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150.ワーク・ライフ・バランス(work–life balance)  ・・・ (2013/11/24)


 (ウィキペディアによれば)ワーク・ライフ・バランスとは、「仕事と生活の調和」と訳され、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を持ちながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる」ことを指す、とあった。

 サラリーマンは時間を切り売りしていることにほかならない。ゆえにワークライフ・バランスといっても、基本、一日8時間、週5日という制限の範囲以外での個人時間しか持ち得ないだろう。私自身、それが実現出来ていると思えたのは、シニアになってからだ。


 中古車輸出の仕事、メインの販売部分はネットでのやりとり。また、業者への支払い、入金確認もすべてネットで(在宅で)出来る。便利な時代になったものだ。外出は、入金確認が取れた案件で、陸運局へ行き「輸出抹消」という手続きをする時。あとは中古車の買い付けに中古車オークションに行く時だ。陸運局の手続きは30分もかからないが、中古車オークションでの買い付けは1日仕事となる。

 最近はもっぱら埼玉の中古車オークションに行っているので、中古車の買い付けに行く時は、朝8時前に家を出て、戻りは早い時で5時くらい。遅い時だと夜の9時過ぎ、ということもある。

 中古車の買い付け部分について補足すると、実際の買い付け作業は前夜から始まっている。ネットで、明日出品される車の「出品票」や下見用の写真が参照出来るので、それを見て車の状態を確認。それとともに、その車が市場で今、いくらで取引されているかを確認しメモしておく。それら作業に3時間程度かける。一昨年、心筋梗塞で入院して以来、夜間の仕事はしないようにしているが、この日だけは夜遅くまで仕事をすることもある。

 さて当日は前夜作ったメモを持って、オークション会場へ出向く。出向いてまずやることは、お目当ての車が広い駐車場のどこにあるのかを会場で配布される配置図を見て確認する。事前に対象車両をある程度の台数に絞り込んでおかないと(対象台数が多すぎると)広い駐車場を走り回らなければならないハメになる。オークション会場では、昼食が無料で提供される(好きな時間に好きな料理を選んで食べることが出来る)が仕入れ候補が多すぎると、ランチタイムが十分取れない場合もある。1日競りに参加し、長時間、軽い緊張が続くとうっかりミスも起き、気がつくと買おうと思っていた車両の競りが時間が終わっていた、などということもある。


 さて、競りで落札したあとも作業が待っている。私がやっている販売は、ネット販売(通信販売)。つまり楽天や(媒体は紙を使うが)ニッセンのカタログ販売と同じようなもの。つまり、写真がとても重要な意味を持つ。輸出されるまでの期間、乙仲さんの広い駐車場に預かって貰うことになるが、頼めば写真も撮ってくれる。ただ、彼らは在庫管理用であって販売目的ではない。撮影の目的が違うので、自分で車の写真を撮影せざるをえない。

 この時大変なのは、縦列駐車されている車を写真写りの良い広い場所に引っ張り出してから撮影を開始すること。今はまだ良いが、視力や距離感が落ちてきたら、こうしたことは出来なくなるかもしれない。あと長期間屋外に保管されていた車が多いので、雑巾を持参し、写真うつりに影響しない程度に軽く拭いておく。撮影にかかる時間は1台で20〜30分程度。枚数にして1台あたり40枚〜50枚程度。これが売れ行きを大きく左右するので、楽しみながらも真剣にやる。こうした泥臭い(?)作業をしていて思うのは、定年前、大会社に勤務し、コピーでも、FAXでも、頼めばやって貰えるような仕事の仕方をしてきた人には不向きかもしれない。また、シニアの方々の中には、四季折々の写真を撮影して自宅に飾っている人がいるが、私の撮影した写真はある意味お金を稼げる写真、実益も兼ねている。



 さて、撮影した写真は、都心へ戻る電車の中でノートパソコンを開き、ネット掲載に必要な写真を30枚だけ選んでおく。これをしておくと、帰宅して、その日中に新規車両として掲載出来る。こうした段取りをするのが、最近快感になってきた。丁度、料理と同じで、御飯が炊けるタイミングで、味噌汁、おかず、などが揃っているのが理想。これがタイミング良く揃って出来上がると、やった〜という気分になれる。

 一人で仕事をしていると、こんな具合に、中古車の買い付けに1日張り付いて仕事をする日が出てきて、この日は宅急便を手配したり、陸運局へ行ったりは出来ない。段取りは、むしろ一人で仕事をしている私のような人間には必須となってくる。


 さて、こう書いていると、結構大変と思われるかもしれない。でも、一人でやっているので、忙しい時は忙しいなりに、時間が取れそうな時はそれなりに時間のやりくりが出来る。例えば月曜日。時差の関係で(現地アフリカはまだ日曜日なので)月曜の朝は問い合わせが届かない。そこで前日ゴルフ場に予約を入れて、翌月曜はゴルフプレーとなる。こんな具合に、仕事の流れは自分で把握しているので、えいっ、行ってしまえ、とばかりにゴルフも出来る。アフリカの人との交渉は、小学生のようなダダをこねられることがあるので、結構ストレスが貯まる。そんなことで、息抜きのゴルフは必須と思っている。

 また、一日の中でも仕事をやる時間を自分で選べる。例えば、陸運局近くにイオンがあるので、陸運局の手続き終了後は、イオンへ行く。まずは本屋へ行き、面白そうな本がないか書店内を歩いて回る。その後、(株主優待の)イオンラウンジへ立ち寄り、無料のコーヒーなどを飲みながら新聞数紙に目を通す。(家内がNPOで働いている日は)ついでに食料品売り場に寄って、食材をみつくろってくる。


 私は持病(?)の五十肩の関係で、長時間パソコンをやっていると、肩甲骨あたりに痛みを感じることがある。そんなことで、2週に一回程度、行きつけの整体に行く。この先生とは10年くらいの付き合いになるが、言葉数は少ないが腕は確か。揉んでもらうと単に気持ちが良いとかではなく、治療効果があると思っている。整体のある麻布十番へは歩くと40分程度かかるが、行きは徒歩で、帰りは地下鉄で帰るようにしている。ちなみに麻布十番には美味しいパン屋さんがあるので、そこでパンを買って帰るがいつものパターン。また、家内の仕事が休みの時は、呼び出して、あべちゃん(焼き鳥屋)で、昼間っから夫婦で一杯、なんてこともある。


 現在、母は93歳。まだ自分のことは自分で出来るが、記憶のほうは、はなはだ心もとない。50〜60年前のことは覚えていても、5〜6分前のことが思い出せない(というよりは、記憶そのものが出来ない感じ)。どうやら新しい記憶を保持する新しい細胞が作られなくなったのだろう。
 同じ家に住んでいるので、朝、昼用にパン、プリン、カップ麺などを渡し、好きな時に食べて貰う。夕食は(家内が仕事の日は)私が用意をする。硬いものが食べられなくなっているのだが肉は好き。そこで最近偽装で話題になっている合成肉を、当家ではむしろ率先して使っている。豚肉、鶏肉は入れ歯でも問題なさそうなので、素材そのものを焼いて出す場合は、もっぱらこの2種にしている。

 やってみると分かるが、食事の準備くらい「段取り」の大切さを実感出来る領域はないかもしれない。御飯が炊き上がるタイミングで、メインの料理、味噌汁などが揃っている必要があるのだから。さらにその前段階の食材の買い物から段取りをイメージしながら買うことになる。シニアのボケ防止には料理が良いのかもしれない。



 さて、以前(日経)新聞に紹介されていた、シニアにとって必要なのは「きょういく」と「きょうよう」だ、というのを思いだした。これは、「今日、行くところ」と「今日、用事がある」が大事、というのだった。サラリーマンのように週日の1日8時間を拘束されるといったことなく(勿論、通勤もなく)、1日の中で「仕事」と「仕事外」を組み合わせてやっていると、もしかしてワーク・ライフ・バランスって(私自身がやっている)こうしたこと?と思ったりする。



<編集後記>
 日本とはお金の価値の違うアフリカへの中古車販売は、思ったほど利益は出ない。ゆえに、若い人は会社勤め時代のサラリー相当を稼げず、1年たらずで撤退していく人がほとんど。そこへ行くとシニア世代で、「ゴルフ代が稼げれば良い」と割り切れれば、また「ひまつぶし故に自分の人件費は度外視でもいい」、と思えるならば、面白い仕事だと思う。別な言い方をするならば、中古車輸出は(企業化してやるならいざしらず)若いもんがやる仕事じゃない、シニアに任せては?と思ったりして。

 話は変わるが、先日もゴルフ帰りに(一緒にプレーしたシニアの方と一緒の列車で都心まで戻り)車中でおしゃべりを楽しんだ。その方、お仕事はされていないそうだが、預金残高の桁が1つ減った時はショックだった、と言っておられた。鰻のタレよろしく、少しでも継ぎ足しが出来れば(少しでも収入があれば)、気持ち的に楽なことは私が明言出来ます。



 

<参考図書>

 「老年の品格」 三浦朱門 1,500円

 「老年のぜいたく」 三浦朱門  1,365円




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