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132.「55歳からのハローライフ」 村上龍 著 (Part II )  ・・・ (2013/02/03)

 前回、このホームページでご紹介した村上龍氏による小説「55歳からのハローライフ」ですが、この本の紹介として、文藝春秋(平成25年)2月号に「老後への覚悟を持て」というタイトルでインタビュー記事が掲載されていましたので、ご紹介します。



 この本を書いたきっかけについて書いてありました。それによれば、9年前に「13歳のハローワーク」という中学生向けの就職ガイドを作成したが、好評だったこともあり、今度は自分と同年代の、老後の入口に立つ中年の人々に向けたものを作りたいと思ったのだそうです。

 前作「13歳のハローワーク」では、これからどうでも変わる可能性がある世代を対象としてきたが、今度は55歳、それまでの人生でやってきたことを生かすしかない世代であったこと。そして、そこにはあきらかな経済的格差があり、階層ごとに必要とされる情報が全く異なるので、世代全般を対象としたものは作り得なかったのだそうです。

 そこで村上龍氏は階層を変え、また男と女をそれぞれ登場人物にするなどして5つの中編小説を書き、いろいろな階層の話を盛り込み、読んだ人が、この5編のなかの誰かに自分に近いイメージを投影可能なのではと思ったようです。



 この文の中で格差をこんなふうに表現しています。ビジネスの現場などで使われる「二対六対二」の法則。組織の中に二割の上位層、六割の中位層、そして二割の下位層が存在する、というもの。この法則が、中高年の経済状況にもあてはまるという。

 一番層の厚い(六割の)中間層にフォーカスしてみると、彼らの不安は年金とういお金に直結したもの。ご存知のように年金の支給開始年齢が引き上げられることが確実視されています。つまり長生きすればするほど困る、という状況に陥る。これを回避するべく仕事をしなくてはと考える。しかしそれが簡単ではない。
 村上龍氏本人も、ハローワークへ行き、コンピュータで自分に合う職があるか検索してみる。最初は希望月収を30万で調べてみる。無い。ならばと25万まで下げたがそれでも無い。どんどん下げていき、結局、12万円まで下げてようやく3件あったのだそうです。

 このあたり、私自身も経験しているので、とても実感できます。ただ、私の場合は転職経験があったもので、自分をどう売ったら相手に評価して貰えるかがおぼろげに分かっていましたので、機会さえ作れればという気持ちもありました(実際に上手くいくかは別として)。しかし、子育ても終わったしローンも無し。ならばせっかくのチャンス、従来と同じことをやるのではなく、何か自分で出来ることがないものなのだろうかと思案し、個人事業主として中古車の輸出を始めたわけです。


 さて、話はこの文藝春秋の記事に戻ります。いまの中高年を描こうとするときに、会社での庇護を失った人間が、あらたな庇護を得て救われるような物語は書けないという。書いてしまってもそれはリアルではないからだ、と。村上龍氏が描きたかったのは、中高年が庇護にかわる新たな関係を見つけて、新たな人生に出会う瞬間かもしれないと言う。

 定年後は信頼出来る友人がいたほうがいい。でも、そういう友人は、フェイスブックや異業種交流会で広がっていくわけではない、という。これについても私も同感です。中古車輸出をテーマにしたフェイスブックのグループもあるようですが、果たしてそうした場だけで真に信頼出来る関係が出来るのだろうか、と思います。出来るとしたらフェイスブックはあくまで”きっかけ”で、そこからフェース・ツー・フェースを経て出来ていくものなのだろうと思っています。


 この文の最後に村上龍氏はこう書いています。高度成長期と違って、日本経済の回復と自分の境遇が必ずしもリンクしていない。悠々自適層も中間層も困窮層の人も、自分がどう生きていくかは自分で考え、生き延びなきゃいけない時代なのです、とありました。

 私がこのホームページに定年後のあらたな人生展開を紹介しているのも、私のケース(リアル)が参考になればと思うがゆえです。









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