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135.定年後、起業を成功させるのに必要な3要素  ・・・ (2013/03/31)

 昨年の決算書を作り、先日、税務署に申告してきました。一昨年に比べ、売上規模で2倍、経費は1.5倍でした。今の流れを発展させることが出来れば、2013年決算ではなんとか黒字化出来るかも、と取らぬ狸の皮算用をし始めました。

 そんなご報告を、東京しごとセンターでお世話になっている相談員の方にしたところ、「独立起業され、成功する要因は何だと思いますか?」と訪ねられました。

 そんなおり、ここ1ヶ月の間に、私同様に中古車輸出のお仕事を始めたお二人からお話しを聞く機会が持てました。お二人は私より少し若い55〜60歳という年代。お一人は外資系企業の役員をされていましたが、定年になる前に業績悪化のために解雇された方。もうお一人は、仕事を何度か変わられ、いろいろご苦労もされたようですが、定年の年代を前に、まだまだ子供の教育の必要性から、あらたな収入先にと中古車輸出を始めた様子。

 私自身が成功の要素を語るのには時期尚早ですので、お二人の話からヒントになりそうなものを貰ってきて、私の経験と照らし合わせてみました。サラリーマンを辞め、その後起業に成功させるのに必要な3つの要素はこんな感じではないかと思います。


第一要素
 サラリーマン時代に何をやってきたのか、起業後もバックグランドになりうる部分を持っていたか

第二要素
 サラリーマンを辞め起業すると決めた時点からの準備にどれだけのモノを用意したのか

第三要素
 起業してからの何をしてきたか


第一要素について
 シニアの方々を見ていて、やはりサラリーマン時代にどんな形でお仕事をされてきたのかが重要な気がします。大きな企業にいると、自分でこれをやりたい、などと提案するのは、ある種、異端ともみなされるケースもあるようです。ひたすら企業、上司が求める範囲で全力を傾けることが良いサラリーマンと見なされてきた、そんな形で仕事をしてきた人間にとって、起業時に必要な、自分でやることを決め、自分で実行し、自分を評価する、と言葉で言ってしまえば簡単そうなことが、なかなか出来ない。これが現実かと思います。

 ちなみに友人からは「転職経験の多い私だから出来たことでは?」と言われます。世の中で「キャリア」という言葉が多用されますが、これを転職の回数を言うのではなく、超えてきた「困難」の数と考えるなら、この「キャリア」は、自ら起業するにあたっても、大きな力となります。ということは、言われたことだけをきちんと全うしてきたタイプの方にとっては、起業そのものが考えられないことなのかもしれませんので。


第二の要素について
 起業する業種によって、いくつか持っているべき仕事の要素があります。もし、それらを持っていないと分かったなら、それを起業前の準備段階で用意する必要があります。

私の仕事、中古車の輸出で考えるなら、

・インターネットに関する知識
  私について言えば、1994年に日本に始めて個人向けインターネット接続会社(プロバイダー)が出現した頃からインターネットに親しみ、自らホームページを持ち、講習会やセミナーにも多数参加してきていたので、インターネットで中古車輸出をするにあたって困ることは何もありませんでした。

・貿易に関する知識
 これに関してはまったくの素人。そこで探して見つけた、東京都中小企業振興公社が貿易実務講習会を開催しているのを知り、テーマ別に数回、参加しました。
 http://www.tokyo-trade-center.or.jp/TTC/course/index.html

・英語によるコミュニケーション
 会話スクールは多くとも、海外のバイヤーさんとのメールのやりとりに必要なコミュニケーションを教えてくれるところは多くはありません。私は1年間の米国留学の経験を持っていますが、年数も経ち、記憶にサビが出はじめていたので、ブラシアップの為にと東京都中小企業振興公社が開講していた講座に”半年”ほど通いました。

 ・自動車・中古車に関する諸々の知識
 2つに分け、マーケティング情報の収集については、加盟企業に何度も通い資料を公開して貰ったり、業界紙などを取り寄せ研究しました。
 また、中古車そのものについては、車から学ぼう、という姿勢で、多くの中古車を見、現場から学びました。

・金銭的・人的裏付け
 まずは資金。これは何をやるのかによって、全く違ってきます。場合に寄っては融資を受けることも可能でしょうが、シニアの起業は借金をしてまでやるべきものかどうかをまずは考えてみてください。戦略という言葉は文字通り「戦争用語」ですが、進軍するシナリオを用意するのなら、撤退するシナリオも必要。でないと、太平洋戦争時の日本軍のようになってしまいますから。つまり店じまいをするのが簡単なように借金はしない、というのがシニアである私の考えかたです。
 具体的には、私の場合はこの事業のために200万を用意してスタートしましたが、これが無くなったら撤退しよう、と当初から決めていました。案外、初年度に出ていくお金は多いかもしれません。私の場合、初年度に市場調査を兼ねて、アフリカのガーナの知人を訪ねたりしたもので、用意した資金の半分は初年度で使ってしまいました。

 あと、資金的な裏付けとはニュアンスが違いますが、保証人になって貰える人を考えておくべきでしょう。私の場合、中古車オークションに加盟する際には加盟先企業から、保証人や、不動産所有の証明を求められます。起業するからには、単なる知人ということではなっく、保証人になって貰える関係の人が一人や二人、用意出来ている必要があるかもしれませんね。


第三要素について
 私の場合は、前述のように起業に必要な要素のうちのいくつかは既に持ってはいましたが、知らない領域を含め、準備にもかなりの期間を設け勉強してきました。それでも、実際に初めてみると分からないことが沢山出てきます。こんな時にも、サラリーマン時代に、新規事業の立ち上げ(新しい分野にチャレンジすること)を何度か経験していたことが幸いしました。

 こんな具合に、準備期間に何をやっておくべきかを判断し、行動出来る人は、実際の起業にあたっても、経験はなくとも、少なくとも何をすべきかが分かっていますので、心配はさほどありません。

 心配なのは、準備期間に何をしたら良いのか分かっていらっしゃらない人が頼る次のパターンです。


・加盟店・代理店方式で起業の落とし穴
 通常であれば、起業の準備期間に何をしたらよいのかさえ分からない人は、起業したりはしないのですが、ここで1つの失敗パターンが見えてきました。それは、加盟店・代理店方式などで起業されるケースです。

 というのも、加盟店方式で起業する方に多く見られる困ったケースは、「ここに加盟さえすればなんとかしてくれる」、といった盲目的な期待です。自分が出来ないことを全面的に他人に依存しようというパターンです。実際に加盟先企業の営業さんの説明にはそうしたイメージをリードしてきた部分もありました。ゆえに、「100万も払ったのだから、それを上回る利益を得られるはず」、また、「彼等はプロのはずだから、彼等の言うとおりしていさえすれば、早晩、儲かる事業となるはず」、といった誤解へと繋がっていくわけです。

 まずは加盟する対象企業が何をする会社なのか十分に確認しておく必要があります。私の場合で言えば、加盟店募集の説明会に1度ならず、2度、3度と足を運んで説明を聞きました。つまり、加盟先企業の説明を1回聞いただけでは全く納得出来なかったのです。納得出来たのは、2回目、3回目に参加した際に、既に加盟し活動をされている先輩加盟店さんご自身のお話しが直接聞けたからでした。

 そうしたことを通じ、あらためて分かったことは、加盟先企業はマーケティングの会社であって、中古車輸出をやっている会社ではありません。また、そこで働くスタッフはサラリーマンですから、個人事業主と言えど経営者である我々にアドバイスしうるものを持っているとは思えませんでした。つまり、加盟先企業に、何が期待出来て、何が期待出来ないかの判断が出来るようになったことで、これが先に行って、「話しが違う」「がっかりだ」などという言い訳をする必要がなかったことに繋がります。

 加盟店方式にもいろいろありますが、私が加盟したのはフランチャイズ方式ではありませんので経営指導はしてくれません(というか、30代の若手ばかりで経営が語れるレベルの人間はいない様子)。加盟先企業も年々、工夫はしているようで、商品(中古車)のWebへの掲載の仕方、仕入の仕方、海外との電話での話し方、などのセミナーも開催しています。しかし、経営者として売上、経費といった数字の見方、などについての講座は一切用意されていません。(立ち上げ1年で軌道に乗る前に脱落してしまうがゆえに、経営者としての数字の見方を云々する対象がいないのかも?)

 期待感が大きいほど、落胆する可能性が増える気がします。私が加盟している中古車輸出ビジネスで言えば、ここに加盟している人の半数が1年で脱落するのはこんな期待と実際の乖離が理由のようです。どんな世界でも、そんなにうまい話が転がっているわけではありません。そんなに上手い話しならば、加盟先企業のスタッフが、さっさと退職して自ら起業しそうなもんですものね。(笑)


最後に
 世の中の言葉に「悪循環」といのがあります。悪循環にはまりこむと、人は他人のせいにしたがります。加盟先企業の対応が悪いから。中古車市場がひどい状態だから。アフリカのバイヤーは汚いやつらばかりだ。など、など。

 反対に、上手く行っている方の話しを聞くと、「アフリカのバイヤーにとってこの金額を払うことって大変なのでしょうね。だから出来るだけ希望を聞いてあげるようにしてるんです」とバイヤーの視点に立とうとされていました。また、仕入れ他にしても、「この仕事って面白い」と自分の仕事をとても楽しんでいるようでした。


 これらを聞いていて思ったのは、「悪循環」と言う言葉が存在するのなら、同様に「善循環」と言う言葉も存在するはず。この「2つの輪(リング)」は個別に独立して存在をしている訳ではなく、実は「2つの輪(リング)」が1点で接している感じのようです。ちょっとした失敗がきっかけで「善循環」だったものが「悪循環」にはまってしまうケース。であるなら、反対に、ちょっとしたきっかけで「悪循環」から「善循環」に戻れるはず。

 冒頭ご紹介したお二人のお話しの中にそのヒントがありました。1つは、結果が悪くとも人のせいにはしていなかったこと。なぜなら自分は経営者なので、自分で選択肢を見つけ、その中から最適なモノを自分自身で選べたのですから。また、上手く行っている人の特徴は「笑顔」だということ。暗い顔をしていたのでは、良いものも悪い方へと転がっていく、ということでした。成功している人ならではの考え方、発言ですね。


後記:
 結婚についてこんな話を聞いたこと、ありませんか?結婚する前は両目を開けて相手を良く見る。そして、結婚後は、片目をつぶって暮らす、これが結婚生活を上手くやっていくコツなのだそうです。
 加盟店方式の起業でも同じことが言えそうです。加盟する前は、しっかりと加盟先企業を良く見ること。そして、加盟したあとは加盟先企業だけを当てにするのではなく自分の努力を中心に考えていく。1年で撤退している人に、逆パターンをやってしまっている人を多く見たもので、ふと思い出したのがこれでした。






次のゴールを用意する
もしくは、あらたな夢を作ることに
けして年をとりすぎているということはないのだぞ



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