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292. 言わなくても相手には伝わっているはず、は思いこみ間違い  ・・・ (2019/12/22)


 かつての同僚に、日系アメリカ人(カリフォルニア生まれ)の女性がいる。かなり以前だが彼女は英字新聞に「日米文化比較」のコラムを持っていた。ある日、この女性が私に言ったのが冒頭の言葉。

 彼女曰く、「私も日系人だから、すべてを語らずとも相手が良い方に解釈してくれて、事が上手くいくことがあるのは知っている。しかしこれは美しき誤解とも言える例外的な出来事であり、やはり基本は「言葉」で相手にきちんと伝えない限り、本当のことは伝わらないのだ」という。なぜなら、言葉できちんと伝えたとしても、間違って伝わることが多々あるのだから、まして「言葉」で伝えない限り相手には伝わらないと考えるべきだという。


 私は仕事で4ヶ月ほどハワイで暮らしたことがある。その時の知り合いにハワイ大学のスピーチコミュニケーション科の教授がいた。ある日その教授が私にこういった。○○さん、日本人は言葉を大事にしないですね。アメリカには中学、高校から「スピーチ」の授業があり。さらに大学に行くと「ディベート」の授業があります。日本にはないでしょ?と。

 続けて彼は面白いことを言った。あなた、聖書を読んだことはありますか?最初になんと書いてあるかご存じですか?聖書の最初には「始めに言葉ありき」と書いてあるのですよ、と。
 この国(アメリカ合衆国)では、白を黒と言い含めることが出来れば黒にもなるのですよ、と教えてくれた。そう言えば、当時ボクシングだか、バスケだかの有名選手の奥さんが殺され、世間はこれは間違いなく夫が殺したのだと見ていた。しかし裁判の結果はシロとなった。なるほど、こういうことを言うのか、、、と納得した記憶がある。






 私は「Dlife」というBSのチャンネルをよく見る(録画しておいて見るのがほとんどだが)。以前のアメリカのテレビ番組と言えば警察物が定番だった。しかし最近私が興味を持ったのは弁護士のドラマ、出演した女優さんが英国の王子と結婚したことで有名になった「スーツ/Suits」、そして州知事だった夫が罪を犯したことから、何年ものブランクから弁護士に復帰し活躍する女性弁護士のお話し「グッドワイフ/Good Wife」などだ。

 見ていて思ったのは、相手を言葉でねじ伏せるようなやりとり。それでも不利と分かると、相手の過去をほじくり出し、それをやり玉に挙げて相手をこき下ろすようなやり方。恐らくはトランプ大統領の周りにも、こうした名うての弁護士達が大勢いるのだろうと推測する。腹芸を得意とする日本の政治家、役人では歯が立たないだろうと感じる。


 言葉にまつわるテレビ番組では、地上波デジタルのチャンネルで放送している「プレバト」の特に俳句の部分が好き。芸能人が読んだ俳句に夏井先生が手を入れるのだが、それはそれは見事に変えてみせてくれる。一文字変えるだけで、もしくは語順を変えるだけで、こんなにも全体が見違えるようになるなんてスゴイ! 


 我々市井の人間には、到底、弁護士が法廷でやりとりをするような領域には行けないだろう。しかし、日々の中で、ふと目にした自然の美しさに目を奪われ、そうした心の動きを短い17文字の中に歌い込めるようになることは、言葉を大事にすることへの第一歩となりはしないだろうか。

 


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