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144.定年後に仕事を始め、3年がたって思うこと  ・・・ (2013/09/08)


 定年後始めた中古車輸出は(皆さんが洋服やゴルフ用品を買うのに”楽天”を利用するように、海外の人が中古車を買おうとすると”この会社”を利用している)この企業に加盟店という形でビジネスをしている。私は60歳から始めたが、そこに加盟している個人には、30代、40代、そして50代もいる。だがその多くは、加盟後およそ1年でに撤退していく。何が難しいのだろうか、またこの仕事における成功とはどういうものだろうか。もし会社勤めと同様、「この仕事で生活出来るのか」、もっと平たく言えば「食っていけるのか」ということであれば、これが結構難しい。結果、1年で半数が撤退していく訳だ。

 私の場合、抱えている背景が若い世代とは全く違う。まず60歳超の人間を雇ってくれる場所がほとんどない。ゆえにこうした場を自分で探さなければならなかった。また収入という意味では、会社勤め時代延長としての年収が稼げれば言うことはないのだろうが、定年間際の年俸を考えると(会社でも立ち上げるならいざしらず)個人事業主として活動する場合にそんなことは無理とはなから理解していた。つまり、この仕事で食っていくことを目指した訳ではなく、どちらかというと「生きがい」のため。
 以前、日経新聞にあった例え、シニアには「きょういく」と「きょうよう」が大事、ということだ。解説すると「きょういく=今日行くところがあること」と、「きょうよう=今日やるべき用事がある」ということだそうだ。その意味で、私がやっている中古車の輸出は、生活としては成り立たないものの、「きょういく」、と「きょうよう」を満たしてくれている。なのでこの仕事、多少なりとも自動車に興味があれば、またメールのやりとりを英語ですることが億劫でなければ、定年後の仕事としてはお勧めと思っている。ちなみに投資する資金としても、100万〜200万あればスタート出来る。ということは、万が一撤退するにしても損失はその範囲で済むということだ。


 大まかな仕事の流れとしては、中古車オークションに加盟し、その会場で中古車を仕入れる。落札出来た車の陸送を手配し乙仲さん(輸出にまつわる一切を代行してくれる業者さん)のヤードに搬入して貰う。そこからホームページに車の写真を掲載して、いざ販売開始となる。上手く売れたら、陸運局へ行って必要書類を発行して貰い、それを乙仲さんの渡して、直近の船に乗せ輸出して貰うという一連の流れ。この仕事をやるのに年齢は全く関係なく、30代でも、60代でも、やることはまったく一緒。

 1年で撤退してく人が、もっとも予想と違うと思うのが、利幅と販売台数。初年度、安い車の仕入れが分からない初心者が手に出来る利益は1台あたり1〜2万円が出れば良い方で、(長く保管していると駐車料金がかさむので)赤字で輸出ということも珍しくはない。まあ、たとえ1台2万円でも、もし20台売れれば、計算上は40万円の売上となるわけだが、実際に1年目の初心者には月5台〜7台売れれば良い方だろう(つまり月収10万から15万?)。

 私の場合どうだったか思い返してみた。加盟料が月5万円なのだが、9月から初めて最初の半年くらいはこれすら賄えていなかった。半年が過ぎて順調に動き出したと思っていたら、丁度1年目の終わりが近づいてきた(8月中旬)に放射能汚染で輸出がストップさせられたり、輸出予定の車両が港湾業者のミスで追突事故にあったりと災難が続いた(2年たつが損●ジャパンとは示談以前の状態)。そんなストレスが引き金となって心筋梗塞で入院するはめになり、結果、3ヶ月ほど仕事から離れた。今となってみれば、仕事的にはこれが良かったのかもしれない。一旦立ち止まったお陰で、最初の1年をしっかりと見直すことが出来たのだから、何が幸いするか分からないものだ。



 この仕事をやってみて、一番想定外だったのが、販売の難しさ。私はもともと営業畑の人間なので、楽観的に考えていたが、これが大間違い。まず難しいのが、”非対面”販売だということ。インターネットで販売するのだから当たり前で、いわば「楽天」の加盟店になって中古コルフクラブを海外に売るようなもの。次に、最大の難関が、日本人とアフリカの人との感覚の違い。我々日本人がネット通販の「楽天」でモノを買おうとする時、注文をするということは既にお金が用意出来ているのがあたりまえ。ところが、アフリカの人の場合、どうやら注文をしてからお金の工面をするようだ。

 私がアメリカに(1976年)留学した頃を考えて合点がいったのだが、当時(1ドル300円だった)の日本同様、アフリカ諸国では外貨の制限も厳しいようだ。これは致し方ないのかもしれない。この仕事を始めたばかりの人たちが扱う車両は、船賃込みでも15万円前後の車両。我々ならクレジットカード決済というのも可能だろう。しかし、そもそもアフリカの人はクレジットカードなど持っていない。それどころか、銀行口座すら持っていない人も多いのだから(昨年、来日VISA取得を手伝ってあげたウガンダの公認会計士も銀行口座は持っていたが、クレジットカードは持っていなかった)。こう聞くと、ようやく私が販売している先、東アフリカ(右ハンドル車を利用している)と日本のギャップはいかばかりかとご理解いただけるだろう。

 次に想定外だったのが彼らの性格。かなりおおざっぱなのだ(別な言い方をするなら、かなりいい加減)。例えば、ある男性は、「送金のため銀行まで行ったけど、あまりに送金手数料が高いので振り込まずに返ってきた」と言ってくる始末。また、良くあるのは、海外に送金するのに送金手数料がかかることすら分からない人も多い。なので、振り込まれた金額を見ると、販売価格より20〜30ドル程度不足していることがままある。ほとんどの輸出事業者は、英語で交渉するのが苦手?面倒?なものでそのまま受けてしまうようだが、私は、差額を請求している。すると相手の反応は決まっていて、「日本の銀行が手数料を取ったのであってアフリカの銀行ではない」と。それでも請求をすると今度は怒りだす。「お前は、今後共、俺とビジネスをしていく気があるのか」と。私はこの手の脅しには応じない。すると、今度は泣き落としにくる。「20ドル送金するのに、いったい送金手数料はいくらかかると思っているのだ」と。そこで私の方から、海外送金専門の銀行があり、そこが手数料が安いから、そこを利用してはどうか、と伝える。


 まあ、何を始めても困難はつきまとう。この程度の困難が越えられないのなら、初めから起業などしないことだ。偉そうなことを言っている私だが、現在、再度困難に直面している。1年目は経験不足で大変だった。それが入院、静養を経て、2年目はあらたな時代へと進むことが出来た。3年目も、順調だった2年目の経験を継続していけば良いのだと思っていたのが間違いだった。アフリカのような新興国の成長は半端ではないのだ。どうやら、かつては金持ちだけが中古車を輸入していたが、いつの間にか購入対象者が中産階級の人へと広がったよう。しかし彼らは従来の購買層とは経済的ゆとりが違う。かなり激しい値段交渉のさらされることになった。一部の車両では赤字を受け入れ、トータルで黒字になれば良いのだ、と自分の言い聞かせ、がんばっているのが現在。ここを乗り越えれば4年目はまた平坦な道に出るはず、と期待している。



 さて、私の場合はこんな具合だが、辞めていった人たちのことに少々触れてみたい。前述のように、私は生活を背負っていないお陰で、今でもこうして仕事を続けることが出来ている。なので、辞めていった人より私がエライということではないと思っている。ただ、辞めた人の一部がインターネットの掲示板などで加盟企業を非難しているのは少々聞き苦しいものがある。なぜか。事後にエネルギーを使っているが、事が起こる前にそのエネルギーを何故使わなかったのかと思うからだ。私はこの企業の加盟店説明会を3回聞きに行った。なぜなら参加1回目は全く納得が行かなかったからなのだ。加盟店向け説明会に参加してみると、説明にたっていたのはほぼ自分の子供の世代。なんともあやうく、とても彼らの説明通りのことが実現出来るものとは思えなかったからだ。そこで2回目、3回目と参加してみた訳だが、ここには実際に加盟している人が講師として呼ばれていた。彼らの話でようやく合点がいったのだった。ようは、ここに加盟することで、何が期待出来て、何を期待出来ないのかが、かなり明確になった、ということである。

 つまり、挫折した多くの人は、加盟する前に、十分な下調べもせず、上手くいかなくなって「加盟先企業の言ったことは嘘ばかりだ」という。確かに、彼らの言うことはかなりの誇張があった。例えば「英語が出来なくても大丈夫です」などが典型。実際に海外と取引をするのに、もし英語が出来なければ交渉とは値引きでしかなくなる。また「インターネットでの販売なので世界が市場、どんどん売れる」という。これは1994年にインターネットが日本の普及し始めた頃のまやかしに良く似ている。当時は、インターネットのなんたるかが分からない人が、「インターネットは世界が相手、沢山売れるから、沢山仕入れておけ」という言葉を真に受けて、在庫過多で倒産してしまった、という話である。こんなような話を加盟先企業の事業部長(40歳前後?)が平気で発言しているのだから、この会社のクオリティ、推して知るべしだろうと思った。ちなみにソフトバンク系列でヤフーの子会社の1つです。


 とまあ、こんな具合だが、それを見抜けなかった、もしくは見抜こうとしたのかどうかが問われるだろうと思う。このあたり、年齢が若いかどうか、高学歴がどうかが関係なさそう。現に私が名刺交換した人には有名私立のK大学やA大学を卒業している人がいたが、案外、安直に信じてしまっていた。どうも、加盟店方式で起業する人たちには甘えた感覚の人が多いようだ。

 単純化すると、成功者とは、上手く行かなかった理由を自分の中に探すことが出来た人。失敗者は、上手く行かなかった理由を他人のせいにした人 。これが私の実感です。



<編集後記>
 中古車オークションへ行くと、私と同年代、もしくは年配者をみかける。仲間と会場へ来て、無料で提供されるランチを楽しんでいる。見ていると、中古車を売るでもなし、買うでもなし。どうやら社交の場にしているようなのだ。
 この仕事、やろうと思えばいろいろやることはある。しかし、自分で時間のマネジメントが出来るようになれば、疲れた時は昼寝も可能である。つまり、働く時間と場所を自分で決められる自由度があるのだ。こうして考えても、あまり儲かりはしないもののシニアには向いた仕事のような気がする。



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