らくこう言われるだろう。お前は東京生まれ、東京育ち、自分たちのさみしさなんか理解出来るはずが無い、と。そう、飲兵衛と下戸の間には深くて暗い川があるのだ。







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