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272.  起業初心者が最初に考える疑問  ・・・ (2019/04/07)


 都内のある区主催の創業者交流会に参加してみました。そこでの質問項目に起業9年目の私が答えるとすればこんな感じに。

1.個人事業でスタートするか、株式会社でスタートすべきか?

 多くの方が勘違いしているのではないかと思うのは、先にお皿を先に決めようとすること。本来は、料理を決めて、それに合うお皿を決めるのが順番だと思うのだが。

 私が個人事業者として中古車輸出を初めてまもなくのこと、ある海上保険会社主催のセミナーで出会った私と同年代の方(大企業を定年した方?)が、終了後に私のところに挨拶に来られました。頂いた名刺によれば株式会社○○となっていました。聞けば、会社を立ち上げたものの何をやったら良いか決まっておらず、こうした中古車輸出関連のセミナーに参加したのだとのこと。ふと疑問に思ったのは、創業時の定款には何をやると書いたのだろうか?だった。(つまり、やることも決めずに起業したの???)

 


 その後のやりとりはなかったのですが、2年ほどしたある日、この方から電話がありました。ようやく中古車輸出の仕事を始めてみたのだけれど上手くいかない。そこで貴殿はどうされているのか聞きたくて電話しました、と。言われた私は、市場の変化に合わせて、とっくにビジネスのやり方を変えていた(変えないと生き残れてかった)。つまりこの方、スタートも遅いが、そのあとの展開もあまりに遅すぎ流れに乗れなかったようだった。




 かつてインターネットプロバイダーが群雄割拠していた時代、ある女性経営者と知り合った。私が「やはり株式会社でないと(有限会社では)社会的に信用がないのですかねぇ?」と聞くと、女性社長いわく「会社の組織形態で判断するような相手なら、それまでの人と思えば良いだけのこと」と言われました。とても明快な答でした。必要以上に個人事業か法人化かを考えなくて良いように思う。

 ちなみに私が定年以降9年続けてきた中古車輸出の世界で言えば、個人事業主だからといってハンディを感じたことは皆無 でした。


2.起業したばかりの小さな会社では人を採用出来ない?

 次に多かった質問がこれ。立ち上げたばかりの小さな会社では人が集まらないが、何かよい方法はないのだろうか、ということ。

 かつて私がいた法人で採用した女性、たまたま主婦として家のこともきちんとやりたいので、週4日勤務でよければ給料は多少低くても構わないので採用して欲しいということだった。記憶力も頭の回転も早く、イベントのような業務で、複数のことがらが同時に並行して進むような仕事でも漏れなくどんどん仕事を進めてくれた。
 その後、私が外資系に転職した際、ふとこの女性のことを思い出して新しいボスに彼女を紹介し、採用して貰った。振り返れば一番最初の出会いは「週4日勤務でよければ働きたいのですが、、、」でした。

 こんな経験があったもので、私のゴルフ仲間(年代は私よりもひとまわり若い)起業した際に採用について私の経験をお教えした。彼が複数人のパートタイマーを時間配分して仕事を回したいと考えた。面接の後、採用したのは、応募者の一人、東京大学を卒業した若い男性ではなく40代の女性達数人だった。理由は単純、彼女達の方が知識も経験もあり、更に接客もそつなくこなしてくれそうだったから。聞けば採用した一人はかつて航空会社の元フライトアテンダントだったのだそうだから納得である。

 世の中には、「自分はこんなことも出来るのに、なんで採用の機会すら貰えないのだろう」と思っている人は沢山いるような気がする。ようは採用する側が、画一的な、週5日8時間勤務ということを金科玉条のごとく固執するからだという気がする。もっとフレキシブルな採用があっても良いと思うだが。


 私のようなシニア採用についてもこんな経験が。ある社団法人がハローワークに求人を出した。聞くところでは、募集側が年齢制限(上限)を考えていたとしても、ハローワークとしては年齢制限ナシと書くよう指導しているようだ。そんなことから応募してきたあるお一人は、採用側が考えていた年代を遙かに超えた定年退職者だった。この方、某銀行で長年支店長を経験してきた人だった。話しをお聞きして、仕事に対する情熱がほかの人とは違っていたし、また、そんなに高給を臨んでもいなかった。ただ、まだ元気なので、何か役に立ちたいと思っているようだった。結果は、当初の期待以上の活躍をしてくれた。(以下、エピソード)

 社団法人の多数の会員の中には、経営があまり順調とは言えない会員企業もあった。その中の1社が会費を滞納していたので私が会社を訪問し社長とお会いした。聞けば、以前よりは状況が好転しているものの、あとひと山が越えられれないと。それは、親が生前贈与してくれたお金で銀行から借りているお金を清算したいと考えたが相手銀行が受け取ってくれないのだと。
 そこであたらに採用した、このご年配(銀行の支店長を長く経験した方)にお願いをして会員企業社長に同行して銀行に行って貰った。かつて企業社長が単独で交渉に行っても、相手銀行担当者はのらりくらりとした対応しかしてくれなかった。が、この元銀行店長経験者に一緒して貰ったところ、手のひらを返したような対応だったのだそうである。その後この会員企業の社長と懇談する機会があったが、いわく「胸のすくような気分だった」と笑顔で語っておられた。

 (同様の例で思いついたのが「映画、インターン 」、新興ネット企業の女性社長、アン・ハサウェイを、ロバートデニーロ扮するベンが陰になり日向になり助けて行く、というもの)


 
 最近読んだ本がこれ。大企業でも優秀な人材に定着して働いてもらうために、古い考え方をあらため、より自由に働いて貰うことを考えている企業が出始めている。

 たとえば石鹸やシャンプー(LUX)食品(紅茶のリプトン)で有名な企業、ユニリーバの例。男性社員に3人目の子供が生まれる時、産休を取って休んだのだそうだ。それだけなら珍しくないのかもしれないが、この社員が「育児休暇」を取ることも会社が承認したそうだ。会社は社員からのこの希望にとまどうどころか、今後は自社の男性社員が「産休」+「育児休暇」を取ることを奨励したいというのだ。
 更にこのケースでは、育児休暇が終わったあとも会社が配慮して、(会社に出社せず)自宅勤務も承認したというのだからスゴイ。

 私の年代だと、出産時に1日、2日休むことはあっても、育児休暇を取るなどということは考えられなかった。まして子育て支援のために、自宅で勤務などというは、会社も許容しないだろうが、本人も自分のポジションを危うくするような気がして、休暇申し出など考えつきもしなかっただろう。まさに働き蜂世代だったのかもしれない。


 いまや人口減少で労働人口も減少してくる。大企業でもこうなのだから、あらたに起業する事業者であればこそ、あたらしい採用パターンを考えてはどうだろうか。求める人材がどういうものであるかを見極めたなら、年齢も性別、そして勤務時間も関係なく、それにフィットしそうな人を採用していかないと仕事を先に進めることなど出来はしないだろう。




最後に私の起業の場合ですが。
 マネジメントとは人、金、モノを最適化することと言われますが、私の場合は定年後起業ということもあり、人=私自身、金=手持ち資金のみ(無借金)、モノ=アフリカ旅行からヒントを得、中古車に、ということでした。

 これは起業時に相談した大学時代の同級生で経営者である二人から言われたことをヒントにしたものでした。私の希望が、気ままにやりたいというものだったので。具体的には、がんばりたい時はおおいにがんばって仕事をし、潮目が変わってしまって足掻いてもどうしようもないと思えるような時には家内とのんびり旅行でもしながら次を考えたい、といったこと。
 で、友人に言われたのは、「ならば、人を雇わないこと、オフィスを借りないこと」だと。実際にそうした起業をしてみて感じるのは、まさにこのとおりになっていて、仕事の流れた掴めた時は、どんどん先に進める。流れ(潮目)が変わってしまった時には、次を考えるまでしばし仕事と距離を置いて次を思案することが出来ている。

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 さて、以前にもこのホームページに書いたが、貿易をやっている以上、中小零細であろうが大企業であろうが、同じように相手国の政治情勢、さらには世界的な貿易の流れにダイレクトに影響を受ける。お陰で、2010年に中古車輸出事業を始めてみると、手掛けた東アフリカ向け中古車輸出は3年でピークを迎え4年目には急激に落ち込んでいった(主原因は、マーケットが育ってきたので大手が攻勢をかけ市場を席巻したから)。
 次に手掛けたニュージーランド向けも同様に3年間はビジネスが拡大していった。が、4年目に急速に落ち込んでいった。理由は相手ディーラーさんが、現地での買い付けルートをあらたに開拓出来たことによるものだった。

 4年周期が2回、つまり「昨年」が落ち込みのタイミングで、「今年」は次の山をつくるべく思案しているところ。そんな時期は、人に会うこと。知的刺激を受けられそうな場に出向いてみること。今回、偶然見つけたのは、自分の住む区が主催した創業セミナー。昨今、こうしたセミナーで「事例紹介 」をすることはあっても、自分が受講者として参加することはなかった。今回の参加は、もし次回私が講演を頼まれるとしたら、どんな説明の仕方が参加者にとって分かりやすいのだろうか、などを考えるための参加でした。

 このセミナー参加から、自分がやっている中古車輸出の新しいビジネスのパターンを見つけることはなかった。しかし、そうこうしているうちに、ふと新しい中古車輸出ビジネスのパターンを思いついた。今はそれを具体化に向けて進めているところだ。




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