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262. 才能、先見性、努力=行動 ・・・  (2018/12/23)  


  利根川進教授の講演を聴いたことがある。スイスのベーゼル研究所でとても充実した研究をし、その後のノーベル賞受賞に繋がったのだそうだ。この研究所には優秀な研究者が多数いた。その中の一人は何人もの研究者に対してノーベル賞受賞に繋がるようなアドバイスをしてあげたそうだが彼自身がノーベル賞を受賞することはついになかった。だとするとノーベル賞を受賞するというのもある種才能なのかもしれない。

 かつて第五世代コンピュータが話題になった時の議論の1つに「コンピュータには創造性などない」というのがあった。ファイゲンバウム氏の著書によれば、そもそも創造性なるものがどういったものなのかすら良く分からずに議論してきていたということが分かった、と。

 前述の利根川進さんご自身は、この創造性なるものについてはどう思われているのだろうか?講演の中でこう言われていた。「1つのこだわりと膨大な無駄から生まれるもの」と。そもそも生まれながらに持った才能というのはあるにしても、「こだわり」と「膨大な努力の積み重ね」なしには創造性なるものは湧いてこないようだ。

 才能というものが持って生まれたものであるならば、何もしようがないとも言える。しかし、天才でも脳の機能の一部しか利用していないという話しを聞いたことがある。才能うんぬんの前に、やるべきことをやっているのかを自分に問うた方が良いのかもしれない。普通の人が出来ることは階層の下から積み上げることなのかも。努力することはイコール行動すること。ここが案外凡人には出来ていない。一番分かりやすい例で言えば、ダイエットだろう。10通りの痩せる方法を知ったといっても決して痩せはしない。1つでもいいから、痩せるための方法を実行して初めて減量効果が出てくる。単純なことだが、これがいかに難しいのかはライザップなる会社のビジネスとして成り立っていることからも分かる。あたりまえのことを、たんたんと実行していれば着実に痩せるのに、である。


  かくいう私は、定年起業したがその翌年に東北大震災があり、放射能汚染した車が中古車市場に流通した。目に見えない放射能への対応問題で中古車輸出市場は大混乱した。追い打ちをかけるようにトラブルが発生した。輸出を目前に港に並んで船積を待っていた私の車に、船積み作業をする車が追突したのだ。そもそも私がそこに居たわけでもないので私の過失はゼロ。しかしその後の損保ジャパンの事故処理担当のもの言いに腹をたて、それらが心因性要因、引き金となって心筋梗塞を引き起こした 。地元の病院でカテーテル手術を受け大事には至らなかったが、心筋梗塞を引き起こしやすい要素は潰しておかなければと考えた。

 手始めに減量を。退院後は毎日1時間ノルディックウオーキングを繰り返した。結果1ヶ月で10kgほど減量した。食事(米飯)を減らすことと運動量を増やすことをストイックに実行した。きわめつけは退院した翌年の夏、富士登山に挑戦した 。年配登山グループに合流し、行きも帰りも8合目で一泊して無理のない登山をした。その際、酸素が少ないということはこういうことなのかと体感したが、血中酸素濃度が下がるとそれを補おうとし心拍数が増える。心臓がバクバクするのだ。この時はまだ自信を取り戻す前だったので、自分の心臓が耐えられるのかおっかなびっくり、鼓動が速くなるたびに立ち止まって深呼吸をした。ゆとりある行程と自分のペースで富士登山をすることでトラブルもなく富士登山を成功させることが出来た。これで心筋梗塞という「前歴」を意識から外すことが出来た。こうした経験を持てた事で、経験則として「結果が出るかどうかはやってみてから」という確証になった。これはその後の仕事にも生きてきた。やっても結果が伴わないこともあるかもしれないが、やらなくて結果が現れることはない、と。

 今年、創業相談を受けている方から「中古車輸出をしたいと言っている外国人ご夫婦がいるので指導してあげて貰えないだろうか」という依頼を受けた。2ケ月かけて仕入れから輸出まで、言葉や知識だけでなく、業界関係者に引き合わせ仕事のベースを用意して差し上げた。しかしその後の動きは鈍く、結果、起業には至らなかった。俗に言う、「馬を水飲み場に連れていくことは出来ても、水を飲ませることは出来ない」ということだった。

 創業寺子屋塾で4回講演をさせて貰ったが、その後起業したという人もおられるのかもしれないが私のところには届いていない。受講者の一人に聞いた話しでは、受講料が無料だということから、起業の予定はないものの参考までに聞いておこうという人がほとんどなのではないかとのことだった。
 多くの人にとっては事業を始めるにしても「何」がしたいのかが分からないということだと推測する。起業には強い思いが必要だろう。以前読んだある本の中で、ソフトバンクの孫さんの弟さんがこんなことを書いていた。「頭がちぎれるほど考えろ」と。水がお湯になるためには加熱が必要なように、「やりたい」「やるんだ」を繰り返し思うことが不可欠だろう。私にしてみれば「やる=行動する」を積み上げれば個人(個人事業主)レベルの起業は難しくないと思うのだが。


 私が個人事業(中古車輸出)を初めて8年がたつが、一番強く感じるのは、少しでも充実した時間を持ちたいと思うのならそれは自分で作るしかない。定年になってしまえば、誰も私のことなど考えてくれる人/組織はいない(むしろ気楽でいいが、、、笑)。せめて自分の残る時間は自分の好きなようにしてみてはいかがだろうか。むろん、自分は何もしないで静かな時間だけがあれば良いのだという方がいるとすれば、それもまた良しだとは思うが。

 

 


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