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299. 起業テーマなんて何でもいい? (Part III)  ・・・ (2020/03/08)


 先日の創業寺子屋塾講演での質問に「なぜ(起業に)中古車の輸出を選んだのですか?」というご質問を貰った。振り返って考えてみると、自分は起業のテーマにはさほどこだわっていなかったことにあらためて気付いた。
 特に自動車マニアだった訳でもない私は、輸出の仕事を始めてみてアフリカのバイヤー(買手)から聞いたイプサム、ラウムといった車種をトヨタが製造しているのをこの時初めて知ったくらいだったのだから。(ね、結構いい加減でしょ?笑)

 ではなぜ中古車輸出にしたのかは、起業テーマなんて何でもいい?(Part I)に書いたように、短期間での起業がしやすい仕組み(販売、仕入、配送、輸出)が揃っていたから、という単純な理由からだった。


 昨年参加した港区の創業セミナー、また先日の創業セミナーでの参加者の方たちのお話しを聞いていて思ったのは、起業テーマへのこだわりだった。別にこだわりを持ってはいけない、と言っている訳ではない。ただ、いろいろ見聞きしていると、成長した会社は創業時と現在と違う業種の仕事をしているケースが目に付いたのだ。

 例えば、ソフトバンクは、もともとは出版物の世界における東販、ニッパンのような「取次」をパッケージソフトの世界でやろうとした。ゆえに社名にバンクという名称を入れたと聞いている。また丸亀製麺は、以前は焼き鳥屋をやっていたそうだ。

 こんな具合に創業時と、その後の成長期を経て、違う分野の業務を始める例は少なくないようだ。であるならば、起業時のテーマは自分のこだわりとは”別な視点で”選んでも良いのではないかと思った次第。




   




 起業しようと考えた時、小規模の会社ながら安定した経営をしている学生時代の友人二人と食事を一緒する機会があった。その時に言われたのは、定年後始める事業であるならオフィスなど持たず自宅をオフィス代わりにし、また人は雇わずにスタートすると良い。オフィスも人材も、いずれそうしたものがどうしても必要と思うようになるまでは、一人で、かつ自宅で始めると良いとアドバイスされた。

 世の中には株式会社でないと会社ではない (事業ではない)と考える人もいるようだが、私がやってきた中古車輸出の世界では、少なくとも会社組織か個人事業者かで差別をされたことは、ただの一度もなかった。


 さて、上の2つの図は、売上が総費用を超えて利益が出るようなるまでを簡略化した図にしたもの。左は、もしオフィスを借り、さらにパート/アルバイトを雇っているケース。月々に所定の支払いの必要が出てくる。当然のことながら、それまでにかかった費用を売り上げが超えるのには時間がかかります。
 かたや私の場合、友人のアドバイスの通り自宅で仕事をスタートしたお陰で家賃は発生せず、またパート/アルバイトは雇わず、出来る限り外部の業者に依頼するようにした(この場合では、売上が発生する案件で支出が発生しているので固定的な支出とはならない、つまり変動費)

 振り返ってみると、2010年の秋に起業し(最初の1台が売れたのがビジネスを始めて1ヶ月目)、翌年には損益分岐点(総費用を売上高が追いついた時点)を超えて利益が出るようになった(つまり1年たらずで)。これはひとえに、固定費を低く抑えたお陰だった。


 私が思ったのは、「起業テーマ」に思い入れを持つことは悪いことではないが、もしあなたに潤沢な資金の用意がないのであれば、早い段階で損益分岐点が越えられて利益が出るような「事業テーマ」探しから始めた方が良いのでは?ということ。(儲けが出て、潤沢な資金を持てるようになってから、当初やりたかったことをやっても良いのかも?)別な言い方をすると「1年で利益が出るような起業テーマって何?」、「2年で利益が出るような起業テーマって何?」と考えるのも1つかと。

 ちなみに丸亀製麺の社長は運送屋のトラック運転手になって資金を貯め、それを元手に焼鳥屋を始めています。さらにそれに見切りをつけて始めたのが丸亀製麺だそうですから。

 そんな風に考えてみると、起業のテーマありきよりは、何年待てるだけの資金力があるの?それに即応した短期に利益が出て、次のステップに進めるテーマは何か? ここ部分のギャップが埋められないと、セミナーは受講して意気込んでみたものの夢だけで終わってしまうのかも?と思った次第。 つまりこのページのタイトルように(一生1つのテーマでしかビジネスはしないというのでは無いのであれば) ”起業テーマは何でもいい”、と考えてみるのも1つのあり方かも、いかが?


  


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