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181. メード・イン・ジャパンはどうやって生き残るのか? ・・・ (2015/03/23) 

 4月初めに、アメリカ留学時代の同級生がガーナからやってきた(国籍は米国)。買ったもの(中古車他)を送り返す都合があるので、2週間の滞在のうち、最初の1週間で買い物を済ませるようアドバイスした。

 ショッピングにつきあってみて分かった彼の興味のメインは100円ショップだった。100円ショップでの買い物を見ていると、スリッパ、靴下、サングラスなどの小物。これは主にお土産にするのだとか。次いでホームセンターでは、体重計(体脂肪機能付き)、LEDライト、乾電池など。かの国でも勿論乾電池は買えるが中国製なのだそうで寿命が極端に短いのだとか。また、最近停電(石油の価格下落により計画停電を実施)が多いのだそうで、スポーツ用品店キャンプ用品コナーでLEDのランタンを買っていた。それらパッケージに記載されている生産地を確認してみるとほぼ100%が中国製でした。

 彼、ガーナでは妹さんがコンテナベースで中国から建材を輸入している。彼、内装材(打ちっぱなしコンクリート壁に貼る内装在パネル)を販売、を手伝っていることから壁材、床材にとても興味を持っている。ならばと溜池山王にあるサンゲツのショールームに連れて行った。あいにくこの日は定休日なのだそうだがドアが開いていて受付に男性がいたのでお願いをして見せて貰えた。ガーナでビジネスをしている彼は、日本の製品の美しさ、その種類の豊富さにとても感動していた。ただ、あいにく今の値段では、ガーナ人の所得では使える人はまずいなさそう。せめてもと、受付の男性にお願いをして床材のサンプル貰って帰った。


 私が中古車を輸出している国は東アフリカの国々(ケニア、タンザニア、ウガンダ、モザンビーク、ザンビアなど)がメイン。理由は右ハンドルだから。今回の彼の国、ガーナは米国同様左ハンドル。自国の中古パーツショップで左ハンドル用のダッシュボードを入手してハンドル位置の付け替えをしてみるという。聞いたところでは部品代は別として工賃だけなら200ドル(2万円程度?)で出来そう、とのこと。いったい人件費の相場ってどんな程度なのだろうと彼に聞いてみた。彼の2店舗で計5名若い人(女性3名、男性2名)を雇っているのだそうだが月給は100ドル程度(つまり日本円で1万円程度?)だとのこと。これで分かるが、とても我々が買っている製品は高すぎて買えるわけがない。

 ということで、高品質高価格帯の製品は値段の下がった「中古(10年落ち以上)」になってからでないと買えない。低価格品は中国からどんどん流入してくるのでそれを使うことになる。聞いている範囲では、同じ中国製品でも、日本に入ってくるものとではどうやら品質レベルが違うようだ。目の肥えている日本人には、安かろう悪かろうではダメなので、安かろう”そこそこ”を持って来ている印象。


 彼の車のカーステレオが壊れたというのでこちらを購入、ちなみに2000円ちょっとでした

 こちらは今回2台買ったホンダフィット用、2万円




 ソニーがアメリカに進出した始めた当時、アメリカでの日本製品の受け止められた方は、日本製品=粗悪品というイメージだったようだ。それを覆すべく日本のモノづくりの先人達はたゆまぬ努力を続けて今にいたる。こんな具合に日本のモノづくりは一貫して高機能、高品質、そして高価格へとまい進してきた感がある。ただ、私の目には、昨今はそれが行き過ぎて(?)、携帯電話の世界で良く使われる言葉「ガラパゴス化」(日本独自の進化を)に象徴されるように歪に進化した感じがある。

 今回彼の買い物につきあってみていろいろ勉強になった。例えばパソコン。Windows8.1になって画面表示を日本語から英語に簡単に変えることが出来るようになったそうだ。ならば、日本で安く(3万円台)入手できるパソコンを土産に持たせてあげようとしたが、ことはそう簡単ではなかった。大手家電量販店のパソコンコーナーで聞いてみたところ、画面表示は英語であってもOS(Window)はあくまで日本仕様なので、英語版オフィスなどはインストール出来ない(インストールしても正常に動作しない?)のだそうだ。

こちらはASUSのノートPC(新品)、Windows英語版がインストールされています。



 そこでパソコン用ソフトを開発している知人に聞いてみた。それによれば日本語Windowsは独自の進化を続けているのだそうで、ワールドワイドで使われているWindowsとは互換性が損なわれているとのこと。つまりパソコンの世界も(我々は日本語仕様の世界だけにいるので気が付かなかったが)ガラパゴス化していたようだ。



 そんなこんなを考えていて、ふとその昔使っていたテレックスのことを思い出しました。転送レートが極端に遅かった。私がテレックスのあるオフィスにいた当時(1980年代)でもパソコン通信の世界は長足の進歩を遂げつつあった時代で、1200、2400、4800bpsとより高速化してきた。ならばよりテレックスもより高速に変更出来そうなものだが、世界共通で使うには「底辺」に合わせる必要がある。そこでテレックスの世界では皆が共通で使える「底辺」最低速度が続いた。

 この「底辺」という言葉に関連するのですが、皆さんはBOPという言葉を聞いたことがおありでしょうか?ボトム・オブ・ピラミッドの略、つまり低所得層を意味する言葉。アフリカを中心とした世界は「底辺」にあたるということから、彼ら向けビジネスをBOPビジネスと呼ぶようだ、人口の増加とあいまって、急激にビジネスが伸びて来ている。この世界に向けた製品戦略に、どうやら日本は置いていかれているような印象を私は持っている。確かに、日本は高品質、高価格こそが生きる道、というのは理解できる。ただ、そのことから世界の最大規模の市場にはまったく不向きな製品具しか持っていない国となっている。

   
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   BOPについてはこちらに詳しく解説されています。  右の透明なパック、なんだか分かりますか?最少単位のコインで買える分量の「飲料水パック」です。ペットボトルサイズにしてしまうと高すぎて買えないので、彼らが買える単位までサイズを小さくしてあります。
 つまり100円ショップで量り売り商品を100円販売可能な分量にして売るのと同じ理屈です。


 グローバルに動いている業界では、これではまずいと気が付いた(サービスの)世界もある。一例がLCC(ローコスト・キャリア)、低価格の航空会社のこと。JAL、ANAの高いサービス、高価格では、海外からの客、また価格に敏感な日本の若者のニーズを受け止めきれないことから、既存の航空会社が出資して、LCC専門会社を作り始めた。

 先日のNHKの番組を見ていたら、アメリカ人の6割が日本人に好意を持っているのに対し、中国人に対しては3割しか好意を感じていないというものだった。しかし、今後アメリカと貿易などのビジネスで関わりの深い国は?という質問には、圧倒的に「中国と」という返事だった。つまり日本人は好きだが、まあ、日本とのビジネスはあまり広がることはないだろうと受け止めているようだった。

 そろそろモノ作りの世界でも、高品質・高価格のメードインジャパンだけではなく、低価格・そこそこ品質の製品を販売出来るようにならないと日本だけが置いて行かれ、ひいては、高品質・高価格でも生き残れなくなるような気がするのだが。




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