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255. 瀬古 浩也 著 「定年バカ」 を読んで ・・・  (2018/10/07)  



 この方、本のタイトル付けが上手。前回この著者の本で読んだ時もタイトルにつられて買ったのが、「定年後のリアル」だった。

 さて、この本、拝読しました。最初にアレッと思ったのは著者の立ち位置、「私は何もしていない」とおっしゃるが、巻末の著者略歴を見ると、「結論で読む人生論」、「定年後のリアル」など10冊ほどがリストされている。つまり著述業と言ってもおかしくない方。さらに2006年に洋書輸入会社を退職してからでもこの本、「定年バカ」などを書かれている。つまりこの方は、何もしていない人の代弁者というにはちょっと違う感じがする。
 そういう意味からも、定年後はこうしたら?こうすべき!といった内容の本を片っ端からリストして、1つ、1つ反論している。そこに違和感を覚える。

 昨今、定年後関連本が売れており、私も何冊か読んでみた。素人の私でもそんな流れに気が付くのだから、瀬古氏のように本を書かれる方であれば当然ご存じ。さらに内容を読んでみると定年後マジョリティー(何かをしなくてはと思いつつ何もされていない人?)にフォーカスしている感がある。これもかなりウケを狙って書いているという印象が私にはする。断っておくが、それそのものは悪いわけではないし、むしろ本を書く以上はそうであるべきと思う。ただ、定年後には何もしていない人の味方だとあなた(読者)が勝手に思いこむのは"勘違い"ということです。つまり、あくまで自分の視点を持って読むべき本でしょう。

 かつて読んだこのあるのは同じ著者の「定年後のリアル」。正直何が書いてあったのかはあまり覚えていない。前半はそれなりに読み進んだが、後半は本の厚みを確保するために字数を増やしているような印象であったことが記憶に残っている。この本の特筆するものといえば単に本のタイトル、「定年後のリアル」だ。繰り返すが、ほんとうにこの著者、タイトル付けがお上手だ。定年後とひとくくりに言っても、一人、一人、置かれた現実は違うのだということにつきる。すこぶる同感です。ただ、そう思えばこその期待感は、残念ながら読後には生まれてこなかった。





 定年後の問題は、個々人、一人一人おかれた状況が異なるがゆえに、定年後を扱おうとする人はどう書くのかに工夫が必要になる。作家、村上龍氏は「55歳からのハローライフ」 の中で5つの短編小説に描き別け、そのいずれかに自分に近いイメージを見つけて貰おうというもののようだ。

 ※ 私のホームページにも解説を付けていますのでご覧ください。

 余談ですが、未来を予測させたら科学者よりSF作家の方が上手に予測出来ると聞いたことがあるが、村上龍氏は別に定年後問題の専門家ではないが、彼の描く定年後のお話しはとても印象に残る1冊だった。私が定年後関連本でお薦めするとすれば、この1冊。



 さて、著者の言う「定年後に何をしようがほっておいてくれ」という意味では私の家内の考え方と一緒。家内が常々言うのは、他人は他人、自分は自分という人だから、「いいじゃないの本人が考えることなのだから、あなたがこうしろ、ああしろというのはおかしい」とも言う。言われる通りだ。ただし、家内はそれを声にして外に向けて発信しようとは思わない。なぜなら、それは本人が考えるべきことで、誰かに何かを言われてするものではないからだ。
 そうした指摘を家内にされているので、私がホームページにモノを書くときは、定年後に仕事をしたいと思う人がいたとして、では具体的にどうやったら良いのだろうか人がいたとしら、という前提で書いているつもりだ。(私が、こうすべき、といった言葉を使っていたとしたら、やってみて良かったと思う気持ちが前面に出過ぎたものですので、ご容赦を!)

 

 話題を戻して 「定年のリアル」という言葉を使うとすればお金の話しこそだと思っている。しかし定年になってからなんとかしようというのも無理な話し、やるなら現役勤め人時代に心がけておくべきこと。定年してしまったら、その後は、「お金が有るならば有るように、無いのならば無いなりに生きるしかないのだ」と思っている。まさにそれこそが定年のリアル(現実)な問題だ。
 私も多少だが外貨での運用はしている。株はもっと儲かるぞと言う人がいるが、”これだけ儲かる”ということは同様に”これだけ損をするかもしれない”という確率が同率で存在するので、知恵と経験の有る方はどうぞ(私の踏み込むべき領域ではない)と思っている。しかし、月々の収入がある時代ならいざしらず、大きな損失が出た場合、それを埋める方法がない。イソップ童話にでも出てきそうな話だが、欲をかいたお陰でいままでよりも悪い状態に落ちてしまいかねない。

 一番確実なのは、多少でもいいから働いて収入を得る方法だ。預金利息などを当てにするよりも、ずっとリターンが大きい。例えば(計算しやすいように)時給1000円としよう。1日5時間働けば5000円。それを週4日だとすれば20,000円。銀行預金だと今の低金利だと20,000円の利息を得ようと思ったら、いったいいくら預金すれば良いだろうか?納得してみたいと思う方は預けてある銀行預金から計算してみたらいい。

 ※ 例:三菱UFJ銀行の普通預金の金利は、年0.001%ですぞ!(ちなみに %は1/100の意味ですよ)

 そう考えていけば、低賃金で働いていても、円預金の利息よりはずっ〜と、ずっ〜と、マシということがお分かりになるはず。家内がシルバー人材センターに登録して、各種試験監督のお仕事をさせて貰ったり、シニアの方々へのランチ提供(配膳サービス)などをしているのも、自分の自由な時間を有効に使いたい、それが多少なりとも収入になればということのようだ。


 曽野綾子さんの言葉で言えば、老人になったということは特権でもなんでもないということ。また、同様に曽野さんは、「人間は有史以来、死ぬまで働くのがあたりまえだった」が印象に残る。誰もあなたの人生に責任など持ってくれません。自分の人生は自分で作るしかないのだから。

 


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