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297. 起業テーマなんて何でもいい? (Part I) ・・・ (2020/02/23)


 東京しごとセンターさんからのご依頼で、創業寺子屋塾3日目の創業事例紹介をやらせて頂いた。私の話が終わったあとのQ&Aの中にあったご質問の1つが、「何ゆえ中古車輸出なんですか?」があった。事例紹介でもお話ししたつもりだったが再度こんな説明をさせて貰った。

 私の場合、(自動車マニアであった訳でもなく)必ずしも最初から中古車輸出がやりたかった訳ではなく、アフリカに視察旅行に行った際に思いついたのは、あくまで「何か貿易を」だった。それが何ゆえ中古車にしたかというと、比較的に新規参入がしやすかったという理由からだった。

 日本最大級の中古車オークション会場、USS東京  こんな形のトラックを見た事ありますか?

 1台づつ自走して船積みします


 もう少し具体的にいうと、関東だけでも10会場程度の中古車オークション会場があるかと思うが、そのどこかに加盟し、中古車の買い付けが出来るようにさえしておけば、あとは比較的簡単に輸出が出来るのだ。例えば中古車専門の「陸送」会社があり、また輸出業務については中古車輸出を専門に取り扱っている「乙仲」さん、さらにその先に中古車「専用船(RoRo船)」なるものまである。こんな具合に、中古車を買付さえ出来れば、あとは一気通貫で相手指定の港(例えばケニアのモンバサ港)まで車を届けることが出来るのだ。これが中古車輸出を起業テーマに選んだ第一の理由だった。


 

 私の事例紹介のあと、受講者がグループに分かれ意見交換をしているところにも参加させて貰った。起業をしたいという人達のお話しを聞いていてふと思い出したことがあった。それはソフトバンクの孫さんの言っていた「ソフトバンクを300年続く会社にしたい」と言っていたこちを。300年となると当然彼一代では為し得ないだろう。

 ソフトバンクというとほとんどの人は携帯電話会社をイメージするようだ。しかし、ソフトバンク起業時はパッケージソフトの取次会社としてのスタートだったことを覚えている人はあまりいないようだ。ソフトバンクという社名そのものも、日販、トーハンが本の取次をするように、(当時だとフロッピーディスクが入った箱を)パッケージを流通させる取次が業務だったわけだ。
 その後は、ソフトバンク出版、YahooBBとしてADSLによるインターネットの常時接続を低料金で提供、そして一般の人がソフトバンクという会社にイメージするきっかけとなった Vodafoneの買収による携帯電話事業への参入。しかし、その後は矢継ぎ早にイギリスの半導体設計企業であるARM Holdings plcを子会社化したりし、ついには投資会社として有名になってきている。
 なるほど、300年続く会社にするとなると、1つの事業分野に固執するのではなく、次々と新しい分野に乗り換える必要があるわけだ。


 起業をしたいという人たちは、「私はこのテーマで起業したいんです!」とおっしゃる。 しかし、起業のテーマは、やり易さ、起動に乗せるまでの時間の短さ(早い時点で儲けが出る)といった視点で考えれば、必ずしも「何をやるかに」必要以上の思い入れは持たなくても良いのかも?思った。

 先日届いた日経ビジネス誌に紹介されていた「丸亀製麺」という会社、いまは大きな会社になっているが、ここの社長はまず運送会社のトラック運転手になり資金を作り、次は焼鳥屋、そして最終的に「うどん屋」となったのだった。なるほど、という感じでしたね。



 最後に、こちらは規模の小さな話しで恐縮だが、私がやっている中古車輸出の世界。先日もある中古車オークションの会場で昔の知り合いとばったり出会った。ランチを一緒しながら話しを聞いてみると、輸出は2014年あたりからの大手中古車輸出企業の事業拡大(毎月東アフリカに向け15,000台もの中古車を輸出し始めた)ことで零細事業者は利益が出せなくなり、結果、彼は中古車の国内販売へ商売替えをしたのだそうだった。つまり、こうして生き残った人はそれなりに「業態転換」をして生き残っている訳だ。

 ソフトバンクのような大きな会社と個人事業者ではあまりに規模が違いすぎるが、私には、生き残りのためには少なからず「業態転換」が必要なのは大企業でも個人事業でも同じだと思う。


  


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