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 紙の明細が欲しければ金を払え?   ・・・ (2019/10/27)

 コンピュータは8ビットの時代でも、64ビットの時代でも、出来ることと、出来ないこと、が同じようにはっきりしている。初期の時代より、もっと計算スピードが早ければ出来るのに、もしくは、もっとメモリー容量が大きければ可能なのに、といったことは、どんどん解決されてきた。別な言い方をしてみると、定型化、標準化してあるデータを高速で処理するという優れた性能を持っているので、どんどん解決されてきた。半面、非定型化、非標準化データは処理にすごく手間がかかることから、相変わらず先送りされてきた。

 さて具体的な話をしよう。昨今、大手スーパー(イオン)のカード利用者に対してこんなアナウンスが来た。「ご請求明細書をこれまでの印刷物に代わりWebで閲覧することができるサービス「Web明細」へ移行いたしました」と。説明によれば「紙の消費やCO2の排出を抑え、環境保全につながる取組みとして」だそうだ。まっかなウソとまではいわないが、手間(つまりコスト)がかかるというのが本当の理由。

 先に書いたように、コンピュータというもの、初期のものから現在に至るまで原則は同じで、「例外処理が超苦手」なのだ。すべてのカード利用者が「Web明細」を見てくれれば完全な合理化、自動化が可能になる。しかし現実はどうだろうか。平日昼間にイオンに行ってみると、ほとんどがシニア。彼らに対してどう対応しているのだろうか。再びイオンのホームページを見てみよう。「ご請求明細書の郵送をご希望される場合は、有料(100円税抜)にてご提供させていただきました」とある。レジ袋を有償にする理由が「CO2の排出を抑え、環境保全につながる」は理解しやすいが、紙に印刷して封入して発送する。これは環境保全の問題なのではなく、ひとえにイオン側の手間が減らせないことからなのだ。どう考えてもシニアに優しいとは言い難いが、前述のイオンは、「55歳以上のお客さまにおトクなG.G WAON・G.Gイオンカード誕生!」。つまり片方でシニアをお客として取り込んでおきながら、効率化の名の下に「Web明細以外、つまり紙で明細を見たいお客には有料だという」。オヤオヤという感じだ。多分、イオン以外でも同じようなものだと思う。

 

 家内は数学は学生時代から得意で、いまでもその片鱗がある。新聞雑誌等にスウドクや、クロスワードパズルを見つけるとひたすら解いているのだ。その彼女もパソコンはやらない。近年、娘たちから「母さんにLINEして欲しいのでタブレットを買ってあげて」とリクエストされた。誕生日に、最初はiPad を。続いて携帯も長く愛用していたPHSからiPhone に切り替えさせた。まあ、iPhone などは直感的に操作できる部分が多いので、なんとか使っている。問題は、前述のように、Web明細への切り替え、といった手続きが出来ないのだ。

 別な例を紹介しよう。最近、日帰りバスツアー(ミステリーツアー)なるものに参加した。これ、お土産の多さに家内がハマった。同様なバスツアーを新聞、雑誌等で見つけてきて、これを申し込め、と私に指示してくる。私はどちらかというとキーボードの無いiPad/iPhone などよりもキーボードが使えるパソコンが好みで、パソコンでヒョイヒョイと処理し、申し込み内容を印字して家内に手渡す。というのも、昨今のこうしたツアーは旅行の日程表なども、イオンのカード利用明細書同様、Webからしか提供していないケースが多い。まあ、私にしてみればダンナの面目躍如というところで、自慢のネタにもなるので、それはそれで構わないのだが。


 さて、さて、ふと考えた。旦那がパソコン音痴だったら、夫婦ともにパソコンが苦手だったらどうなるのだろう?その昔、「デジタルデバイド(情報弱者)」 という言葉を良く聞いた。昨今は何故かこの言葉をあまり聞かなくなった。何故だろう。多分、iPad/iPhone のような機器が普及し、かなりの数のシニアが使いこなせるようになったからかもしれない。しかし、そうなればこそ、残された情報弱者にはどんどん過酷な状況になってくるだろう。AIの研究者が支援してあげて欲しいのは、むしろこうしたご年配だという気がするのは私だけだろうか。



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