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169.創業のワクワク感、再び  ・・・ (2014/10/26)

 アスキーという会社を覚えておいででしょうか?西和彦さんという社長がいて、パソコンの黎明期に、ソフトバンクの孫さんとともにパソコンの世界を大きなビジネスへと導いた立役者です。彼がアスキーを創業した頃は、仕事がよほど楽しかったのか、たまにしか家へは帰らなかったようです。やりたい仕事が沢山あって、いつも会社に寝泊まりしていました。期間が長引くと、新しい下着を買って銭湯に直行。古い下着は捨て、新しい下着に着替えてまた会社に戻ったそうです。マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツも同様だったようですね。同じ世界に夢を描いた二人はビジネスパートナーになりましたが、数年後、目指す方向性の違いから提携関係を解消しました。しかし、ビル・ゲイツは彼の結婚式に、マイクロソフトの日本法人トップではなく、袂を別ったアスキーの西さんを招待しました。ビル・ゲイツは、仕事で付き合う相手と、プライベートとで付き合う相手を明確に分けていたのかもしれませんね。


 創業って、ワクワク感が大事、と創業寺子屋塾のコーディネートをされた城戸先生が言っておられました。同感です。前回の私の文、岡本綾子さんの著書にあった言葉、シニアだってシングルになれるのだけれど向上心の持続性がなくなるの、は痛いところを突かれた感じでした。


 さて私が定年後に始めた仕事も、創業時のワクワク感がなくなってきて、停滞し始めました。加えて、加盟している企業(中古車輸出における楽天ような存在の会社)とのベクトルに食い違いを感じ始めました。

 きっかけは消費税。エスクローサービス(海外の購入者が、お金を送って商品が届かないことを心配しなくて良いように、船積みするまでお金を一旦預かるサービス)。それまで150ドルのサービス料には、日本国内における消費税5%が含まれていました。それを8%になった4月から150ドル+外税にするとのレターが届きました。う?ちょっと待てよ、150ドル(15,000円内税)だったものを外税にするのなら、142ドル(14,285円)プラス消費税になるはず。便乗値上げですね。しかも外税にしたその消費税を加盟店に払え、というのですからひどい話しです。


 この会社の最近の動きを観ていて、その昔読んだ堺屋 太一さんの著書にあった言葉を思い出しました。組織は2つの目的を持つ、1つは創業時の目的、もう1つはあとから出来てくる組織を存続するという目的。この会社、創業時の理念はどこかへ消えてしまい、どうやって右肩上がりの売り上げを作るか、それだけの為に存続する会社と変質してきてしまっていました。

 中古車輸出市場を大きく育て自分も儲ける、というスタンスから、取れるとろころから取る、つまり海外にいるバイヤーから得るのではなく、同じ日本にいる加盟店から手っ取り早く取ろうとし始めました。その時描いたのが、以下の図でした。その後もこの行動は留まることなく拡大していきました。なんでタマゴを産むニワトリの首を絞めるようなことをするのだ、と抗議しましたが無視され続けました。この12月で契約期間が終わるのを機に、お付き合いを止める(契約を更新しない)ことにしました。



この会社の社員は、自分の会社のことを「こんなふうに」考えているようです。


 そんな中、この会社にいた外国人女性スタッフがスピンアウトし起業し、私に手伝って欲しいと私に連絡をしてきました。創業のスタッフは、彼女のビジョンに共感したコンピュータエンジニアと海外ビジネス経験豊富な男性でした。いずれも、同じ日本の大学に留学してきた仲間でした。彼女の創業ビジョンを実現するために、それまで勤めていた会社を退職しての参加だそうでした。

 先日、彼女の会社オフィスを訪ねると、3人とも朝の3時まで仕事をしていて、一緒に荒川沿いにある公園を散歩したのだそうでした。冒頭、アスキーの西和彦さんの逸話を紹介しましたが、それと重なるワクワク感を感じました。私自身は彼らと一緒に徹夜というのは難しそうですが、彼らがやれていない部分があればそれを私が埋めてあげたいと思っています。

 私の考えでは、良い製品は、作る側と使う側が一緒に作っていくもの、と思っています。サービスも同様で、サービスを提供する側と、サービスを受ける側が意見交換をしてこそ、より良いサービスになるはずです。今回お付き合いを止める企業はサービスを受ける側の意向をまったく無視してきましたが、今度のこの会社は、積極的にユーザとかかわっていきたいと言ってくれました。そこで私がユーザ側をまとめたい、彼らにフィードバックしたいと思っています。

 私の「仕事人生」最後のワクワク感になりそうです。ちなみに私は年明けで65歳になります。




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