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251. 石井てる美さんの著書「私がマッキンゼーを辞めた理由」 ・・・  (2018/08/19)  

 タイトルが面白そうで読んでみたのがこれ、石井てる美さんの著書「私がマッキンゼーを辞めた理由」という本(角川書店、1300円)


 



 彼女の略歴を読むと、東京大学・工学部卒、同、大学院を修了している。TOEICという国際的に認められている英語のテスト、確か990点満点だったかと思うがこれに985点だったのだとか。つまりビジネスシーンで英語でバリバリ交渉出来るレベルと理解した。この会話力を活用し、就職前に世界のあちこちでインターンを経験し、その後コンサルティング企業のマッキンゼーに入る。マッキンゼー出身者には、例えばディー・エヌ・エー創業者の南場智子さん、また最近、デビ夫人が登場するTVCMでおなじみのロコンドの社長もマッキンゼー出身なのだとか。

 石井てる美さん、ここで徹底的に鍛えられ、とても勉強になったと言っている。そんな彼女が、何を思ってかお笑い芸人になりたいと思い立ち、マッキンゼーを辞めた。私の印象としては、恵まれすぎた人にありがちな、「私の人生、こんなものではなかったはず」と考えたよう。そもそも、地を這ってのし上がったタイプの人は、こういう迷い方はしないように思う。
 本のタイトルにもあるように、こんな世の中から一目おかれるような仕事をしてきた人が、お笑いの世界に身を投じたこのギャップを自分でどう埋めたらいいのか考えながら書いたような本でした。1つ1つ、この転職にはこんな意味があるのだとこじつけていると感じるところも。

 この本を読んでふと感じたもの1つは、一流企業で働いてきて、重役にでもなっていた人の定年も同じギャップを感じるのだろうかと。いままでは名刺を見せればそこに書かれた法人名だけで相手は一目置いてくれる。まして部長だの、役員だのの肩書きでもあれば、相手が好意的な配慮をしてくれることもあったかもしれない。さて、名刺が無くなった今、自分の存在そのものが更地状態になったような感じを持つのかも。定年後に会う人に、「私はかつて○○会社の部長をしていた」などと言ってみても、今そのタイトルであるのと、”かつて”、、というのとでは相手の反応は天と地との差があるかもしれない。それどころか、面倒くさいヤツ、煩さそうなヤツと思われるかもしれない。過去はどうであれ、新しい世界に身を寄せた以上、そこに合う自分を作るしかないだろう。
 

 さて、最後に、私がこの本の中で共感した部分をリストしてみました。

○決断とは捨てること
・決断するというのは往々にして、1つの道に進むことを決意することと同時に、もう一方の道に進むことをあきらめることになります。
・全てを手に入れられるなら、本当はそれが一番幸せです。逆に捨てるだけのものがあるから迷うのです。
・おそらく、一歩踏み出して新しい世界に行くワクワク感より、それまで持っていたものを失うリスクが怖くて、手にしているものにしがみつこうとしてしまうのだと思います。

○100%自己責任
・マッキンゼーで教わった、”自分でリードする””一人一人がリーダーシップを持つ”という姿勢が、その後の人生を切り拓く指針となった気がします。自分の人生をリードするのは自分です。うまくいかなくても、誰かが責任を取ってくれるわけじゃないし、誰のせいにもしてはいけません。
・逆に、自分の責任の範囲でなんでも好きにやっていいのです。

○どうしても一歩が踏み出せない人へ
・ダメなら引き返せばいいだけだと心に留めておくこと
・幸いにも、本当に失いたくないものは離れていかないこと
・自分は自分、絶対に人と比べないこと。夢を邪魔する人に接触しないこと
 こうして考えると、決断は何も大げさに考えるようなものではありません。

 まさにその通りだと思う。

 定年って、考えによっては良いシステムだと思います。まだ体が十分に動く間に、若い頃作った財政基盤に乗っかった形で好きなことをやれる機会が与えられるのですから。そんなシニア予備軍の方に言いたいのは、松下幸之助さんが言った言葉だそうですが、「もっと自由に生きなはれ」ですね。



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