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141.シニア起業の難しさ ・・・ (2013/06/30)

 私は自分が60歳を過ぎて、(それまでやっていた外資系企業でソフトウェアを販売するのとはまったく分野違いの)中古車輸出の仕事を始めたもので、同じ世代の人がいると、なんとなく同士のような気がしています。またその苦労が分かるので、出来る支援ならして差し上げたいと思ってきました(勿論、ボランティアで)。まあ、まだ数件ですが、支援が実らず1年を待たず脱落してしまう人ばかりです。スタート時には、とても熱心にいろいろ質問をされた方が、恥ずかしいからでしょうか、最後には理由の説明もなく撤退していきます。

 しかたなく、私なりに彼らの撤退理由を推測してみたのが以下です。


・よく結婚について言われることのように、結婚する前は両目を良く見開いて確かめ、結婚した後は、多少のことには目をつぶるべく片目をつぶること。これが結婚を上手くやっていくコツと聞ききます。加盟店方式で起業する方に多いのですが、加盟先企業との関係も結婚と同様に考えるべきだろうが、営業担当の言葉を鵜呑みにしてしまっていることが多いのです。この企業に加盟すれば、誰でも成功し、利益を手に出来る、と思い込んでしまっていました。落胆は期待の大きさに比例して大きくなります。当然のことながら、「こんなはずではなかった」と落胆、撤退してしまったようです。


 私の場合。中古車輸出のサイトを構えるある企業(いわば楽天のようなもの)の説明会に参加しました。説明していたのは、自分の子供と同世代かな?と思う男性。彼の話には、そんなふうに行くわけがないとまったく納得が行きませんでした。しばらく他の分野の起業を模索していましたが、ふと思い立ってもう1度聞いてみることに。今度は、実際に加盟している事業主が説明にたっていました。これは、なるほど、と納得が行きました。ならばもう1度聞いたら、もっと納得行くかと思い、少し時間をおいてまた加盟店向け説明会に参加しました。こんな具合に、加盟する前に(普通の人であれば、1回の説明会で加盟するのかどうかを決めるところを)私は3回も聞きにいきました。こんなですから、実際に加盟して、自分で仕事を初めてみて、大きな落胆はなかったのですが、説明会に一回参加して、それを鵜呑みにしていたら、私も、「話が違う〜」と怒っていたかもしれませんね。




・これと関連するのですが、失敗しだすとその原因を「外に/自分以外に」求め出す。これまた結婚と同様で、夫婦が上手くいかなくなった場合、その責任は相手にのみあるのだ、という立場を取ると、離婚に突っ走るしかなくなる。加盟先企業と加盟店の関係も同様ではないかと思います。

 経営者の方とのお付き合いも多く、そんな経営者から面白いお話を聞きました。ある時部下が大失敗をしたのだそうです。その上司にあたる中間管理職に「誰だ、こんなバカなヤツを雇ったのは」と。すると、中間管理職が返事したのだそうです。「社長です」と。そこで社長、気がついたのだそうです。社長は経営に関するすべてを決定することが出来ます。ですので、もしバカなヤツを雇ったのであれば、一番バカなのは自分だと知ったわけです。
 個人事業主とても同じこと。自分がすべてを決めることが出来るわけですから、問題があるとすれば、自分の中にその理由を探す必要があります。



・大企業のヒエラルキーの中で定年を迎えた人にとって、すべてを自分がやらなくてはならない。また、自分が何をやらなくてはを自身で決め、実施していく、という簡単なことが、案外出来ないようです。大きな企業であればあるほど、自分は部品のような役割だけやっていれば良かったのでしょう。

 大企業にもいたことはありますが、裁量権の範囲が狭く、肌に合わない感じがしました。その後の数度の転職は主に外資系企業で50人以下のところが多かったのです。ですので、一人で仕事を初めても、なんでも自分でやりますし、特に手伝ってくれる人がいないことに不便は感じませんでした。それでも、自分が経営者となると、いろいろ自分を改革しなければならないことも多く、とても勉強になりました。



・オープンな競争に耐えられなくなった人。大企業にいれば、年齢、肩書きなどに敬意を払って貰えるかもしれないが、オープンな世界ゆえ、誰も遠慮もしてくれない。仕入でセリに参加するのに年齢など関係ないし、また、アフリカの人にしてみれば、相手がどんな年齢、経験を持っているのかは直接は関係ない。関係するのは、自分が欲しい車を持っているか、それを欲しいと思える値段で売ってくれるかどうか、だけですから。

 私の場合は、先に書いたように50歳を過ぎてからIT企業、それも小さな外資系企業にいました。年齢的に若い人が多く、財務担当の一人を除きすべて私より年下、もっと言えば、私の子供と同年代の人ばかりでした。そんな中でやってきましたので、少なくとも私の側に、若い世代に混じって仕事をすることに違和感はありませんでした。
 若い人は元気です。遮二無二走っていますから、彼らと同じ世界でビジネスをするには、それに対抗出来る何かが必要です。恐らくほとんどの人は中古車などは手がけたこともないでしょうから、経験で勝る、という部分はないでしょう。ですので、彼らと同じフィールドで競合するからには、豊富な経験の中で競合相手にアドバンテージとなるものがあるといいですね。



・急がば回れ、が出来ない。一直線に走り、それで利益が出てくると思っているフシがある。ビジネスを軌道に乗せた方の話を聞くと、初年度は勉強の年と位置づけ利益が出にくくても、ひたすら仕入れて、売って、を繰り返す。その中で、どう仕入れたら良いか、どう売ったら良いかを経験則として体感してくる。起動に乗っているビジネスと、起業からのスタートで軌道に乗る前の段階をやっているのでは、おのずとパターンが異なるのだろうと思うが、それが待てないらしい。

 本当はこの部分にこそシニアのメリットがあるはずなのでしょうが。多少年金も出ていて、借金(住宅ローンなど)もなくなっている。生活がかかっている訳ではなく、じっくり腰をすえて頑張れるのでしょうから、初年度赤字でも、これも勉強と割り切ることも出来そうなもの。若い人の場合、この仕事で生活を、と思っている人が多いようですが、たとえ初年度と言えど、赤字では辛いでしょうね。
 初期投資が少なく、たとえ初年度で失敗し撤退したとしても、100万程度の出費で済みますから、シニアの起業としては敷居も低く、私からみると、チャレンジしてみて面白い分野という気がしています。




・自分は素人なのだという自覚が不足?私のようにそれまでとは異分野で起業しようとした場合、自分はど素人なわけです。これはもう、これから仕事でお世話になる方に、頭を下げて指導をお願いするしかないでしょう。これだ同業者との付き合いについても同様かと思います。同業者から貰える情報には貴重なものが多いので、仲間作りも大切かと思います。


 おじさんになったメリットは、誰にでも話しかけることが出来ること?と思っています。私も若い時は、初対面の人にこちらから声をかけることが出来ないシャイなタイプの若者でした。それが、年齢を経るうちに、図々しくなり(?)誰にでも、こちらから声をかけられるようになりました。
 IT系から中古車の世界、180度世界が変わった訳ですので、これはもう、周りは皆先輩。頭を下げて、いろいろ教えて貰う、という姿勢は不可欠でしょうね。営業畑だったこともあり、私にとって抵抗感はないのですが、もしこれが出来ないとなると起業するのは難しいかもしれませんね。



・一人でやると、自分の気持ち(モーティベーション)を維持することが大事になります。


 なんでも思い通りになる世界などはないでしょう。売上の浮き沈みがあります。そんな時、シニアなら、これで家族を養わなくてはいけないのだ、といった必死さは必要ないはず。多少なりとも年金も入る訳ですから、少し気持ちにゆとりを持って仕事が出来るといいですね。

 そんな中で面白い本を2冊見つけました。 別に起業を前提としたお話しではないのですが、シニアの持ち味を活かす方法が綴られています。


 「老年の品格」 三浦朱門 1,500円

 「老年のぜいたく」 三浦朱門  1,365円





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