ホーム目 次 / 前ページ次ページ       


290. 組織というバック(後ろ盾)無しに何が出来ますか?  ・・・ (2019/11/17)

















 


  上記は日経ビジネス誌に投稿した私の文章、短い文だが私の言いたいことをまとめてある。

  私は一時期、イスラエル企業の日本支社立ち上げから参画し、そのソフト(Webサーバの限界テストをする)を日本に広めた。同種の製品は無くはないが、あったのは、IBMや日立のようなコンピュータハードウェアを作る会社が、自社の製品(ハードウェア)の性能限界を試すために作っていただけで、ソフトだけを外販していたケースは無かったようだ。

  日本で始めてこうした特殊用途のソフトウェアを単品で販売をし、ハードウェアへの試験というよりは、組み上げたシステム全体に対しての性能試験に使える始めてのものとして販売を始めた。他に競合がないのだから、売るのも簡単だろうと思って取りかかったが、簡単にはいかなかった。なにせ一部の人を除けば、そうしたものの存在も、テストの必要性も理解していないのだから。そこでまずは、何故こうしたソフトを使わなければいけないのか、から説明する必要があったのだからだ。

 最初こそ苦労したが、一旦売れ始めると数百万円もするソフトがどんどんと売れるようになった。その時考えたのだった。この優れたソフトウェアは私が開発したのか?いいえ。つまり私は、自分が開発した訳でもないこのソフトの優れた点をエンジニアから説明を受け、いわば受け売りをしていただけなのである。
 ある日エンジニアが笑いながら私にこういった。「○○さんを見ていると凄いなぁって思いますよ。この最先端のソフトがどれほど優れたものであるのか、一般的なエンジニアですら理解が難しいものを、とても自信ありげに○○さんが説明すること、感心しますよ」と。
 で私はエンジニアにこう説明してあげた。「もしチーフエンジニアのあなたが説明したことが正しいことなのであれば、同じ内容を私が説明したとしても、同じように正しいことなのだと。さらに、もし正しいことを言うのであれば、自信を持って相手に伝えてあげないと相手が心配するかも。ゆえに、私は自信を持ってこの製品が優れたものだと説明をしているのだ」と。
 
 3年勤めて最後の四半期は、数人いる営業の中でトップの売り上げを上げ、ご褒美にハワイ旅行に招待された。(もっとも招待を受ける前に転職してしまったが)

 さて、私が言いたいことは想像して貰えるでしょうか。製品が優秀なのは間違いないが、私が作った訳ではない。当時もイスラエル製品の優秀さはIT企業の間では認められていた。ゆえに、会社の名前が売れ、それがイスラエル企業というだけで信頼を得られる部分があった。さて、こうなった時、製品、会社、営業担当。この三者間で、営業である私の価値はどれくらいのものなのだろうか。
 世の中には愚かな営業担当がいて、自分が優秀だから売れていると自慢する人もいるようだ。むろん営業の力による売れ行きの差があるのは確かだが、そのほとんどが他の人を持って肩代わり出来る程度のもの。私は恵まれたがゆえに、自分の力量ってどの程度のものなのだろうかと考えた訳だ。


 さて、本題に戻そう。個人事業主は、自分で考え、自分で行動をし、自分でその結果のすべてを負うことになる。組織というバック(後ろ盾)なしに何かを成しあげることが出来たとしたら、始めて自分を自慢していいのだと思う。それをやれるのが「個人事業主」だと思う。人生、長く雇われてきたのなら、せめて最後に個人事業主として、自分を試してみたらよい。とても良い体験になるのだから。


ホーム目 次 / 前ページ次ページ     
 

inserted by FC2 system